ホテルでの盗撮事件で不立件
盗撮事案で,示談を成立させ不立件となったものです。
概要は,ホテルに風俗店店員を呼び盗撮し,被害者が被害申告したことから風俗店へも発覚し,その場で警察を呼ばれたという事案でした。被害者との示談が成立した結果,盗撮事件として事件化せず不立件となりました。
初めは当然,被害者の処罰感情も強く,示談に消極的であったので,示談交渉の場につくことすら困難でした。
しかし,そもそも,本件のようなホテルの一室での風俗店店員に対する盗撮事案は,迷惑防止条例違反として立件できるか微妙です。本件が発生した愛知県の迷惑行為条例は,「住居」での盗撮行為をしてはならないことは明文で規定しているものの(同条例2条の2第3項),ホテルの一室は明文で規定していません。さらに,同条例の文言を詳しく見ると,「人の姿態をのぞき見し,又は撮影すること」(同項1号)と規定されていることからして,本来,見られることを想定されていない状況下での撮影を処罰する趣旨とも読み取れるところ,風俗店店員は裸体を見られること自体は承諾しているため,同条例の趣旨からしてもこの事案が立件できるかは微妙であると考えていました。そのため,示談交渉が難航した場合には,条例違反の該当性を争うことを検討しておりました。
しかし,依頼者本人の示談で解決したいという思いが強くありました。幸いにも,被害店舗は示談に積極的であったため,被害店舗とも相談しつつ,根気よく示談交渉を提案し続け,示談交渉を取り付けることができました。当日は,被害者の話を真摯に受け止め,店舗の意見等も交えつつ,被害者が納得する形で示談に応じてもらうことができました。その後警察官に示談書等を提出したところ,不立件となりました。
ホテルに風俗店従業員を派遣させて性的サービスを受けた際に盗撮行為に及ぶ事例は少なくありません。法解釈としては,条例の規定の仕方にもよりますが,住居,すなわち生活の本拠とは言えない場所であるホテルの一室で,しかも肢体を晒すことを前提として来室する風俗店従業員を盗撮することの擬律につき果たして条例違反となるかという議論も存在しますが,法執行期間は積極に解し,逮捕事例も存在します。肢体を晒すことに承諾があったしても,それを撮影媒体機器に記録させることの承諾はないと言え,ましてやネット拡散のリスクもあるので違法な行為と言えます。
広く盗撮という女性の権利侵害行為を抑止するという観点からは,このような行為も処罰されるという前提で弁護活動をしなければなりません。
執筆者: 代表弁護士 中村勉
代表パートナー弁護士(法人社員) 中村 勉
代表パートナー弁護士である中村勉は,北海道函館市出身,中央大学法学部(渥美東洋教授の刑事訴訟法ゼミ),コロンビア大学ロースクールLLM(フルブライト ...