痴漢事件の示談を弁護士が解説|刑事事件の中村国際刑事法律事務所

痴漢事件の示談を弁護士が解説

刑事弁護コラム 痴漢事件の示談を弁護士が解説

痴漢事件の被害者の方との示談とは

 痴漢事件における示談は,2つの意味で重要です。1つは刑事処分を軽くするためです。痴漢にあっては示談が成立すればほとんどのケースで不起訴となり,前科はつきません。2つ目は,刑事と民事の一括解決ができる点です。刑事と民事は異なります。刑事で罰金を払ったからといってそれで紛争解決はしません。被害者は民事で訴えて損害賠償を請求できるのです。この点,刑事事件になった時点で弁護士を雇い,示談を成功させればその示談書条項の中に,いわゆる清算条項をつけ,以後,民事でも訴えないことを被害者に約束させることができるのです。つまり,痴漢に関する紛争を一括解決できるのです。
 弁護士がついた場合には,被害者の方からすれば,被疑者には連絡先を伝えずに,弁護士にのみ自己の連絡先を知らせることで被疑者との間で示談交渉ができます。そのため,警察や検察官も,被害者の方との連絡を取り次いでくれますし,多くの場合で被害者は弁護士限りで連絡先を教えてくれます。
 したがって,痴漢事案で被害者と示談交渉をするためには,事実上,弁護士が必須といえるでしょう。早期に弁護士を立てることで,事件解決に向けた活動を円滑に進めることができます。

 以下,痴漢事件における示談の重要性や示談金の相場,事例など代表弁護士・中村勉が解説いたします。

痴漢で逮捕されたら

 ご家族が痴漢で逮捕された場合,早期釈放のために,できる限り早めに弁護士へご相談ください。ご家族でも逮捕されたご本人(被疑者)との面会ができるのは勾留決定の翌日以降です。弁護士の場合は勾留決定を待たずに,逮捕直後からご本人と面会(接見)することができますので,弁護士がご家族とご本人との間の連絡を取り次ぐことができる上,勾留回避による早期釈放のために必要なご本人からのヒアリングや書類の作成を行い,検察官や裁判官に働きかけることができます。
 早期釈放がなされた場合,ご本人は会社や学校から解雇・退学されることなく,元の生活に戻れる可能性が高くなります。
 逮捕・勾留された場合でも,不起訴処分で終結したら前科はつきません。不起訴は「検察官が起訴しない」,すなわち,裁判所に対して被疑者の処罰を求めないという意味です。もし,起訴をされてしまった場合,99%以上の確率で有罪となり,前科がついてしまいます。

痴漢事件における示談交渉の重要性

 痴漢事件において不起訴処分で終結するか否かは,被害者との示談成立の有無が最も重要だと言えるでしょう。起訴か不起訴かを決める検察官は,被疑者は被害者に対する謝罪の気持ちや反省があるのか,被害者の許しを得ているか,被害者に対して慰謝の措置を講じているか等を確認して起訴か不起訴かの判断をします。
 多くの痴漢事件では,初犯の場合,被害者との示談が成立していれば,不起訴処分となります。
 一方で,示談が成立していなければ,たとえ初犯であっても略式起訴により罰金が科される可能性があります。罰金が科されると,前科がつくことになります。

痴漢行為で成立する犯罪

 「痴漢行為」といっても,どのような罪名にあたるかは事案内容によって異なります。
 例えば,悪質な痴漢行為には「強制わいせつ罪」が成立し得ますが,強制わいせつ罪には罰金刑がなく,懲役6か月~10年という刑罰が定められています。
 各都道府県の迷惑防止条例違反に該当する痴漢行為の場合,都道府県の迷惑行為防止条例によって刑罰は異なりますが,6か月以下の懲役または50万円以下の罰金という刑罰が定められているケースが多いです。

迷惑行為防止条例とは

 迷惑行為防止条例とは,各都道府県内における居住者や滞在者に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等を防止し,平穏な生活を保持することを目的として定められている条例です。
 この条例では,痴漢や盗撮,嫌がらせなど,様々な迷惑行為を取り締まることを目的に規定されています。

  • 強制わいせつ罪: 下着の中に手を入れる,胸や陰部に触れる等の悪質なケース(6ヶ月以上10年以下の懲役)
  • 各都道府県の迷惑防止条例違反: 上記以外のケース(主に6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金)

