捜査の違法を主張し不起訴処分を獲得した事例
依頼者は職務質問を受けた際、大麻らしき乾燥植物片の所持が発覚し、警察官に抵抗して怪我をさせたということで、公務執行妨害罪および傷害罪で逮捕・勾留となり、2週間後に釈放されました。
その後、当初の職務質問時に所持していた乾燥植物片が大麻であるとの鑑定結果が出たため、大麻取締法違反で再度逮捕・勾留されたという事件です。
依頼者は、大麻所持が発覚した所持品検査・職務質問の際に警察官から体を羽交い絞めにされ、靴の中に隠していた大麻を無理やり取られて押収されたと主張していました。
そのため、違法収集証拠排除法則の適用が争点となると見込まれました。
また、公務執行妨害・傷害で処分保留釈放となった後、依頼者は特段逃げることなく生活し、警察の要請に応じて出頭したところ大麻所持で逮捕されたという経緯がありました。自ら出頭していることからおよそ逃亡のおそれもなく、先行事件と証拠も共通していると考えられたため、勾留の必要性も争点となりました。
そのため、弁護活動方針としては、大麻所持で逮捕・勾留後、被疑者が自ら出頭していることや争点となる職務質問・所持品検査の適法性については先行事件と証拠が共通しているため、既に罪証隠滅のおそれがないことを主張し、準抗告を申し立てました。結果は認められ、依頼者は釈放となりました。
その後、検察官からは取調べを予告されておりましたが、違法証拠排除法則の適用による無罪の可能性を排斥しきれないと考えたのか、一度の呼び出しもされず、不起訴処分となりました。
事件のポイント
私自身、検察官時代に薬物事案で違法収集証拠を理由に嫌疑不十分釈放とした事例がありました。所持に関する一次証拠が違法であっても逮捕後の採尿検査により使用が明らかになったケースで、警察はせめて使用罪での起訴をと期待していたフシがありましたが、毒樹果実理論で違法と判断しました。起訴前であれば、検事は無罪リスクを嫌って不起訴とする可能性が高いです。
本件は、依頼者の主張を信じた弁護士が果敢に捜査違法性を争い、不起訴を勝ち取った案件です。「この捜査活動はおかしい」と感じるセンスが重要ですが、意外にも多くの弁護士は、依頼者の違法主張に耳を傾けないものです。
執筆者: 代表弁護士 中村勉