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コロナウイルスに便乗した詐欺に注意! – 助成金詐欺について弁護士が解説します

昨今、新型コロナウイルス感染症の影響が急速に拡大する中、数々の企業が深刻な打撃を受けています。そのような中、営業休止や売上減少を余儀なくされている中小・小規模事業者の事業継続に対して、各地で助成金を支給する支援が行われ始めています。

しかし、このような助成金は、これまで様々な詐欺に利用されてきました。これから始まろうとしている新型コロナウイルス関連の助成金も、現に詐欺師の注目を集めており、被害はこれからどんどん拡大していくことと思います。

今回は、助成金詐欺を主なテーマとして取り上げ、新型コロナウイルスに絡めた詐欺の手口・実例を紹介します。助成金詐欺だけでなく、新しいタイプのオレオレ詐欺についても一部ご紹介します。是非参考にしていただいて、このような被害に遭わないように気を付けてください。

助成金詐欺の手口・実例

現実に起きている助成金詐欺の類型をご紹介します。

1. キャリアアップ助成金詐欺

キャリアアップ助成金は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者など、いわゆる非正規雇用の労働者の企業内でのキャリアアップなどを促進するため、正規雇用への転換、人材育成、処遇改善などの取り組みを実施した事業主に対して支給される助成金です。

労働者の意欲、能力を向上させて事業の生産性を高め、優秀な人材を確保するに利用することを目的としています。助成内容は「正社員化コース」「健康診断制度コース」などにコース分けされており、助成金受給希望者は、まず、キャリアアップ計画を作成・提出し、その後、各コースについて実施した上、順次支給申請を行い、受給決定を受けることになります。

一見、一般の方が巻き込まれることはないようにも思えるこの詐欺ですが、知っておいて損はないのがこのキャリアアップ助成金を利用した詐欺です。この助成金は、上記のとおり、そもそも制度自体が複雑なので、よくわからないまま関わりはじめ、気が付いた時は既に、何百万円、何千万円という巨額の詐欺事件の共犯者になっていたという事例が現実に起きています。

特に、事業者の方は、「難しい申請手続を全部代行するので、助成金をもらってみませんか?手数料は支給額の○%で結構です。」といった申請代行の誘いには注意しましょう。手続がよくわからないので、言われるがまま書類を渡して全部任せていたら、受給要件を満たしていないのにもかかわらず偽造書類で申請されており、後日警察から連絡が来て初めて詐欺であることに気が付いたという事件が現実に起きています。

個人の方でも、職場の上司から万が一、架空の出勤簿や業務日誌などを作るよう指示されたら、この詐欺を疑うべきです。このような指示を受ければ、助成金に詳しくない方でも、なんとなくおかしいとは思うでしょう。ただ、具体的に何に使う書類なのかわからなければ、詐欺とは確信が持つのは難しく、確信がない以上は、上司に対して、「この書類作成は詐欺ではありませんか?」「やりたくないです。」などとはっきり言うのは現実問題として難しいです。

上司の命令が絶対的な気質の職場や、周囲の同僚も同じような作業をするように指示されている職場では特に、疑問を抱いても口にしにくいかと思われますが、逮捕された時には手遅れです。怪しいと思ったら勇気を出して口にしましょう。「会社ぐるみでそんな大掛かりな詐欺をしていることがあるのか?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、これも現実に起きている事件です。

2. 雇用調整助成金・中小企業緊急雇用安定助成金詐欺

雇用調整助成金・中小企業緊急雇用安定助成金とは、経済的な理由で事業活動を縮小せざるを得ない事業主に対し、従業員の雇用を維持してもらうための助成金です。たとえわずかな日数であっても、休業等を水増ししたり、教育訓練中に通常業務を行ったことを隠して申請することなどは不正受給に当たります。

典型的な事例としては、受注の回復に伴い、休業させていた従業員を業務に従事させていたにもかかわらず、引き続き休業を実施しているように偽って申請するといったものがあります。

また、急に仕事が入ったときなど、休業予定だった従業員を急きょ働かせることがあったにもかかわらず、計画届通りに休業したと偽り、また、有給休暇を取得した従業員についても休業と偽って申請し、助成金を受給するといったものもよく見られます。実際は通常の業務も行っているにもかかわらず、1日教育訓練を行っていたと偽って申請をしていたという事例もよく見られるところです。

雇用調整助成金の特例措置の拡大について

この雇用調整助成金こそ、今回拡大している新型コロナウイルスと直接関連する助成金になります。新型コロナウイルス感染症にかかる特例措置として、2020年4月1日から6月30日までを緊急対応期間と位置付けられました。感染拡大防止のため、この期間中は全国において特例措置が実施されており、生産指標要件の緩和、休業規模要件の緩和など、様々な要件が緩和されており、また、本来事前提出が義務付けられている計画届の事後提出が認められています。さらに、助成率も通常時より大幅に引き上げられており、今もっとも注目を集める助成金と言っても過言ではないでしょう。

ただし、注意点は、あくまでこの助成金は先ほどご説明した事業者を対象とする雇用調整助成金の拡充であるため、個人を対象としたものではありません。また、様々な要件が緩和されているとはいえ、あくまで緩和されているにすぎず、決して何もしなくとも助成金を受給できるようになったわけでありません。要件を満たしていないのにもかかわらず虚偽の申請をすれば、当然不正受給となりますので、申請される事業者の皆さんはむしろ、支給要件のどこに変更点があるのかを念入りにチェックすることが望ましいでしょう。詳細は厚生労働省のホームページを参照していただければ幸いです。

