偽計業務妨害罪|インターネットやSNS等で起こりうる犯罪を解説|刑事事件に強い元検事弁護士が強力対応

偽計業務妨害罪|インターネットやSNS等で起こりうる犯罪を解説

刑事弁護コラム 偽計業務妨害罪|インターネットやSNS等で起こりうる犯罪を解説

偽計業務妨害罪|インターネットやSNS等で起こりうる犯罪を解説

 FacebookやTwitter,InstagramなどのSNSやブログをしている人は多いのではないでしょうか。
 「いいね!が欲しい」「もっとみんなに注目されたい」「投稿で目立って広告で稼ぎたい」など利用されている目的も異なります。また,その投稿の中には多少事実を誇張して…という投稿をしてしまう人もいます。
 このように誇張や情報を加工して発信されている投稿がいま「偽計業務妨害罪」に当たる可能性があるとして,クローズアップされています。インターネット上で自由に書き込みができ,情報を発信できる時代だからこそ,正しい知識を持っていなければ,気が付かないうちに罪を犯し,また犯罪に巻き込まれるかもしれません。
 そこで,今回はこの「偽計業務妨害罪」について解説していきたいと思います。

偽計業務妨害罪とは

 そもそも偽計業務妨害罪とは,業務妨害罪の一種で,虚偽の風説を流布し,または偽計を用いて人の業務を妨害する行為を内容としている犯罪になります。
 刑法233条に規定されており,違反すると3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が課されます。
 なお,刑法233条は「信用及び業務に対する罪」として,信用毀損罪(前段)と業務妨害罪(後段)の2つの罪を合わせて規定しています。信用毀損罪は,個人の経済的信用を保護法益にしている犯罪に対して,個人の社会的活動を保護法益とする業務妨害罪とは罪質を異にしています。
 本罪の行為である「虚偽の風説を流布」するとは,虚偽の事項を内容とする噂を,不特定または多数の者に知れ渡るようにすることをいいます。

虚偽

 「虚偽」とは,客観的事実に反することを指しており,その事実について争われている段階でも虚偽となる可能性があると言われています。行為者が確実な根拠がない場合も含み,根拠に要求される確実性は,社会通念に照らし客観的に判定されることになります。

風説

 「風説」とは,噂のことを指します。必ずしも悪事や醜行を含まなくてもよく,作り話であるかどうかも問わないと考えられています。

流布

 「流布」とは,世間に広めることを指します。直接,文章や口頭で伝達する他に,口伝えに噂として伝播することも含みます。

偽計

 「虚偽の風説を流布」以外に,「偽計を用い」るという手段も同罪の行為に当たります。
 「偽計を用い」るとは,人を欺き・誘惑し,または他人の無知,錯誤を利用することをいいます。人への働きかけが必ず必要というわけでなく,適正な判断または業務の円滑な実施を誤らせるに足りる程度の手段・方法であることを要するとされています。

「人の業務」を妨害

 次に,本罪は,その客体を「人の業務」としています。
 「業務」とは,自然人,法人その他の団体が職業その他社会生活上の地位に基づいて継続して従事する事務をいいます。
 本罪の保護法益は,人の社会的活動の自由とされているため,娯楽や家庭生活上の行為は除外されると考えられています。事務については,文化的活動や経済的活動の区別は問わず,報酬の有無も考慮に影響しないとされています。
 また,業務と言えるためには,反復継続している事務である必要があり,1回的な行事は含まないと解されています。
 さらに,公務も「業務」に当たると考えられています。公務の執行を暴行・脅迫によって妨害した場合は,公務執行妨害罪が成立しますが,妨害の手段が偽計の手段が取られた場合は偽計業務妨害罪が成立します。
 ただし,公務の内容によっては,自力で妨害を排除できる権限を有する場合があり,そのような場合には偽計業務妨害罪は成立しないと考えられています。

