事案
覚せい剤使用の嫌疑のある被告人に対して、職務質問を行う際に、警察官は、被告人運転車両の窓から腕を差し入れ、エンジンキーを取り上げたり、自動車に乗り込もうとする被告人を両脇から抱えてこれを阻止する等して、約6時間半以上の間、被告人を現場に留め置いた。これらの警察官の行為が違法であるとして、これにひき続き収集された尿の鑑定書の排除を求めて、被告人が上告した。
判旨(最高裁平成6年判決)
被告人運転車両のエンジンキーを取り上げた行為は、警察官職務執行法2条1項に基づく職務質問を行うため停止させる行為として必要かつ相当な行為である。これに対し、その後、約6時間半以上も被告人を本件現場に留め置いた措置は、…被告人の移動の自由を長時間にわたり奪った点において、任意捜査として違法といわざるを得ない。しかし、…その違法の程度は、いまだ令状主義の精神を没却するような重大なものとはいえない。
コメント
エンジンキーを取り上げた行為について、本件では、職務質問を行うための停止行為として許容される範囲内であると判示しています。これに対して、被告人を留め置いた行為については、職務質問から任意捜査へと移行していることを前提とした上で、任意捜査として許容される範囲を超えた違法なものとし、任意捜査にも限界があることを示しています。なお、その後に収集された証拠の排除を求める上告は、棄却されています。
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