在宅事件でも弁護士が必要な理由を解説|刑事事件の中村国際刑事法律事務所

在宅事件でも弁護士が必要な理由を解説

刑事弁護コラム 在宅事件でも弁護士が必要な理由を解説

在宅事件で弁護士が必要な理由|在宅と身柄の違いを弁護士が解説

 刑事事件と聞いて,どのようなものを想像するでしょうか。ニュースやテレビドラマでよくあるように,警察が犯人と思しき人物(被疑者)を逮捕し,警察・検察による取調べが行われ,鉄格子のついた薄暗い部屋に閉じ込められる,そんな流れを想像する方が多いと思います。
 この一連の手続きに付される事件を「身柄事件」といいます。一方で,「身柄事件」と対になるものとして,「在宅事件」というものがあります。在宅事件とは,端的に言えば起訴(あるいは不起訴)に至るまでの間,通常通りの生活をしつつ,警察や検察から呼び出しがあった際にはそれに応じて取調べ等の捜査を受ける事件のことです。

 本コラムでは,身柄事件と在宅事件の具体的な差異と,それぞれにおける弁護活動について弁護士・坂本一誠が解説いたします。

刑事事件の流れ

 身柄事件と在宅事件の違いに入る前に,そもそも刑事事件一般がどのような手続きで進んでいくかを理解する必要があります。
 まず,刑事事件(犯罪)が発生すると,被害者の通報等によって警察が犯罪の発生を覚知し,捜査を始めます。被害者からの聞き取りや犯罪の現場の実況見分,被疑者を特定するための聞き込みや資料の収集など必要な捜査を遂げた後,警察は被疑者を直接取り調べて被疑者の供述を聞こうとします。この際,警察が裁判所に逮捕状を請求して取得し,逮捕状に基づいて被疑者を逮捕する場合が身柄事件です。警察が逮捕の必要性まではなく,被疑者に通常の生活を許しながら必要に応じて警察署に来てもらい取調べを行えば足りると考えた場合には,逮捕状を取得せずに被疑者に電話で連絡をしたり,家宅捜索をした後警察署まで任意の同行を求めたりするなどして取調べを行います。この場合を「在宅事件」といいます。

逮捕されたら身柄事件,逮捕されなければ在宅事件

 すなわち,逮捕された場合は身柄事件となり,逮捕されなければ在宅事件と言えます。なお,在宅事件で取調べを進めた結果,逮捕の必要が生じて身柄事件に転じる場合もあります。
 逮捕されると,最大72時間は身柄を拘束されます。これは,身柄事件における逮捕段階での警察の取調べは48時間以内,その後の検察の取調べは24時間以内と法律で定められているからです。最大72時間の取調べを終えたのち,証拠隠滅や逃亡のおそれなどから引き続き身柄を拘束すべきと検察が判断した場合,裁判所に対して勾留請求が行われます。裁判所が勾留を認めると,そこから10日間(延長が認められた場合は最大20日間),被疑者は引き続き身柄を拘束されることになるのです。当然,自由に外に出ることは許されず,留置所あるいは拘置所で過ごすことを強いられます。逮捕後に最長3日間,勾留後には最長20日間身柄を拘束されるため,仕事や学校など,日常生活に著しい支障をきたすことになります。
 また,逮捕後の最長3日間においては親族であっても原則として面会が許されず,また勾留期間中においても弁護士を除く一般人との「接見や文書の授受の禁止」という条件が裁判所によって付された場合は,親族も面会も手紙のやり取りもできないことがあります。
 一方,逮捕されたとしても,検察官が勾留の必要性は無いと判断した場合や,検察官が勾留を請求しても裁判所は勾留が妥当ではないとしてその請求を却下した場合,その時点で被疑者は釈放され,在宅事件という扱いになります。
 在宅事件における被疑者は,およそ日常と変わらない生活を送ることができます。このような状況から,稀に事件が終息したと思う方がいますがそれは間違いです。在宅事件は,あくまで被疑者の身柄を拘束していないだけで,検察等による事件捜査は継続している状態にあります。したがって,検察等から捜査(取り調べや現場検証等)のために呼び出しがあった場合,これに応じなければいけません。また,事件の性質や捜査状況によっては,このような呼出しが数週間から数か月後になることもあります。身柄事件とは異なり,捜査の期限を定めた法律が存在しないからです。
 そのため,在宅事件では日常生活を送ることができる他方,捜査が長期化するといったデメリットもあります。
 そして,身柄事件,在宅事件いずれの場合においても,最終的に捜査を行った検事が起訴するか否かを判断することになります。

