盗撮事件で不起訴を目指す弁護活動を解説|刑事事件の中村国際刑事法律事務所

盗撮事件で不起訴を目指す弁護活動を解説

刑事弁護コラム 盗撮事件で不起訴を目指す弁護活動を解説

盗撮事件で不起訴を目指す弁護活動について弁護士が解説

 盗撮事件は,何も活動を行わないとほとんどの事件で罰金刑となり前科がつきます。前科がつくと後述するような様々な不利益が生ずることが考えられます。また,盗撮事件といっても一括りにはできず,事件の内容によっては公判請求され、ニュースで見るような公開の裁判を受けることになる可能性もあります。
 したがって,できる限りのことをして不起訴処分の獲得を目指すべきです。不起訴処分となれば,前科とはなりませんので,前科に伴う不利益を受けることはありません。
 以下,盗撮事件で不起訴を目指す理由,具体的な弁護活動について,弁護士・中村勉が解説いたします。

盗撮事件で不起訴となるケース

 まず,不起訴には以下の3種類があります。

  • ①起訴猶予
  • ②嫌疑不十分
  • ③嫌疑なし

 起訴猶予は,被疑者が犯罪を行ったことの十分な証拠がそろっており,嫌疑が十分だけれども,被害者との間に示談が成立していることや本人の反省状況等を加味して,起訴を猶予して不起訴とすることをいいます。
 盗撮事件で不起訴となるケースはほとんどの場合,この起訴猶予によるものです。
 嫌疑不十分は,被疑者が犯罪を行ったことの証拠が不十分な場合をいいます。例えば盗撮のデータは残っているけれども撮影された場所が特定できないなど,起訴しても証拠が不十分なために有罪判決が得られないと判断されるようなケースは,嫌疑不十分として不起訴処分となります。
 嫌疑なしは,被疑者が犯罪を行っていないことが証拠上明らかな場合に,嫌疑なしとして不起訴処分となります。
 嫌疑不十分と嫌疑なしは実質的な無罪ともいえます。

盗撮事件で不起訴になる確率

 盗撮事件での不起訴処分率は公開されておりませんが,毎年刑事事件全体で約半数以上の事件で不起訴処分となっております(出典: 2021年検察統計「8 罪名別 被疑事件の既済及び未済の人員」)。
 こちらは刑事事件全体の数字であり,この中には強盗や殺人などの重大犯罪も含まれているので,盗撮事件については,もちろん事件の内容にもよりますが,不起訴処分獲得の可能性は更に高くなると考えても良いでしょう。また,不起訴にならなかった事案の中には,金銭的な事情等からそもそも示談を試みていないなど,そもそも被疑者が不起訴を目指していない事案も含まれています。不起訴を目指して弁護士に依頼するなどした方の中で不起訴になる確率は更に高くなります。

盗撮事件が起訴されるケース

 盗撮事件が起訴される場合には,略式起訴公判請求が考えられます。
 略式起訴は,100万円以下の罰金または科料に相当する事件について,被疑者の異議がない場合にされるものです。正式裁判によらず,書類のみの審査で裁判所が罰金を科する旨等の略式命令をします。略式命令で懲役刑が科されることはありません。盗撮事件において被疑者が盗撮を認めている場合には,原則としてこの略式罰金となります。
 公判請求は,正式な裁判のことをいい,法廷で証拠調べや判決の言渡しがされます。盗撮事件において公判請求されることが考えられるのは以下のような場合です。

  • 被疑者が盗撮を否定している場合
  • 被疑者が盗撮を認めている場合であっても,被疑者が略式起訴について同意していない場合
  • 被疑者が盗撮を認めている場合であっても,盗撮や痴漢等同種の前科が多数あるとき
  • 被疑者が盗撮のみならず,強制わいせつや強制性交等重大な事件も一緒に行っていた場合 など

 公判請求された場合には,懲役刑が科される可能性も出てきます。その場合,執行猶予がつかなければ,実刑となり,実際に刑務所に行くこととなってしまいます。

盗撮事件で不起訴となるための弁護活動

 罰金も刑罰ですので,前科となります。したがって,略式罰金になることの多い盗撮事件であっても,不起訴を目指すべきです。
 また,盗撮の前科がすでにある人であっても,検察官に公判請求されてしまうと略式罰金の場合と異なり,公の法廷に立たないといけないこととなりますし,実刑になる可能性もありますので,やはり不起訴を目指すべきです。
 ここでは,盗撮事件において不起訴を目指すにあたって考えられる弁護活動をご紹介いたします。