痴漢事件における示談交渉の流れ

 示談交渉をするには,何よりもまず,被害者の連絡先がわからないと始まりません。
 とはいえ,痴漢被害に遭った被害者の方は,通常,犯人に対して嫌悪感や怒りの感情を持っていますので,被疑者にまた会うことはもちろん,連絡先も教えたくないはずです。ですので,警察や検察官も,示談のためとはいえ,被害者の方との連絡は基本的に取り次いではくれません。そのため,被疑者と被害者が直接会って示談交渉するということは基本的にありません。弁護士が被疑者の代理人として,被害者と示談交渉を行います。
 大まかな流れとして,まず,弁護士は警察または検察官に連絡し,示談交渉のため被害者の連絡先を伺いたい旨伝えます。そうすると,通常,警察または検察官は被害者に連絡し,被疑者の弁護士がそのように言っている旨伝え,被害者の連絡先を弁護士に教えてよいか尋ねます。被害者がこれを承諾すると,警察または検察を通して,被害者の連絡先が弁護士へと伝えられます。その後,弁護士が被害者と連絡を取り,示談交渉が始まります。
 示談交渉によって被害者の合意が得られたら,その合意の内容を示談書という書面の形にし,被害者の署名押印をいただきます。無事,被害者の署名押印をいただけたら,被害者に対して示談金を支払います。支払方法は,その場で手渡し,あるいは,銀行口座への振込のどちらかになります。銀行口座への振込の場合も,被疑者の口座から直接支払われるのではなく,弁護士事務所の預り金口座からの振込みになることが多いです。なお,どちらの方法であっても,示談の成立に影響を与えることはなく,金額の大きさや被害者の意向,その他の事情によって変わります。
 被害者との間で示談書を交わしたら,弁護士は示談成立の証拠として,示談書の写しを警察や検察官に提出します。その後,検察官に不起訴処分をするように求めたり,少しでも軽い処分にするよう求めたりします。

匿名で示談書を作成することはできるのか

 「自分の氏名を被害者に知られたくない」という理由で,匿名で示談書を作成することはできるのでしょうか。
 結論を言うと,被害者がそれでもよいと言ってくれるのであれば,示談書を匿名で作成すること自体は理論的に可能ですが,加害者側が自己の氏名を隠そうとするのは一般的に印象が悪く,示談交渉に悪影響を及ぼしかねません。また,仮に被害者の了承が得られたとしても,匿名では当事者の特定が不十分となり,示談成立の証拠としての価値は低いものとなってしまいます。
 また,被害者が捜査機関に問い合わせることによって,加害者の氏名が明らかとなる可能性もあり,被害者に氏名を知らさず示談を締結しようとすることの利点はほとんどないといえます。

痴漢の示談金の相場

 示談交渉では,示談金が重要となります。示談金は痴漢ではこの額という決まった額があるわけではなく,様々な要素によって決まります。ですので,相場もあるようでないものです。ただ,大体30万円~80万円程度でまとまることが多いです。
 通常,被疑者の経済力や,民事訴訟となった場合に裁判所から認められるであろう損害賠償額,罰金刑となった場合に科されるであろう罰金額,被害者の希望や感情等を踏まえ,決まります。

痴漢事件で示談成立した事例

同一の被害者に対する痴漢行為で逮捕されたが,示談成立し,不起訴処分を獲得した事案

事案概要

 駅のホーム上で臀部を触り,逮捕された。
 連日に渡り同一被害者に対して痴漢行為を及んだため,被害者への接触可能性が高いと考えられ,当初は,身柄解放は容易ではないという見通しだった。

弁護方針

 早期の身柄解放と,被害者の被害感情軟化のため示談を目指した。
 まず,被害者と接触しないよう,異なる通勤経路の定期券を保護者に購入してもらい,保護者が通勤に同行する旨の誓約書を用意した。
 次に,これらの資料を添付した意見書を検察官に提出し,勾留請求を回避して身柄の解放に成功した。
 被害者側との示談交渉の際には,被害者側が依頼人やその家族の素性に強い関心を有していた。そのため,どこまで情報を明らかにするかについて依頼人と丁寧に打ち合わせ,可能な範囲で情報を開示して被害者側の不安感を払拭してスムーズな示談に繋げた。

結果

 被害者との示談が成立し,不起訴処分を獲得した。

同種前歴のある押し付け痴漢で示談を成立させ,検察に事件を送致されずに終結した事案

事案概要

 混雑している電車内における,いわゆる押し付け痴漢の事案。その場で被害女性に痴漢と呼ばれて否定するも警察を呼ばれたもの。過去2年以内に同種の前歴が1件あったため,被害者との間で示談が成立したとしても不起訴処分にはならないおそれがあった。

弁護方針

 受任当初より示談成立を期して臨んだが,依頼者には比較的最近において類似の前歴があった。したがって本件において示談は不起訴処分を獲得する上で必要条件ではあるものの,十分条件とはならないことを想定した。
 この点について依頼者に予め十分な説明を行い,理解を得た上で示談交渉に着手した。当然のことながら,被害者との連絡においてはその心情と意向をよく聴き取り,真摯な対応を追求した。
 他方,依頼者には謝罪文作成,心理学関係の書籍購読と反省文の作成に取り組んでいただき,これらは弁護人による不送致を求める意見書の添付資料として警察に提出した。
 結果的に事件発生後1週間という短期間で示談が成立し,被害届提出に至る前にこのような結果を得られたことは大きかった。
 本件の「押し付け痴漢」という態様は,混雑した電車内等の狭い空間で偶然生じた身体的接触を,自己の性的欲求を満たすべく作為ないし不作為的に継続すると言ったようなもので,一般的な痴漢のイメージとはやや異なるが,やはり犯罪として同様に処罰される。
 この種の痴漢は犯罪の認識が不足しがちな傾向があり,本件の依頼者も当初は必ずしも自身に性依存症の傾向があることまでは考えていない様子であった。
 しかしながら弁護人が強く勧めた書籍購読後の反省文においては意識の変化が見受けられ,再犯防止に資するものとなった。
 総じてスムーズに進んだ弁護活動であったが,警察と良いテンポで連絡を取ることができたのもこれに寄与していると考える。

