賭け麻雀は犯罪となるか?|成立基準や捜査手法を弁護士が解説|刑事事件に強い元検事弁護士が強力対応

賭け麻雀は犯罪となるか?|成立基準や捜査手法を弁護士が解説

刑事弁護コラム 賭け麻雀は犯罪となるか?|成立基準や捜査手法を弁護士が解説

賭け麻雀は犯罪となるか?|成立基準や捜査手法を弁護士が解説

 近年,前東京高等検察庁検事長の賭博スキャンダルにより注目されている賭博罪。
 しかし,例えばボウリングで負けた人が勝った人にジュースを奢る,など日常で普通に見られる光景であることも事実です。このような事柄も賭博罪となってしまうのでしょうか。
 本コラムでは,どのような行為が賭博罪となってしまうのか,また,賭博罪となってしまったら,どのような刑罰を受けるかについて,解説していきます。

どのような行為が賭博罪となるのか? その刑罰は?

そもそも賭け事とは?

 賭け事は,大きく分けると「賭博」と「富くじ」に分けられます。
 賭博とは,偶然の勝ち負けによって財産を得たり,失ったりする争いのことです。判例によれば,技量等の差異により勝敗があらかじめ歴然としているときは格別,多少とも偶然の事情により勝敗が左右され得るような場合には偶然性ありとされています。(大判明44.11.13刑録 17輯1884頁)
 麻雀は技量の差異により勝敗が左右される側面があるものの,偶然の勝負と言えるか。麻雀に偶然性は認められますので,賭博と言えるでしょう。(大判昭6.5.2大刑集 10巻197頁,昭10.3.28大刑集 14巻343頁)
 賭博も富くじも自己が財産を失うというリスクを負うことで,それ以上のリターンが得られるかもしれないという部分に誘惑的な作用があるため,依存性が高く,社会的に有害であるとされ,以下で述べるように,刑法によって罰則が科されています。

賭け事に関する犯罪について

単純賭博罪(刑法185条)

 賭博をした者は、50万円以下の罰金又は科料に処する。ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。

 単純賭博とは,たまたま誘われて行ってしまった等,賭博に対して常習性がない場合に適用されます。
 単純賭博罪の刑罰は「50万円以下の罰金又は科料(1000円以上1万円未満)」ですので,懲役刑となって服役することはありません。

単純賭博罪にあたるように見える行為でも,罰されない場合がある?

 刑法185条ただし書には「ただし、一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない。」と規定されています。
 つまり,賭けたものが「一時の娯楽に供する物」であれば,処罰をされないこととなります。導入で書いたような,ボウリングの勝ち負けでジュースを奢る人を決める,負けた人が1000円のランチを奢るというような場合,一般的に価格も安く,すぐに消費するような物であるので,これにあたると言え,処罰されません。
 では,金銭の場合はどうでしょうか。判例では,金額の大小に関わらず,この規定には該当せず,単純賭博罪の成立を認めています。(最判昭和23年10月7日刑集2巻11号1289頁)
 しかし,刑法学者の中には飲食物程度の少額の金銭であれば,「一時の娯楽に供する物」に含めて不処罰でも良いのではないか,という意見もあります。
 現在話題となっている麻雀賭博も,「テンピン」程度の金銭を賭けることは,これに該当するか否か,難しいところで,親睦に重きがあるのか,金銭得喪に重きがあるのかにより処理も異なると思います。実務の感覚としては,一晩に数万円もの現金が動く賭博は,単純賭博罪成立と判断される可能性はあると言えます。

常習賭博罪(刑法186条1項)

 常習として賭博をした者は、3年以下の懲役に処する。

 「常習として」というのは,賭博を反復累行する習癖が存在することをいいます。(大コンメンタール3版9巻133頁,最決昭54.10.26刑集 33巻6号665頁)
 ただ,実際に繰り返し行っている場合だけに該当するのではなく,仮に賭博罪での前科前歴がなく,1回の行為で逮捕・起訴されたのであったとしても,繰り返し賭博をする習癖が認められれば,この罪によって裁かれることとなるので注意が必要です。

 賭博の反復累行の事実の資料として常習性を認定したものとして,以下が挙げられます。(大コンメンタール3版9巻167-168頁)