示談交渉

 まず,盗撮で不起訴となるために最も重要となるのが,被害者との示談交渉です。示談の有無で不起訴かどうかが決まるといっても過言ではありません。検察官が起訴・不起訴を決める際には,被害者の処罰感情がどれほどのものであるかを考慮します。被害者が被疑者の厳罰を求めている場合には,検察官はその意向を尊重し,被疑者に何らかの処罰を与えなければいけないと考えます。
 一方,被害者が被疑者の刑事処罰を求めていない場合には不起訴としてよいと判断するのです。そのため,被害者との間で,被疑者が被害者に対する慰謝料等を含む示談金を支払う代わりに,被害者が被疑者の刑事処罰を求めないとする内容の示談が成立した場合には,検察官は通常不起訴とします。
 そこで,示談交渉をどのように行うかです。
 被疑者が被害者の連絡先を知らない場合は,警察や検察官に取り次いでもらって教えてもらうことになりますが,ほとんどの場合,被疑者本人への取次ぎは断られます。被疑者が被害者に対して報復をしたり,脅迫するなどして証拠隠滅を図ったりするおそれがあるからです。被害者としても,加害者である被疑者に自分の連絡先を知られたくないのはもちろんのこと,被疑者から直接連絡を受けるのは怖いと思うでしょう。たとえ被疑者が被害者の連絡先を知っている場合であっても,同様の理由から,被疑者本人が被害者へ直接連絡するということは避けるべきです。
 盗撮事件では,被疑者に弁護士がつけば,多くの場合,弁護士限りで被害者の連絡先を教えてもらうことができ,被害者と示談交渉の席につくことができます。また,刑事事件に精通している弁護士であれば,被害者の感情に配慮した丁寧なやりとりが期待できます。
 なお,弁護士が被害者と示談交渉するにあたっては,通常,被疑者となっている本人には被害者宛ての謝罪文を書いていただきます。謝罪文を書きながら,本人はさらに反省を深めることになります。本人の書いた謝罪文の草案を弁護士において読み,本人がきちんと反省し,被害者の気持ちに考えを巡らせることができるかについてチェックして適宜アドバイスをするのも大切な弁護活動の一環といえます。また,被害者にお渡しした謝罪文の写しは検察官にも提出します。

事件現場に立ち寄らないこと等の誓約

 盗撮は,通勤中の電車内や駅構内,トイレ等,被害者が日常生活で使用するような場所で行われることが多く,被害者はそのような場所で加害者とまた遭遇することをおそれるものです。したがって,上記示談交渉にあたっては,加害者において今後事件現場に立ち寄らないことを誓約してもらうことがあります。事件現場が通勤中の電車内や駅構内であった場合には,通勤経路や利用する駅を変更する旨の誓約をすることが多いでしょう。
 また,被害者の処罰感情が強く,示談に応じてもらえないような場合にも,加害者においてそのような誓約を検察官に対して行い,被害者側に配慮していることをアピールすることが考えられます。

クリニックへの通院

 盗撮事件は初めて捕まった方であっても,それまでに盗撮を繰り返しているという方がほとんどです。ですので,同種の前科がある方のみならず,いわゆる初犯の方であっても,性依存の傾向がみられるようであれば,専門のクリニックへの通院をおすすめすることがあります。
 弁護士からは検察官に,本人のクリニックへの通院状況等に関する疎明資料を提出し,本人が再犯防止策を講じていることをアピールします。

検察官への上申書

 被害者に対する謝罪文はあくまでも謝罪を内容とするものであり,反省文ではありません。また,起訴・不起訴を決めるのはあくまでも検察官ですので,被害者に反省の態度を示したところで,不起訴になるわけではありません。
 そこで,検察官に対して本人の反省状況を明らかにするため,反省状況を内容とする上申書を本人に書いてもらうことがあります。
 また,同居のご家族がいる場合などには,本人が再び罪を犯さないよう,今後しっかり監督していく旨の上申書を書いていただくこともあります。

贖罪寄付

 弁護士を通じて交渉すれば示談に応じてもらえることが比較的多い盗撮事件であっても,示談を断られることはあります。その場合,示談金に充てる予定であった資金を贖罪寄付することが考えられます。贖罪寄付は,改悛の真情を表すためにされるもので,寄付先は弁護士会や慈善団体などが挙げられます。

 ところで,盗撮をしていないという場合,すなわち否認事件の場合であっても,ひとたび起訴されてしまうと,有罪判決を言い渡される可能性は非常に高いことはご承知のとおりかと思います。したがって,盗撮を否認している場合にも,弁護士をつけ,できる限りのことをして起訴を避けるべきです。
 その場合に考えられる弁護活動としては,本人に有利な証拠を集めて検察官に提出したり,取調べの対応についてアドバイスをしたりすることが考えられます。特に,取調べの対応についてはとても重要になってきます。自分の嫌疑を晴らす意図で話した内容が,意図に反して自分に不利な証拠として構成されることがあり得るからです。
そのほか,否認示談というものも考えられます。
 否認事件の弁護について,詳しくは以下の記事をご覧ください。

盗撮で起訴されたら前科がつくのか

 盗撮で起訴された場合には,無罪判決が言い渡されない限り,前科がつくことになります。起訴には略式起訴も含まれ,略式命令で罰金刑を言い渡された場合にも前科となります。
 前科があるとその内容によっては,一定の国家資格等の職に就けなくなったり,就職や転職において不利になったりします(履歴書に「賞罰」欄があった場合に,そこには「有」と書かざるを得なくなります)。海外渡航にあたり入国制限を受ける可能性もあります。
 また,罰金の前科であっても,弁護士や医師ですと数カ月の業務停止処分を受けることがあります。
 したがって,今後の社会生活のことを踏まえると,起訴を避けることがとても重要です。

盗撮で不起訴を獲得した事例

 当事務所で取り扱った盗撮事件で,不起訴処分を獲得した事例を一部ご紹介いたします。

まとめ

 いかがでしたでしょうか。前科があるか,初犯であるかにかかわらず,盗撮事件において不起訴を目指す重要性をおわかりいただけたかと思います。
 また,盗撮事件で不起訴を目指すには,弁護士をつけることが必須といっても過言ではありません。
 盗撮で立件されてしまった方,ご家族が逮捕されてしまった方はお早めに刑事事件に強い弁護士にご相談ください。

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