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新型コロナウイルスによる脅迫事件を弁護士が解説

新型コロナウイルスによる未曾有のパンデミックの中、ウイルスに感染するといった直接的な問題だけではなく、経済への打撃や自粛によるストレスにより、平時では起こり得なかった脅迫事件など、間接的にコロナの影響を受けた事件のニュースが連日報道されています。

今回のコラムでは、コロナ禍の中における脅迫事件について解説します。

自粛警察による脅迫事件

緊急事態宣言が発令された中、自粛警察という言葉がインターネットを発端に誕生しました。自粛警察とは、他者に過度な自粛を要求して攻撃する風潮を指す言葉です。

自粛警察の例としては、他県ナンバーの車の写真を撮影し、SNSで公開する、公園などで遊ぶ子供を見て警察に通報する、自治体からの要請を守って営業している飲食店に自粛を求める貼り紙をする、などと言った行為があげられます。自分達は我慢してステイホームをしているのに、呑気に外出している人を見て気分を害することは誰にでもあります。これ以上新型コロナウイルスの感染を拡大しないよう自粛を求めると言った行為は、正義感によるものかもしれません。

しかしながら、そういった正義感がいきすぎてしまうと、良かれと思って行ったこと自体が犯罪行為となってしまうことがあります。

実際に起きた脅迫事件

実際に、新型コロナウイルス感染拡大の影響による自粛後、営業再開した動物園に対し「再開したらどうなるかわかっているのか」「殺すぞ」といった脅迫電話があったり、ライブハウスを営む方が、ツアーキャンセルで困っていたバンドを出演させた頃から、無言電話や自宅の前にゴミやアダルト本を散乱させられたりする等といった例が起きています。

自粛警察の行動はどのような罪にあたるか

では、こういった自粛警察の行為にはどのような犯罪が成立するのでしょうか。まず、そもそも他人の家や店舗に許可なく貼り紙をすること自体が軽犯罪法1条33号違反として罪に問われ、拘留又は科料の刑に処される可能性があります。

次に、貼り紙や抗議の電話の言葉が「どうなるかわからんぞ」「殺すぞ」といった生命・身体に危険を及ぼすような文言にまでエスカレートすると、脅迫罪(刑法222条)が成立します。

刑法第222条1項
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。

「害を加える旨を告知」の意味

脅迫罪における「害悪の告知」とは、相手の自由な意思決定が阻害される程度の害悪の告知を意味します。告知される害悪の内容は、一般に人を畏怖させるに足りる程度のものでなければなりません。

また、これは本人の主観も踏まえた上で、客観的に見て相手の自由な意思決定を阻害するかどうか、という観点で判断されます。したがって、脅す内容は、客観的に他人が恐怖を感じるものでなければなりません。たとえば、小さな子どもが大人に対して「殴るぞ」と言った場合、不快に思っても、一般的に恐怖を感じるほどではないので、脅迫罪にはあたらない可能性があります。

まとめ

どんなに正しい主張をしていたとしても、その表現方法が犯罪となってしまっては意味がありません。コロナ禍の中、皆が他人を監視するような殺伐とした世界となってしまうのは、避けたいものです。

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