 余談になりますが,業務妨害罪には,偽計業務妨害罪の他に,「威力業務妨害罪」というものが存在します。参考までにご紹介したいと思います。

 威力業務妨害罪は,刑法234条に規定されている犯罪で,偽計業務妨害罪との違いは,業務妨害をする手段にあります。前述の通り,偽計業務妨害罪では,「虚偽の風説を流布」したり,「偽計を用い」たりすることで,人の業務を妨害することで同罪が成立しますが,威力業務妨害罪では,手段として「威力」を用いて業務を妨害する犯罪になります。
 「威力」とは,犯人の威勢,人数および四囲の情勢からみて,被害者の自由な意思を制圧するにたりる勢力をいい,現実に被害者が自由意思を制圧されたことを要しないと解されています。
 要するに,偽計業務妨害罪における「偽計」とは,相手の錯誤を誘発する行為であり,威力業務妨害罪における「威力」とは,相手の意思を制圧する行為になります。
 もっとも,偽計と威力の区別はその場面によって判断が難しいと言われており,概ねそれが外見的にみて(偽計か威力か)明らかであるか否かによって判断されると考えられています。

偽計業務妨害罪となり得るケース

 それでは,次にインターネットやSNSでの情報発信において,どのようなケースが偽計業務妨害罪にあたり得るか参考例をご紹介したいと思います。

1. 事件や事故に便乗したデマ

 事件や事故,災害に便乗したデマを発信,拡散させる行為がこれに当たります。例えば,「先日の台風の影響で●●工場から流れたオイルが●●温泉に流れたようだ」「地震の際に,近くの●●動物園からライオンが逃げ出した」等とSNSに投稿する行為は,●●温泉や●●動物園に対する偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

2. 会社などに対する誹謗中傷

 会社やお店に対する虚偽や誹謗中傷の書き込みを発信,拡散させる行為がこれに当たります。例えば,「●●会社はパワハラがすごい」と虚偽の書き込みをしたり,「●●店の料理にカビが生えていた」と虚偽の書き込みをする行為は,●●会社や●●店に対する偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

3. 嘘の情報を流し警備を強化させる

 犯行予告など嘘の情報を配信した結果,警備を強化させる行為がこれに当たります。例えば,掲示板に「●●駅にて無差別殺人を実行する」などと書き込みを行った結果,●●警備会社の警備員を増員,●●警察署の警察官が出動することになった場合は,電車会社,●●警備会社,●●警察署に対する偽計業務妨害罪が成立する可能性があります。

4. バイトテロ

 バイト先の●●店内で悪ふざけする様子を動画,YouTubeなどで配信,拡散させたる行為がこれに当たります。例えば,ファストフード店内で「床に食材を落として皿に戻す」動画や「料理に唾を吐く」動画などを配信する行為は,●●店対する偽計業務妨害罪(手段により威力業務妨害罪等)が成立する可能性があります。

偽計業務妨害罪となった事例

 偽計業務妨害罪は,「虚偽の風説を流布」したり,「偽計を用い」て業務を妨害したりする犯罪ですが,インターネットやSNSに限った犯罪ではありません。
 そこで,インターネットやSNS以外で偽計業務妨害罪となった行為事例の一部をご紹介したいと思います。

事例1

 (東京高判昭和48年8月7日高刑集26巻3号322頁)
 約3ヶ月の間に970回にわたり昼夜を問わず中華そば店に無言電話をかける行為に関し,相手を甚だしく困惑させた事案

事例2

 (最1小決平成19年7月2日刑集61巻5号379頁・判時1986号156頁)
 銀行のATM利用客の暗証番号,氏名,口座番号などを盗撮することを企て,盗撮用ビデオカメラを設置したATM機に誘導するため,他のATM機を長時間占拠し続け,他の客が利用できないようにした事案

事例3

 (大判昭和3年7月14日刑集7号490頁)
 駅弁が不潔,非衛生的であるという葉書を旧国鉄の旅客課長に出した事案

事例4

 (大判大正4年2月9日刑録21号81頁)
 購読者を奪う目的で,紛らわしい名前に改名して体裁も酷似させた新聞を発行し続けた事案

事例5

 (福岡地判昭61年3月3日判タ595-95,福岡地判昭61年3月24日判タ595号96頁)
 業務用電力量計に工作をしメーターを逆回転させて使用電力量より少ない量を指示させた事案

事例6

 (大阪地判昭和63年7月21日判時1286号153頁)
 デパートの売り場の布団に前後16回にわたり計469本の縫針を混入させた事案

事例7

 (大判大正3年12月3日刑録20号2322頁)
 漁場の海底の海上からはわかりにくい所に障害物を沈めておいて漁網を破損させることを企てた事案

事例8

 (最決昭和59年4月27日刑集38巻6号2584頁)
 通話の際電話料金を課すシステムを回避するマジックホンという機械を電話に取り付けた事案

偽計業務妨害罪の加害者となった場合

1. 偽計業務妨害罪の加害者にならないために

 前提として,偽計業務妨害罪は「親告罪」ではありません。親告罪とは,訴追の要件として告訴を必要とする犯罪をいいます。つまり,偽計業務妨害罪は被害者の告訴を待つまでもなく,加害者は逮捕・起訴される可能性があります。
 そこで,予期しない犯罪に巻き込まれないように,以下のように普段から情報の取り扱いには注意が必要になります。