結果

 事件発生後1週間以内に示談が成立した。
 早期示談成立により,被害者から被害届が提出されなかったことや,意見書記載の内容も踏まえ,警察が検察に事件を送致せずに事件が終結した。

痴漢えん罪事件において,受任翌日の釈放,嫌疑不十分を理由に不起訴処分を獲得した事案

事案概要

 通勤電車の中で身に覚えのない痴漢の容疑をかけられ,逮捕された事案。翌日に勾留決定がされるか否かが決まるという重要なタイミングで,家族から依頼を受けた。

弁護方針

 依頼を受けたのが勾留決定される日の前日の夕方であったため,すぐに接見に行き,容疑の内容,逮捕状況などを詳細に聴取。さらに,ご家族の協力も得て,釈放後の生活圏の調整,家族の監督体制を整え,その内容を書面にまとめ,翌日朝一番に裁判所に提出。
 さらに,痴漢容疑について否認をしつつ,被害者とされる女性と示談する方針も考えられたが,ご依頼者やご家族と相談して示談をしない方法を選択。ご依頼者に取調べ対応を徹底的に指導し,嫌疑不十分で不起訴処分を狙うこととした。

結果

 痴漢の容疑について否認を貫いたまま勾留請求が却下され,受任翌日の釈放が叶った。
 その後,在宅のまま捜査がされ,警察・検察から取り調べを受けたが,結果的には嫌疑不十分により不起訴処分となった。

痴漢事案において身柄引受書を作成し,勾留請求を回避し,不起訴処分を獲得した事案

事案概要

 被疑者が走行中の電車内において女性の身体に触れたという痴漢事案。被疑者は逮捕直後から一貫して事実を認めていた。
 被疑者は日本人の妻と共に日本で生活しており,日本の会社に勤務していた。

弁護方針

 妻の身柄引受書を作成し,勾留請求回避を東京地検公安部に依頼し,勾留請求を回避できた。その後,被害者との示談交渉に着手し,被害者から宥恕を得ることができた。

結果

 不起訴処分を得ることができた。

同種前科のある痴漢事件において,再犯防止のための環境を整備し,不起訴処分を獲得した事案

事案概要

 被疑者が,電車内で女性の陰部付近に触れたという痴漢事件。被疑者は,自身の罪を認めていたものの,2年前に罰金50万円の同種前科があった。
 日本人の妻と日本で居住していた。

弁護方針

 被疑者の妻による身柄引受書を作成し,弁護人からも被疑者を監督する旨を上申して,勾留請求の却下決定を得た。検察官からの準抗告も棄却された。被害者との示談交渉も成立した。
 しかしながら,同種前科があったため,示談を成立させても,略式罰金が科される可能性があった。

結果

 既に,勤務先会社にも事件は露顕していたため,勤務先会社の協力も得て,勤務先会社からも電車に乗せないように監督する旨の誓約を得られた。また,通勤のために電車に乗る必要のない場所に転居させ,再犯防止のための環境を整備した。引っ越し費用についても,勤務先の会社から融資を受けた。
 以上の結果,不起訴処分を得ることができた。

痴漢事件において上申書を作成し,示談を成立させ不起訴処分を得た事案

事案概要

 被疑者が,電車内で女性の陰部付近に指先で触れたという痴漢事件。被疑者は,被害女性との接触は認めたものの,故意を否認していた。
 被疑者は,日本人の妻と日本で居住していた。

弁護方針

 否認事件ではあったため検察官は勾留を請求したものの,妻の身柄引受書を作成し,通勤経路も変更させる旨を本人に誓約させ,弁護人からも監督することを上申した上で,勾留請求却下決定を得た。また,検察官からの準抗告も棄却された。

結果

 副部長宛に,否認しているものの,示談成立後に自白に転じる可能性がある旨の上申書を作成した。その結果,検察官も示談交渉に協力的な姿勢となり,被害者との示談が成立し,不起訴処分を得た。

まとめ

 中村国際刑事法律事務所では,痴漢事件の示談交渉に多くの実績を有している弁護士が示談交渉に当たります。受任後すぐに警察や検察官と連絡をとって痴漢の被害者の連絡先を教えてもらい,迅速に示談交渉に着手します。交渉に当たっては,何よりも被害者心情に配慮します。
 痴漢事件における被害者は,被害に遭ったことで精神的・肉体的に傷ついています。中には,痴漢を恐れて電車に乗れなくなってしまった方も実際にいらっしゃいました。
 そのような被害者の方々と接した際,いきなり示談金の話を切り出したり,強引に示談に持ちこもうとすることはかえって逆効果です。被害者心情に配慮したソフトな示談交渉は,中村国際刑事法律事務所の得意とするところです。

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