事案
比較的閑散な道路における交通取締りにおいて、原告は、警報機が鳴っているのに踏切に進入したとして道路交通法33条2項違反の罪を告知され、運転免許証の提示を求められた。原告がこれを拒否したところ、現行犯逮捕されたため、本件逮捕が違法であるとして国家賠償請求訴訟を提起した。
判旨(大阪高裁昭和60年判決)
現行犯逮捕においても逮捕の必要性(逃亡または罪証隠滅のおそれ)が要件となるか否かについて検討するに、…現行犯逮捕も人の身体の自由を拘束する強制処分であるから、その要件はできる限り厳格に解すべきであって、通常逮捕の場合と同様、逮捕の必要性をその要件と解するのが相当である。…違反者が逃亡や罪証を隠滅するなどの行為を何らなしておらず、単に警察官の指摘した違反事実を否認し、免許証の提示を拒否したことのみをもって、住所、氏名を質すこともなく、他に人定事項の確認手段をとらないまま、直ちに現行犯として逮捕することは、逮捕の必要性の要件を満たしていないといわざるを得ない.。
コメント
現行犯逮捕の要件として、逮捕の必要性(逃亡または罪証隠滅のおそれ)を要求する明文の規定はありませんが、本件は、逮捕の必要性が要件となることを明らかにしました。その上で、本件の現行犯逮捕を違法とし、国家賠償請求を認めており、現行犯逮捕の適法性にも限界があることを示しています。
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