インターネットの情報を鵜呑みにしない

 インターネットで流れている情報の信憑性は,不明確な部分が多く,真偽も定かではありません。インターネットに書いていたからと安易に引用して情報を配信してしまうと思わぬ事件に巻き込まれてしまうことがあります。仮に情報を採用する場合には,情報源を確認して慎重に取り入れる必要があります。

シェアやリツイートを安易にしない

 SNSを拡散する方法にシェアやリツイートという機能があります。シェアをする方は,比較的安易にボタンを押してしまうことも多いと思いますが,これも注意が必要です。シェアやリツイートはあくまで自己の投稿として引用配信されてしまうことから,投稿自体他人のものでもその責任はボタンを押した自分ということになります。シェアやリツイートをされる場合は,記事の内容をよく確認した上でボタンを押すように注意してください。

その場のノリという言い訳は通用しない

 他の人がやっていたから便乗しただけ,面白さのノリに負けて…という言い訳は通用しません。自身の行動もそうですし,他人の投稿への対応に対しても思いも寄らない事件に発展する可能性があります。ノリという言葉では片付けることができないという自覚と認識を持つことを忘れないでください。

2. 偽計業務妨害罪の加害者となった場合の行動

 どんなに気をつけていても,事件に巻き込まれてしまうこともあります。そこで偽計業務妨害罪の加害者になってしまった場合,どのような行動を取るべきでしょうか。
 まず,被害者の方との示談交渉進める必要があります。前述の通り,偽計業務妨害罪は親告罪ではありませんので,示談が成立したとしても不起訴になるとは限りません。しかし,何もしなければ,起訴され罰則が適用される可能性は高くなります。また,罰金刑であっても前科がついてしまうことから,不起訴を勝ち取るためにも被害者との示談は欠かすことはできません。
 もっとも,虚偽の情報をインターネットで拡散された被害者の心情を考えると,すんなり示談に応じてもらえるかどうかは難しい問題となります。そこで,被害者と交渉する際は,示談のプロである弁護士に相談しましょう。被害者感情も踏まえた上で,第三者として冷静に示談交渉を進め,より 高確率で示談を成立させることができます。

偽計業務妨害罪の被害者となった場合

 それでは,偽計業務妨害罪の被害者になってしまった場合,どのように対処するべきでしょうか。自身に覚えのないデマや誹謗中傷が発信され,拡散されているような状況で何ができるでしょうか。
 このような場合でも,まずは弁護士に相談することが良いと考えます。インターネット特に自由に書き込みができる掲示板などでの被害については,加害者の特定が難しく,被害も早期に最小限で抑えることが困難となっています。
 しかし,弁護士を通じて対応を行うことで書き込みの削除や加害者の特定を行う方法があります。また,加害者を特定した後,損害賠償を請求することも交渉のプロである弁護士に任せることで,高い確率で賠償金を獲得することができます。

まとめ

 今回は,社会的活動の自由を保護法益とする「偽計業務妨害罪」について解説いたしました。ここで押さえていただきたいポイントは4つです。

 1. SNSやブログは同罪の加害者にも被害者にもなる可能性があること
 2. インターネットの情報を鵜呑みにしない
 3. 軽はずみなシェアや投稿はしない
 4. 本人の投稿でなくても同罪の加害者となる場合がある
 5. 事件の解決は弁護士に委ねることが得策

 インターネット,SNSやブログは,上手く活用すれば知りたい情報を簡単に取得でき,多くの人とコミュニケーションが取れるとても便利なツールです。
 その反面,個人の関係性が希薄になり,即時かつ安易に不特定多数へ拡散されることから,情報の広がりも予期せぬ方向に流れることもあります。いわば諸刃の剣としての性質を持ち合わせています。
 SNSやブログを運営,利用されている方は,普段から思わぬ事件やトラブルに巻き込まれないように,情報の管理や情報の取り扱いには十分に注意する必要があります。

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