在宅事件と身柄事件の弁護士の選任

 国選弁護人の選任には,勾留によって身柄拘束を受けていることが要件となります。そのため,身柄事件は自分で弁護士を選任しない場合でも,国選弁護士を選任することが可能ですが,在宅事件の場合には,国選弁護人の選任はできず,自ら費用を支払って私選弁護人を選任しない限りは弁護人がいないまま事件が進みます。このように弁護士の選任方法にも違いがあります。
 そのため,在宅事件では,私選弁護人を選任せず,捜査状況を知らされないまま刑事手続が進んでしまい,知らないうちに起訴状が自宅に届いて起訴されたことに気付くといった事態がままあります。
 国選弁護人は,決められた研修を受ければどの弁護士でも名簿に登録することができ,名簿に登載された弁護士からランダムで選任されます。そのため,中には刑事事件の経験が十分ではない弁護士が選任されることもあります。私選弁護人であれば,費用を支払って自分で弁護士を選んで選任することができますので,経験豊富な弁護士を探して選任することができます。

身柄と在宅で異なる弁護士の役割

身柄事件の場合

 逮捕されてから勾留の有無が決まるまでの間は,身内であっても原則として被疑者との面会はできません。また,警察に直接問い合わせても,被疑者がなぜ逮捕されたのかなど,詳しい情報はほとんど教えてもらえない事が多いです。
 しかし,唯一面会が許される弁護士であれば,被疑者本人と話をし,家族に本人の状況を伝えることができるばかりか,取調べに対するアドバイスをすることもできます。逮捕されて間もない時期の取調べにおいて,どのように受け答えするかは,その後の身柄拘束期間の長短や裁判での有利・不利に大きく影響します。したがって,いち早く弁護士からの取調べに関するアドバイスを受けることが,刑事事件においては肝要なのです。
 また,事件の内容によっては,弁護士が身柄解放活動を行います。身柄解放活動とは,事件が比較的軽微であるなどの理由から身柄拘束までする必要はないと思料される場合に,弁護士が検察官および裁判官に対して被疑者を10日ないし20日間の勾留をしないよう働きかける弁護活動のことです。これに成功すると,在宅事件扱いとなり,被疑者は日常生活に戻ることができます。重要なのは,逮捕後,検察官が裁判所に勾留請求するかどうか決める段階と,検察官が勾留請求した場合に裁判所が勾留を決定するかどうか決める段階です。それぞれの段階で検察官・裁判所に弁護士が意見書を提出することで,釈放の可能性を高めることができます。既に勾留が決定した場合であっても,準抗告の申立てによって勾留決定を覆すことができる可能性はありますが,弁護士の選任が遅れるとそれ以前の釈放のチャンスを無断してしまいます。そのため,できるだけ早く身柄を解放するためには,逮捕後すぐに弁護士を依頼することをおすすめします。
 一方,身柄解放ができず勾留となった場合でも,その間の取調べに対するアドバイスや被疑者との示談交渉など,弁護活動は継続して行われます。示談が成立すれば,検事の下す処分(起訴,不起訴など)や裁判における量刑にプラスの影響を与えられるため,非常に有用です。

在宅事件の場合

 在宅事件の場合,弁護士は被害者との示談活動や,被疑者本人の更生に助力します。これらも,検事の下す処分や裁判における量刑に大きく影響を与えるものです。在宅事件であれば,被疑者本人が被害者に直接会って謝罪しに行くことも可能ですが,これは十中八九やめた方がいいでしょう。
 なぜなら,被害者は被疑者との接触を拒む場合がほとんどだからです。無理に会おうとすれば,被害者から検事に通報され,かえって心証を悪くしてしまいます。弁護士はクライアントである被疑者本人の意向もふまえつつ示談交渉を行うので,示談は自分で行わず,弁護士を介すことが得策と言えるでしょう。

