中村国際刑事法律事務所 | 刑事事件の実力派弁護士集団 中村国際刑事法律事務所
お急ぎの方へ メニュー

横領事件の示談とは?発覚後の対応と弁護士による解決方法を解説

テレビやニュースなどでよく目にする横領事件。
罪名は聞いたことがあるけど具体的にどのような罪かは知らないという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。また、すでに横領に手を出してしまっている場合や、会社に発覚してしまっていてどうすればよいかわからないという方もいらっしゃるかと思います。
本記事では、横領事件における解決手段として欠かせない、横領における示談について弁護士・坂本一誠が解説いたします。

横領で示談交渉をした方が良いケース

横領事件で示談をした方が良いケースは、いくつかパターンがあります。まずは、会社に横領が発覚している場合です。すでに会社との話合いが進んでいる状態であれば、会社の顧問弁護士から被害弁償を求められる場合もありますが、金額や支払い方法に折り合いがつかない場合は、早々に刑事告訴される可能性もあります。

単に会社に発覚しているのみならず、警察に発覚している、逮捕・勾留されている場合にも、弁護士に相談の上で示談交渉を検討する必要があります。また、会社や警察に発覚はしていないが、長期にわたって多額の横領を行っている場合や、罪の意識から自首したいと考えている場合にも、示談交渉を含めて弁護士に相談し、今後の流れや見通しをつけ、場合によっては自主的に会社に対して被害弁償を持ち掛けるという方法もあります。

横領罪とは|罪名と刑罰

横領と聞くと会社のお金を着服したりするイメージがあると思いますが、横領と呼ばれる罪は以下の通り3種類あります。刑法上の横領とは、「自己の占有する他人の物を不法に領得する」という行為を指します。

1.横領罪(単純横領罪)

横領における基本的な類型となります。

    刑法第252条(単純横領)

  1. 自己の占有する他人の物を横領した者は、5年以下の拘禁刑に処する。
  2. 自己の物であっても、公務所から保管を命ぜられた場合において、これを横領した者も、前項と同様とする。

例えば、友達から預かっているお金を自分のものとしたり、友達から預かっている物を勝手に売ったりすることや、裁判所や税務署から差し押さえられ、保管するように命じられている自分のものを勝手に処分した場合(上記2項)も単純横領にあたります。

2.遺失物等横領罪

占有離脱物横領罪と呼ばれたりすることもありますが意味は同じです。

刑法第254条(遺失物等横領)
遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領した者は、1年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する。

落とし物を拾って自分のものとした場合に適用されます。先の単純横領との違いは、単純横領は委託等を受けて他者の物の占有を開始した後に自分のものとするのに対し、遺失物等横領は他者の占有から離れた物を勝手に占有し、自分のものとする点です。また、落とし物が所有者の占有から離れているかは実務上しばし争われる争点であり、占有から離れていないと判断されれば、より罪が重い窃盗罪が適用される可能性があります。

3.業務上横領罪

会社の経理担当者が、自身が管理している会社の金品を自分のものとすることや運送業者が預かっている荷物を自分のものとした場合に適応されます。「他者から委託等を受け、占有している物を勝手に自分のものとする」この点においては、先に述べた単純横領と同じです。単純横領と業務上横領の違いは「業務性」にあります。

業務上横領における「業務」とは、職業として行われていることのみを指しているわけではなく、法的には「社会生活上の地位に基づいて、反復継続して行われる事務」を指します。つまり、他者から委託を受けて物やお金を管理するという事務について、反復継続して行っているかが判断の基準になります。
経理のような職務上金銭を管理する従業員や運送業者、銀行員は反復継続して行っている事務と解せられます。また、仕事ではない、町内会長が町内会の会費を横領することやサークルの代表がその会費を横領する等、これらもその社会的な地位に基づき、他者からの委託を受け、反復継続して他者のものを管理していたと認められれば業務上横領に当たります。

刑法第253条(業務上横領)
業務上自己の占有する他人のものを横領した者は、10年以下の拘禁刑に処する。

横領事件における逮捕可能性

いずれかの横領をしてしまった場合でも必ず逮捕されるとは限りません。横領事件において逮捕される可能性は、その横領した金額、弁済の有無、横領手段の悪質性、常習性、横領の余罪、犯行規模、共犯者の有無、犯行の社会的影響。また、横領を認めているか(認否)、証拠隠滅や逃亡のおそれがあるか等の事情を考慮し変わってきます。特に横領金額は、捜査機関による逮捕判断に大きく影響する事情となります。