新型コロナウイルス感染症に便乗した詐欺の手口・実例

以上ご説明したとおり、新型コロナウイルス感染症で助成金が出るようになったという話自体は本当ですが、その内実がよくわかっていない状態は危険です。既に、新型コロナウイルスの感染拡大に関連した数々の相談が、全国の消費生活センター等に寄せられています。その具体的な手口について、以下よりいくつかご紹介します。

市の新型コロナウイルス対策室を名乗る電話

例えば、以下のような電話です。

「○○市コロナ対策室です。この度は新型コロナウイルス感染のことで、大変ご心配をおかけしています。お見舞い申し上げます。市では、このような皆様に助成金をお配りしています。お子様1人当たり3万円です。つきましてはキャッシュカードの番号又は銀行口座番号に振込みますので番号を教えてください。」

冷静に考えれば、電話でキャッシュカード番号や銀行口座番号を聞いてくるのはおかしいはずですが、突然の電話で、最初に市を名乗っているため、その場ですぐに詐欺と見破れなくてもおかしくありません。最初の一言で相手を信用させる巧妙な手口です。

携帯電話会社名で、新型コロナウイルス関係の助成金を配布するとのメール

例えば、以下のようなメールです。

「○○○(携帯電話会社名)の会員の皆様へ」とあり、「新型コロナウイルスの影響で不安な日々をお過ごしかと思います。弊社社員一同も早期解決を祈るばかりです。さて、○○○では会員様に少しでも快適な生活を送っていただくため、事態収束まで毎月「助成金配布」を決定いたしました。毎月総額1億円を会員の皆様に限定配布させていただきます。」

このようなメールでの詐欺は、多くの場合、URLが添付されています。そして、そのURLを開くと「当選金が貰えるので振込口座情報を送信してださい。」などの指示があり、個人情報を盗む手口が一般的です。

新型コロナウイルスの検査が受けられると言う電話

例えば、以下のような電話です。

「新型コロナウイルスの検査が無料で受けられます。検査は自宅で受けられる簡易なものなので、これから自宅に行きます。その際、マイナンバーが必要なので教えてください。」

新型コロナウイルスは周知のとおり、陽性でも無症状の人が非常に多いため、自覚がない人でも、「自分も実は陽性なのではないか?」という不安がまとわりつく点で、非常にやっかいなウイルスです。上記のような電話は、誰もが抱いているこのような不安を逆手に取る点で、非常に悪質なものと言えるでしょう。

新型コロナウイルスを利用したオレオレ詐欺の電話

例えば、以下のような電話です。

自宅に息子を名乗る電話があり、「会社で事件を起こして上司からお金を借りたので、代わりに返済してほしい。」と頼まれた。その後、上司を名乗る男性から電話があり、「息子さんから聞いていると思うが、お金を貸しているので約100万円を返済してほしい。新型コロナウイルスの騒ぎでこちらもお金に困っているので、すぐにでも返してほしい。」と言われた。

途中まではこれまでにもよく見られた典型的なオレオレ詐欺です。ところが、途中「新型コロナウイルスの騒ぎでこちらもお金に困っている」という言葉が入ることで、現実味が格段に増すという仕掛けが追加されています。新型コロナウイルスでお金に困っている人は世の中に急増していることは周知の事実ですから、その部分については妙に信憑性があります。そのため、冷静に考えれば典型的なオレオレ詐欺の手法なのに、詐欺だと気が付きにくくなるという点で、やはり巧妙な手口です。

まとめ ― 詐欺に引っかからないために

いかがでしたでしょうか。本コラムでご紹介したとおり、世の中には様々な助成金があり、特に、新型コロナウイルス感染症にかかる雇用調整助成金の特例措置については、今最も注目すべき助成金と言えるでしょう。正しく助成金を活用すれば、廃業の危機を乗り切る切り札になり得ます。

ただ、一方で、緩和されたとはいえその受給要件は厳格に規定されており、安易に誰でも受給できるものではないことを忘れてはなりません。おそらく、本コラムを一読した皆さんは、「助成金の申請って難しそうだな」という感想を抱いた方も多いのではないでしょうか。

助成金は、難しいからあまりきちんと理解していない人が多い、理解していない人が多いから詐欺に利用されやすい―そんな実態がありそうです。実際に申請を検討されている皆さんはともかくとして、そうではない皆さんは、詳しい受給要件まで知っておく必要はないでしょう。ただ、安易に助成金がもらえるという話は詐欺であるということを、ここまでコラムを読んでくださった皆さんには、頭の片隅に入れていただければ幸いです。

最初の方にご紹介したとおり、助成金詐欺は被害者となるだけでなく、場合によっては、加害者の片棒をいつの間にか担がされるという点も非常に恐ろしいところです。今後はキャリアアップ助成金で見られたような詐欺の申請代行が、新型コロナウイルス感染症にかかる雇用調整助成金で登場したとしても、全く不自然ではありません。

万が一詐欺の被害に遭ってしまったことに気が付いたら、すぐに警察と口座のある金融機関に通報しましょう。また、詐欺の片棒を担がされているかもしれないというご不安が生じた場合は、弁護士に相談することがおすすめです。専門的な知識・経験であなたのご相談に全力で応えます。

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