事案
凶器を所持した銀行強盗事件が発生し、犯人としての嫌疑が濃厚な被告人らに対して、職務質問をなすとともに、携行品の開披を再三求めたものの、一向に応じなかったため、被告人らの承諾を得ずに、携行品のうちのボウリングバッグのチャックを開け、内部を一瞥したところ、大量の紙幣が無造作に入っているのが見えたために、さらに施錠されたアタッシェケースをドライバーでこじ開けたという事案において、これらの開披行為が違法である等として上告された。
判旨(最高裁昭和53年判決)
所持品の検査は、口頭による質問と密接に関連し、かつ、職務質問の効果をあげるうえで必要性、有効性の認められる行為であるから、同条項(警職法2条1項)による職務質問に付随してこれを行うことができる場合があり、捜索に至らない程度の行為は、強制にわたらない限り、許容される場合があると解すべきである。もっとも、判断にあたっては、所持品検査の必要性、緊急性、これによって害される個人の法益と保護されるべき公共の利益との権衡などを考慮し、具体的状況のもとで相当と認められる限度においてのみ、許容されるものと解すべきである。
コメント
職務質問に附随する所持品検査については明文の規定がないものの、判例は、職務質問に附随するものとして、「強制の処分」(刑事訴訟法197条1項但書)にあたらず、かつ、任意捜査として許容される限度において許容されるとしており、所持品検査の適法性にも限界があることを示しています。