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大阪府迷惑防止条例違反を弁護士が解説

大阪府迷惑防止条例違反を弁護士が解説

迷惑防止条例は、各都道府県が痴漢や盗撮といった迷惑行為を防止するために制定している条例の通称で、実際の名称や規制内容は各都道府県により若干異なります。

もっとも、基本的な内容は共通しているところが多く、盗撮や痴漢、つきまとい行為、不当な客引き行為等はほとんどの都道府県で迷惑防止条例違反となります。刑法ではこれらの行為が犯罪行為として規定されていないために、各都道府県が条例によってこれらの行為を犯罪として処罰するということにしているのです。

条例はその地方公共団体の区域においてその効力を有するものになりますので、例えば同じ痴漢行為であっても東京都で行われた痴漢行為は東京都の迷惑防止条例違反になりますが、大阪府の迷惑防止条例違反にはならず、逆に大阪府で行われた痴漢行為は大阪府の迷惑防止条例違反となり、東京都の迷惑防止条例違反とはなりません。

迷惑防止条例の規制内容は各都道府県により若干異なりますので、ここでは、大阪府の迷惑防止条例に違反した場合にどのような罪に問われるのか、逮捕された場合はどうすればよいかを弁護士が解説します。

大阪府の迷惑防止条例違反となる行為は?

大阪府の迷惑防止条例の正式名称は、「大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」です(以下、「大阪府迷惑防止条例」といいます)。
目的は「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止し、もって府民及び滞在者の平穏な生活を保持すること」とされています(大阪府迷惑防止条例第1条)。

では、大阪府迷惑防止条例ではどのような行為が罪になるとされているのか、罪になる主要な行為を紹介します。

  • 痴漢
  • 盗撮
  • のぞきみ、その他の卑わいな行為
  • 客引き
  • つきまとい等
  • 転売行為

どのような行為でどのような罰則となるかは後述しますが、大阪府警察の犯罪統計(令和3年中の犯罪統計)によると令和3年中に、大阪府迷惑防止条例違反で検挙された件数は674件と多く、そのうち痴漢は198件と3割近くを占めています。
弊所でも、大阪府の迷惑防止条例違反でのご相談の多くは、痴漢・盗撮事件となっています。

痴漢行為とその罰則とは

大阪府迷惑防止条例はその第6条第2項第1号で痴漢行為を規制しています。

第六条 (卑わいな行為の禁止)
2 何人も、公共の場所又は公共の乗物において、次に掲げる行為をしてはならない。
一 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等の上から、又は直接人の身体に触れること。

例えば、電車やバス等において女性の臀部や胸を衣服の上から手で触る行為は、電車やバスといった「公共の乗物」において「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で」「衣服等の上から」「人の身体に触れる」ことになりますので、上記第6条第2項第1号に該当し、大阪府迷惑防止条例違反となります。同じ状況で臀部や胸を直接触れば「直接人の身体に触れること」として同じく大阪府迷惑防止条例違反となります。

電車やバス等に限らず、例えば、公園や公共の道路上で後ろから女性に近づき、その臀部や胸に衣服の上から触れることも同じく「公共の場所」において「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で」「衣服等の上から」「人の身体に触れる」ものですので、上記第6条第2項第1号に該当し、大阪府迷惑防止条例違反となります。

また、客体は「人」となっており、女性に限定されていませんので、電車やバス等において男性の臀部や陰部を衣服の上から手で触る行為も、痴漢として大阪府迷惑防止条例違反となり得ます。
大阪府迷惑防止条例において、このような痴漢行為の法定刑は「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」となっています。

注意しなければならないのは、衣服の上からではなく、直接人の陰部等に触れた場合です。
この場合には、具体的な行為態様によっては痴漢ではなく強制わいせつ罪(刑法第176条)として立件され処罰される可能性もあります。強制わいせつ罪の法定刑は「6月以上10年以下の懲役」となっており、罰金刑がなく、懲役刑も痴漢の法定刑とは逆に「6月以上」とされていますので、より重い刑罰となります。

迷惑防止条例違反における盗撮とは

次に、大阪府迷惑防止条例で以下の盗撮行為が禁止されています。

  1. 人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等で覆われている内側の人の身体又は下着を撮影する行為(第6条第1項第1号)
  2. みだりに、写真機等を使用して透かして見る方法により、衣服等で覆われている人の身体又は下着の映像を見、又は撮影する行為(第6条第1項第2号)
  3. 住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある人に対し、みだりに、姿態を撮影する行為(第6条第3項第2号)
  4. 第一項各号又は前項第二号の規定による撮影の目的で、写真機等を人に向け、又は設置してはならない。(第6条第4項)

例えば、スカート内の下着を撮影する行為は上記1に該当します。場所に限定はありません。
もともと、1の行為については、公共の場所や乗物、不特定又は多数の者が出入りし、又は利用するような場所又は乗物に規制場所が限定されていましたが、令和3年の改正で、そのような場所の制限が撤廃されました。