在宅事件から身柄事件になる場合

 事案によっては,当初は逮捕されることなく定期的に警察署に呼び出されて取調べを植える在宅事件の形で進んでいたのに,突如として警察が裁判所から逮捕状を取得して逮捕に踏み切ることもあります。
 証拠が膨大で関係者が多く,逮捕状を取得するための準備に時間がかかる経済犯罪の事案などで,在宅事件から身柄事件への切り替えが多く行われます。
 こうした事件でも,在宅の段階から弁護人を選任しておくことで,身柄事件になるのを防ぐように警察と交渉したり,逮捕された場合の当初の取調べの対応方法について事前に弁護人と打ち合わせることで逮捕直後から適切な対応を取ることができたり,弁護人が逮捕直後に速やかに接見したりといったメリットがあります。

在宅事件で起訴される可能性は?

 逮捕されていない在宅事件だからといって,大した事件じゃないから起訴されないだろうとタカをくくるのは大間違いです。
 起訴・不起訴を決める一時的な分水嶺は証拠が十分かどうかです。在宅事件であっても身柄事件であっても,検察官が犯罪を立証するのに証拠が十分だと判断すれば,起訴することができます。ですから,在宅事件であっても起訴される可能性は十分にあると言わざるを得ません。
 もちろん,身柄事件と在宅事件を比べると,後者の方が事案の重大性が低いことが多いです。そのため,被害者との間で示談が成立するなどの事情によって,不起訴になる可能性が高いのは相対的には身柄事件より在宅事件であるということは言えます。
 しかしながら,その場合は,あくまで示談が成立したことが重要なのであって,在宅事件だから不起訴になったというわけではないので注意が必要です。

在宅事件でも弁護士が必要な理由

 上記のとおり,在宅事件であっても起訴される可能性が十分にある以上,不起訴を目指したい場合には弁護士を選任して,そのための弁護活動を行ってもらう必要があります。
 被害者の居る事件であれば弁護士が被害者と交渉をして示談を成立させることで,不起訴になる可能性が大きく高まります。
 被害者の居ない事案であっても,警察や検察の取調べに対して弁護士のアドバイスに基づいて適切な対応を取ることで,不起訴の可能性を高めたり,裁判で不利になる供述調書を作成することを防いだりすることができます。弁護士に相談することなく取調べに臨んだ結果,気付かぬうちに極めて不利な内容の供述調書に署名押印をしてしまい,起訴後にその調書の内容を争うことが困難になってしまったというケースは決して珍しくありません。こうした事態を防ぐためにも,起訴前の段階から弁護人を選任する事が重要です。
 また自分が身柄拘束を受けていない在宅事件だからこそ,弁護人を選任することで刑事手続の進捗が分かるというメリットがあります。逮捕されていれば,身体拘束に期限があるため,起訴・不起訴まであとどのくらいかかるのかといった刑事手続の状況が分かることが多いです。在宅事件だと,こちらから問い合わせない限り,今事件記録が警察にあるのか検察にあるのか,検察官が起訴・不起訴を決めるまでにどのくらい時間がかかるのかなど,全く教えてもらえない場合が殆どです。中には,不起訴の連絡がなく,弁護士が問い合わせて初めて不起訴になっていたことが発覚したという事案もあります。そのため,弁護人を選任することで刑事手続の状況を正しく把握しやすくなるというメリットもあります。

まとめ

 いかがでしたでしょうか。本コラムでは在宅事件で弁護士が必要な理由や,身柄事件との違いを説明してきました。両者の流れは大きく異なりますが,早い段階で弁護士をつけるべきという点においてはいずれも同じと言えます。
 刑事事件の当事者になってしまった方,身内が当事者になってしまったという方は,なるべく早期に弁護士にご相談することをおススメします。

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「在宅事件」に関する刑事弁護コラム