執行猶予とは|執行猶予の定義を弁護士が解説|刑事事件の中村国際刑事法律事務所

執行猶予とは|執行猶予の定義を弁護士が解説

刑事弁護コラム 執行猶予とは|執行猶予の定義を弁護士が解説

執行猶予とは|執行猶予の定義を弁護士が解説

 裁判で審理が終わり,判決日を迎えます。無罪か有罪かを争っている場合を除いて,この判決日における最大の関心事は執行猶予が付くかどうかでしょう。言い渡された刑に執行猶予が付されると,刑務所に収容されることなく通常の生活に戻ることができるからです。

 裁判において刑を言い渡すにあたり,情状によって,一定の期間その執行を猶予する判決のことを執行猶予判決と言います。これに対して執行猶予がつかず,刑務所収容を伴う判決のことを実刑判決と言います。

執行猶予と実刑の違い

 執行猶予と実刑,いずれの判決も裁判を経て下される有罪判決です。
 ただし,実刑判決の場合,判決が下されると直ちに刑務所等に収容されるのに対し,執行猶予付判決の場合は直ちに刑務所に入る必要はありません。
 例えば,「懲役3年,執行猶予4年」という判決が下されるとします。この場合,4年間懲役刑の執行が猶予されます。この期間中,犯罪を行なうことなく執行猶予期間が過ぎれば,刑罰(懲役3年)を受ける必要はなくなり,刑の言渡しは効力を失います。

執行猶予付判決の資格制限

 執行猶予付判決が言い渡されるということは,文字通り,刑の執行が猶予されるということです。刑自体の言渡しはなされたことになるので,次の刑の執行猶予についてそれを付すことに対して制限されることになるほか,国家公務員の官職に就く能力を有しないなど,被告人にとって一定の資格制限の事由となる可能性があります。
 一方,執行猶予期間後は,資格や職種の制限はなくなることになります。例えば,国家公務員であれば,刑の執行を受けることがなくなったので,その職責に就く能力は有することになります。
 ただ,刑の言渡しを受けたことがある,という事実は消滅しないので,情状に影響を及ぼす可能性はあります。

執行猶予期間中に再犯を行なったら

 執行猶予期間中に他の犯罪を行ない,裁判で有罪判決が下されると,原則として執行猶予は取り消しとなり,刑務所に収容されます。
 そして,前に下された執行猶予付判決の懲役刑に加え,執行猶予期間中に行なった犯罪の刑期も合算されます。
 よって,執行猶予期間中は注意深く生活する必要があります

執行猶予の条件

 執行猶予付判決は誰しも認められることはなく,刑法上で一定の条件があります。執行猶予付判決が下される条件は,3年以下の懲役もしくは禁錮または50万円以下の罰金を言い渡された場合で,例えば以下のとおりです。

  • 前に禁錮以上の刑に処せられたことがない場合
  • 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その執行を終わった日またはその執行の免除があった日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない場合
  • 前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が1年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け,情状に特に酌量すべきものがあるときで,前の判決で保護観察が付けられ,その期間内に更に罪を犯していない場合(再度の執行猶予)

 「情状に特に酌量すべきものがあるとき」とは,通常の情状,例えば「被害者と示談が成立した」といった通常の情状では足りないのです。感覚的には犯行後の情状というよりも,犯行それ自体の情状が重視されます。
 例えば,無免許運転で有罪判決を受け,執行猶予中の者が,子どもが高熱を出したため急いで子供を車に乗せて病院まで運転中に無免許運転で逮捕された,というような場合には,再度の執行猶予が付されるかもしれません。
 それくらい,再度の執行猶予というのは例外的です。通常は不可能であると考えておいた方が良いでしょう。

 刑の下限が3年以下という懲役期間を超える重罪,例えば,殺人罪や現住建造物等放火罪の場合,刑の減軽をすべき事情がない限り,執行猶予付判決が下されることは期待できず,被告人は無罪判決とならない限り実刑となります。

まとめ

 いかがでしたでしょうか。執行猶予付判決が下されたからといって,必ず刑の執行がなくなるということではありません。執行猶予期間中に再犯を行なうと刑が合算されて長期間服役しなければならなくなる可能性が高いです。執行猶予期間を過ぎると,その刑の執行を受ける必要はなくなりますが,刑の言渡しを受けたことがあるという事実は消滅しないので(執行猶予付判決も前科となりますので),注意が必要です。

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