浴場や便所、更衣室等で人が着替えている様子等を撮影する行為は3に該当します。
公共の場所に限らず、住居、ホテルの客室内、学校や会社の便所・更衣室等におけるこのような盗撮行為も対象となります。
この点も、これまでは公共性のある施設内の浴場や便所、更衣室等に規制場所が限定されていましたが、令和3年の改正で、場所についての公共性は要求されないこととなり、規制対象となる盗撮行為の範囲が広くなりました。

注意しなければならないのは、4のとおり1~3の目的で、写真機等を人に向け、又は設置する行為(第6条第4項)についても禁止されている点です。
これにより、たとえ動画等が取れていなかったとしても、盗撮目的でカメラを人に向けたり設置した以上は、立件され処罰される可能性があることになります。

刑罰は、上記1から3の盗撮行為(2については映像を見る行為を除く)が「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」、上記2のうち映像を見る行為及び上記4の行為が「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」です。

その他の条例違反の罰則

のぞきみ、その他の卑わいな行為

大阪府迷惑防止条例では、以下のようなのぞきみ、その他の卑わいな行為も禁止されています。

1、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、衣服等で覆われている内側の人の身体又は下着を見ること(第6条第1項第1号)
2、公共の場所又は公共の乗物において、人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること(第6条第2項第2号)
3、住居、浴場、便所、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所における当該状態にある人に対し、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、姿態を見ること(第6条第3項第1号)。

刑罰は、上記1については「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」、上記2及び3については「6月以下の懲役または50万円以下の罰金」となっています。

客引き

大阪府迷惑防止条例では、不当な客引行為等も禁止しており(第8条)、令和4年7月1日以降は、異性間による接待を伴う営業(キャバクラやホストクラブ等)の客引き行為のみならず、同性間による接待を伴う営業(ニューハーフクラブ等)の客引き行為をも禁止しています(第8条第1項ロ)。
また、ガールズバーのように、接待は伴わなくても、異性の従業員がカウンター越しに接客し、異性に対する好奇心をそそるような方法により客に接して飲食をさせる形での営業(酒類を提供するものに限る)の客引き行為も禁止しています(第8条第1項第1号ハ)。

さらに、大阪府迷惑防止条例においては、性的サービスを提供する営業の客引き行為も禁止しているところ、近年摘発逃れのために横行している一般的なマッサージ店を装う性的サービスを提供する営業の客引き行為についても取り締まるため、一般的なマッサージ店が営業を終えているであろう深夜(午後10時から翌日の午前6時まで)の時間帯におけるマッサージ店等による客引き行為をも禁止しています(第8条第1項第1号ニ)。
客引き行為の刑罰は「50万円以下の罰金又は拘留若しくは科料」です。

つきまとい等

大阪府迷惑防止条例では、妬み、恨みその他の悪意の感情又は性的好奇心を充足する目的、あるいは不当に金品その他の財産上の利益を得る目的による反復したつきまとい等も規制しています。

「つきまとい」といえば、ストーカー行為を思い浮かべる方が多いと思います。
ストーカー行為について規制する法律としては「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(以下「ストーカー規制法」といいます。)があります。しかし、ストーカー規制法が規制対象としているつきまとい等の行為は「特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的」で行われるものに限定されており、恋愛感情が関係のないつきまとい等の行為については対象外となっています。

そこで、大阪府迷惑防止条例は、ストーカー規制法の対象外となってしまうようなつきまとい等の行為のうち、「妬み、恨みその他の悪意の感情又は性的好奇心を充足する目的」あるいは「不当に金品その他の財産上の利益を得る目的」で反復して行われるものを規制しています。
「つきまとい等」には以下の行為が含まれます。

一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ち塞がり、住居等の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をうろつくこと。
二 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
三 面会その他の義務のないことを行うことを要求すること。
四 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
五 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等(次のいずれかに該当する行為(電話をかけること及びファクシミリ装置を用いて送信することを除く。)をいう。)をすること。
イ 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(昭和五十九年法律第八十六号)第二条第一号に規定する電気通信をいう。以下同じ。)の送信を行うこと。
ロ イに掲げるもののほか、特定の個人がその入力する情報を電気通信を利用して第三者に閲覧させることに付随して、その第三者が当該個人に対し情報を伝達することができる機能が提供されるものの当該機能を利用する行為をすること。
六 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
七 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
八 その性的羞恥心を害する事項を告げ、若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的方法による記録に係る記録媒体その他の物を送付し、若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的方法による記録その他の記録を送信し、若しくはその知り得る状態に置くこと。

反復したつきまとい等の刑罰は「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」です。

転売行為

大阪府迷惑防止条例では、いわゆるダフ屋行為も規制しており、特に、公共の場所や公共の乗物において、チケットを売る行為や転売目的で購入する行為が禁止されています(第2条)。

このダフ屋行為の刑罰は「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金」となっています。
なお、大阪府迷惑防止条例の対象外となる、インターネット上等のチケットの不正転売については、2019年6月14日に施工された、いわゆるチケット不正転売禁止法(正式名称:特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律)によって罰せられる可能性があります。