  • 約4か月間にしばしば (大判大3.10.7刑録 20輯1816頁)
  • 約5か月間に数回 (大判大6.11.8刑録 23輯1192頁)
  • 約1年8か月間に数十回 (大阪控判大14.3.10新聞 2392号21頁)
  • 約4か月間に9回 (大判昭3.10.26大刑集 7巻678頁)
  • 約1年から1年数か月間に10-30回 (大判大6.2.9評論20巻刑訴157頁)
  • 3か月間の間に3回 (刑集 4巻10号1951頁)

 問題となっている元検事長の麻雀賭博は,報道によれば,約3年前から月1,2回程度の頻度で行われていたとされており,上記先例から言って,常習性が認定できる頻度・回数と言えるでしょうが,あとは,立証の問題で各賭博行為を証拠をもって立証できるかがポイントになります。

賭博罪はどのように捜査され,立証されるか

 賭博は密室で行われることが多く,路上での犯罪と違って目撃者もおらず,立件が比較的難しい犯罪です。
 ですから,一般的に,賭博の捜査は現行犯を狙います。賭博情報を入手した警察が,何日も何週間もかけて内偵捜査を行い,場所,時間,メンバーを割り出していきます。
 そのうえで,密告者や協力者から賭博実施に関する供述を得て,供述調書を作成し,これに内偵捜査に関する捜査報告書,尾行の写真撮影報告書,行動確認報告書などを加えて,捜索差押令状の発付を得ます。そして,賭博場所を張り込みしたうえで,一斉に十数名もの捜査員が令状を携えて現場に踏み込み,証拠物,例えば,麻雀賭博であれば,雀卓,麻雀パイ,勝敗票のようなメモ,現金などを押収し,現場の写真撮影,参加者の写真撮影などを行って現行犯状況の証拠保全をし,その上で,参加者の任意同行を求めて警察署で事情聴取が行われます。これは違法カジノ賭博でも同様です。
 このような現行犯事案ではなく,過去の賭博行為についての立件となると,証拠が散逸しているので,供述のみで立件せざるを得ず,犯行日時場所の特定のほか,参加メンバーの特定やそのアリバイの有無に関する確認など,慎重な捜査が求められます。
 今回の前検事長の麻雀賭博も,報道した週刊誌記者は,張り込みなどの取材の裏付けがあって報道しているでしょうが,これを改めて捜査して立件するとなるといくつかのハードルがあります。もっとも,本人が認めているのであれば,いわゆる略式罰金による処理も可能でしょう。ただ,その場合であっても,少なくとも実行場所の写真撮影による特定,賭博に使用した道具(麻雀卓や麻雀ぱいなど),アリバイがないことを示す証拠(手帳や運転日報等の証拠)を収集しなければならず,捜索差押の強制捜査は必要になると思います。

まとめ

 いかがでしたか。賭博罪という犯罪は,犯罪が成立するかどうかに関して,一時的な娯楽といえるかどうかという点を検討しなければなりません。賭博罪に該当し得る行為は,日常の中でもたくさんありますが,そう言った行為が全て逮捕されたり,起訴されたりするわけではありません。
 また,金銭の多寡や頻度のみならず,行為者の属性や社会的影響も当然加味して立件の当否を判断すべきでしょう。検察官は国家公務員であり,厚い身分保障があります。
 しかも,犯罪者を訴追糾弾することをその職務とするものです。一般市民であれば,立件を見送られる態様であっても,そのような社会的地位にあるが故に影響も大きく,その行為も一般市民が行うより悪質性が高いと判断することは,不合理なものではありません。
 当事務所がこれまで扱った多くの公務員犯罪では,民間人であれば逮捕されない事案でも逮捕されたり,民間人であれば起訴猶予になる事案であるのに起訴されたり,民間人であれば執行猶予が付く事案なのに,実刑判決を受けたというケースはたくさんあります。それは,公務員の高い身分保障の裏返しでもあり,高い身分保障があるがゆえに,ひとたび反社会的行為をしたならば厳正に対処するという一つの正義秩序なのです。立件価値や起訴価値はそのような正義感に立って判断しなければ,市民が公務員に寄せる信頼感や尊敬は根底から覆されるでしょう。(代表弁護士 中村)

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