例えば、横領金額が億単位になる会社内での業務上横領事件などは逮捕される可能性が高くなると考えられます。なぜなら、横領額が億単位に及ぶということは、長期にわたって常習的に横領していた可能性も高いために悪質であると考えられ、共犯者が存在する可能性もあります。また、億単位の被害額を弁済出来ない可能性も高く、刑事裁判によって実刑になる可能性が高いため証拠隠滅や逃亡のおそれがあると考えられやすくなるからです。

一方で、被害額が高額であっても、警察の逮捕判断の前に被害額の全額やそれに近い金額を被害弁償することで、在宅捜査となることもあります。したがって、早期に被害者側と弁償について話し合うことは、逮捕回避という観点からも重要です。

横領で示談する方法とメリット

横領事件を起こしてしまった場合、どのように示談すればいいのでしょうか。
横領は財産犯なので、その被害回復がもっとも重要です。示談交渉によって被害弁済を行い、個人や会社からの被害届の提出を回避することが必要です。すでに、被害届が提出済みであっても、示談を成立させることで不起訴処分を得られる可能性があります。他にも、起訴後であれば、示談の獲得が執行猶予や減刑に繋がります。
また、横領は民法上の不法行為(民法709条)に当たるため、被害者に対して損害賠償義務を負うことになります。もっとも、示談によって損害賠償債務を清算できることが多く、刑事手続・民事手続の双方について示談により一回的な解決を目指すことができます。

示談交渉の流れ

捜査機関の関与以前であれば、被害者や被害会社に弁護士から接触し、被害弁償と示談について交渉を始めることが考えられます。
既に捜査機関が捜査を開始し、被疑者・被告人本人と被害会社との交渉が断絶しているような場合でも、弁護士が捜査機関に対して示談交渉を希望する旨を伝え、被害者や被害会社担当者の連絡先の開示を要請し、被害者側の了承が得られれば示談交渉を開始することができます。

横領事件では、時として被害会社に発覚しているかどうかが分からない余罪があることもあります。そのため、交渉においてどのように事件を説明し謝罪の意を伝えるのかといった点についても、弁護士と依頼者が綿密に協議をしながら進める必要があります。

示談金相場と支払い方法

横領事件に示談金相場というのはありません。原則として横領額の全額を弁償する必要があります(全額弁償を前提としなければ示談を拒否されるケースが多いため)。また、横領を行った日から起算した遅延損害金も加えて求められる可能性もあります。

示談金の支払いは一括で支払うことが基本になります。一括での支払いが難しい場合は、分割払い、物的担保を付ける、連帯保証人を付ける等を条件に被害者から分割払いの同意を得る必要があります。
示談交渉は加害者本人が行っても構いませんが、被害者や被害会社側の処罰感情が強ければ直接の交渉が困難であることも少なくありません。示談交渉には専門的な知識が必要不可欠であることを考えると刑事事件を多く取り扱っている弁護士に依頼することが重要となります。

横領事件の示談は弁護士が必要

刑事事件は早期解決が重要となります。
会社から被害届が出される前であれば、事件化前に被害者or会社と示談交渉を行い、事件化の回避を目指します。すでに被害届や告訴状が出され捜査機関による捜査が進んでいる場合、被害者or会社との示談を成立させ、不起訴(刑事裁判にかけられないこと)を獲得することによって刑事処罰を避けることを目指します。
示談が成立したとしても必ずしも不起訴になるわけではありませんが、示談成立は刑事裁判において執行猶予獲得や減刑の判断材料になります。

示談拒否の場合にどうすればいいか

被害者or会社の処罰感情が強い場合や、会社の方針として示談しないという場合も考えられます。弁護士による交渉をもっても示談が拒否された場合は、供託所に供託金を預けることによって、被害弁償に近い状態にすることで起訴を回避したり刑事裁判における減刑を目指すことができます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は横領の示談交渉について解説いたしました。
財産犯である横領事件においては、示談による被害弁済が非常に重要であり、事件化、逮捕段階、不起訴判断、公判の量刑に大きく影響を及ぼします。事件発覚前に示談交渉をすることによって、横領事件として立件される可能性も低くなるでしょう。示談交渉は刑事事件の経験が豊富な弁護士に依頼することが重要です。

更新日: 公開日:
Columns

関連する弁護士監修記事を読む

経験豊富な弁護士がスピード対応

刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

このページをシェア