大阪府迷惑防止条例違反で逮捕された場合の弁護士の役割

逮捕・勾留されたら

大阪府迷惑行為防止条例違反で逮捕されると、まず警察で最長48時間留置(身柄を留置所で拘束される)され、取調べが行われます。
その後、検察官に身柄と書類が送られ、身柄受領から24時間以内(ただし、逮捕から72時間以内)に、検察官が裁判官に勾留請求をします。
勾留請求が認められてしまうと、原則として10日間、勾留延長請求が認められれば、さらに10日間、計20日の間にわたって身柄拘束され、逮捕の日から合わせて最大23日間は家に帰ることや職場に出勤することができなくなります。

そのため、逮捕期間中に一刻も早い身柄解放への働きかけが重要です。
事件の詳細を把握するために、逮捕された本人とコンタクトをとる必要がありますが、逮捕後72時間の間においては、基本的にご家族であっても面会することができません。しかし、被疑者(この場合には逮捕された本人)は、接見交通権を有しているため、弁護士とは面会でき、弁護士が何かを差し入れすることも可能です(刑事訴訟法第39条第1項)。ですから、早急に本人の状態を確認したい場合には、その日のうちに接見(面会)に行ってくれる弁護士に相談することが必要です。

そして、検察官の勾留請求がなされた場合は、裁判官が判断する前に勾留請求却下を求める意見書を提出することが重要です。この意見書提出はとにかくスピード勝負になるため、意見書の作成に慣れている弁護士でなければとても間に合いません。
経験のある弁護士、それもできれば勾留請求却下の実績がある弁護士にいち早く依頼することを強く推奨します。仮に勾留請求が認められた場合でも、弁護士に依頼し、弁護人がついた場合には、早急に勾留請求認容に対する準抗告(異議申立て)を行います。

ただし、準抗告は、一度裁判官が認容された勾留請求についての判断を覆して求める手続になるため、間に合うのであればやはり勾留請求段階で却下を求める意見書を提出することを推奨します。そして、無事釈放されたとしても事件は終結とはならず、在宅捜査で事件は継続します。
弁護活動を行わないと、実務上は大半のケースで勾留請求が認められます。その場合、家族や職場の仲間に自らが罪を犯してしまったことを知られてしまう可能性が非常に高くなります。

上記の身柄拘束期間を経て、収集した証拠や示談状況等踏まえ、検察官が起訴するか否かを決定し、起訴された場合、ほぼ100%有罪判決は免れられず、前科がついてしまうこととなります。

被害者との示談

弁護人は、被害者との示談交渉を試みます。
大阪府迷惑行為防止条例違反の中でも痴漢や盗撮で検挙されるケースでは、多くの場合、特定された被害者がいます。
そして、被疑者が直接被害者と示談を行いたいと被疑者本人が望んだとしても、多くの場合それはかないません。なぜなら、被害者は、被疑者(被害者にとっては加害者)と「関わりたくない」「関わるのが怖い」という感情が強く、連絡先を直接教えてもらうことができず、接触が困難だからです。しかし、弁護人を通じてであれば、被害者も、被疑者本人ではない分感情が和らぎ、検察官を通じて弁護人と接触を図り、示談交渉に応じてくれる可能性が高くなります。

性犯罪の示談交渉は、多くの場合、被害者あるいはその親権者と直接交渉することになるため、事前に準備できることには限界があり、その場その場での臨機応変な対応が求められます。ところが、弁護士の中には普段の業務のほとんどが書面作成である人が少なくないため、こうした示談交渉には苦手意識を持っている弁護士も少なくありません。
やはり、示談交渉経験や解決実績が豊富な弁護士に依頼することを強く推奨します。

検察庁への働きかけや被疑者の更正

不起訴処分獲得に向けて、検察庁への働きかけを行います。
具体的には、示談成立を報告し、被疑者が真摯に反省していることを伝えるための意見書を提出します。

前述の示談交渉の過程を含め、中村国際刑事法律事務所では、被疑者に対し、表面的な反省を促すのではなく、被疑者が犯した罪について、被害者の感情としっかりと向き合い、もう二度と同じ罪を犯さないように何をすべきか、どのような生活を送るべきかを弁護士が一緒に考え、実行できるようにしていきます。その真摯な反省により、二度と同じ罪を犯さないようにすることも、不起訴処分獲得のための一部であると考えています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。大阪府迷惑防止条例では世の中の動きに対応させて規制対象を随時調整していることがお分かりいただけたと思います。
逮捕されてしまった場合にはスピードが重要になってきますので、迅速に刑事事件の経験が豊富な弁護士にご相談ください。

逮捕されずに済んだ場合であっても、多くの迷惑防止条例違反においては被害者との示談に弁護士が必要になってきます。手続きの流れがよく分からないまま起訴されてしまうようなことがないよう、お早めに弁護士にご相談ください。

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  • 逮捕されるのだろうか
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  • 国家資格は剥奪されるのだろうか
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  • 何年くらいの刑になるのだろうか
  • 不起訴にはならないのだろうか
  • 前科はついてしまうのだろうか

上記のような悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。

更新日: 公開日:
Columns

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