ご家族が逮捕・勾留後、起訴されている場合、勾留中のご本人が保釈により釈放されるためには、保釈金を用意する必要があります。
保釈金は、遵守事項に違反することなく裁判が終了すれば全額が戻ってきますが、必要な保釈金の額は数百万円と高額になることが多く、ご自身では用意できない場合もあります。
しかし、ご自身で保釈金が用意できない場合であっても、ご本人の保釈を諦める必要はありません。「日本保釈支援協会」という団体を利用すれば、保釈金を借りることができます。
日本保釈支援協会を利用した保釈金の立替え制度について、弁護士が解説します。
保釈金の相場はどれくらいか
保釈金は、ご本人の裁判への出廷を確保するための担保の役割があります。ですから、基本的には高額で、保釈金が150万円を下回ることはほとんどありません。実刑判決が予想されるような重大事件、同種前科があって実刑判決を免れないような事件、複数の事件が併合されている事件の場合等には、保釈金が300万円から500万円ほどになる場合もあります。
例えば、初犯の覚せい剤の自己使用など、単純な事件の場合の保釈金は150万円とされることが多いです。他方、同じ薬物事犯でも所持していた違法薬物の量が多い場合や、共犯者がおり口裏あわせのおそれがあるといった事情がある場合には、200万円以上とされることがあります。
保釈金の立替え制度
保釈金は、裁判が終われば全額が返還されます。
しかし、裁判のために示談金を用意する必要がある場合や、別件でお金が必要で使ってしまった場合など、ご家庭の様々な経済事情によっては、高額な保釈金をご自身で準備ができないということもあると思います。
そのような方のために、保釈金の立替え制度を行っている日本保釈支援協会があります。
日本保釈支援協会の手続き
日本保釈支援協会とは、保釈金の立替え業務を行っている一般社団法人です。
日本保釈支援協会の利用手続は、個人でもすることが出来ますが、担当弁護士の協力が必要になりますので、被告人を担当している弁護士との連携が必要です。
保釈金の立替えの上限は、500万円までです。また、保釈金の一部をご自身で用意できる場合には、足りない部分のみ立て替えてもらうこともできます。
日本保釈支援協会の立替えの流れ
それでは、日本保釈支援協会を利用する場合、どのように保釈金の立替え手続が進むのかを説明します。
1. 申込
日本保釈支援協会の立替えを申し込むことができるのは、被告人以外になります。被告人の家族、親戚、友人、知人、同僚など、被告人の関係者であれば、どなたでも申し込むことができます。
2. 審査
日本保釈支援協会から申込人、担当弁護士に電話があり、事件の内容や前科の内容についての聴取がされ、保釈金の立替えの可否について審査がされます。審査の結果は、最短で30分程度でわかります。
3. 契約
審査が通ったら、申込人の本人確認書類等を用意し、基本的には担当弁護士を通して、保釈保証金立替え委託契約を締結します。
4. FAX
担当弁護士が日本保釈支援協会に対し、「立替金取り扱い確認書」と「保釈許可決定の通知」(裁判所からの「保釈許可決定の謄本(写し)でも可」)をFAXします。
5. 保釈金の立替え、立替金の返還
申込人が用意した保釈金の立替手数料を日本保釈支援協会に振込み、入金確認後に、担当弁護士の口座に立替金が送金されます。立替手数料は、以下の表のとおり、日本保釈支援協会から借りる額によって異なります。立替期間は、立替日から起算して2か月です。裁判が長期化し、2か月で裁判が終わらない場合には、2か月単位で立替え期間を延長することができます。その場合、2か月ごとに立替手数料を追加で支払う必要があります。
また、立替手数料とは別に、事件の内容や前科の状況によっては、「自己資金」を用意する必要がある場合もあります。自己資金の額は、数万円~数十万円程度となることが多いです。自己資金は、立替え手数料とは異なり、最終的には手元に返ってくるお金です。
裁判が終われば、裁判所から保釈金が返ってきますので、返ってきた保釈金を日本保釈支援協会に返還します。
立替金額 | 2ヶ月立替時の立替手数料+事務手数料 |
---|---|
50万円まで | 15,950円 |
100万円まで | 29,700円 |
150万円まで | 43,450円 |
200万円まで | 57,200円 |
250万円まで | 70,950円 |
300万円まで | 84,700円 |
350万円まで | 98,450円 |
400万円まで | 112,200円 |
450万円まで | 125,950円 |
500万円まで | 139,700円 |
まとめ
逮捕・勾留から裁判まで、長期間の身体拘束が続くことは、ご本人にとって負担が大きいことはもちろん、ご家族にとっても不安がずっと続くことになります。
保釈金が用意できないからといって保釈を諦める必要はありません。保釈され、身体拘束が解けることは、ご本人・ご家族の負担を軽減することはもちろん、裁判準備のために弁護士との打合せがしやすくなりますし、再犯防止のための治療を受けるなど、社会復帰の環境を整える準備もしやすくなります。
保釈申請の手続にも、保釈金の立替え手続にも、弁護士の活動が必須です。一日も早く身体拘束が解けるよう、是非弁護士にご相談ください。