DNA型鑑定に証拠能力が認められるか否かが争われた事例
当時4歳の被害者が、栃木県足利市で行方不明となった翌日、遺体となって発見され、被害者が着用していた下着等が付近の川底から発見された。警察は、被告人が捨てた精液の付着したティッシュペーパーを領置し、下着に付着していた精液とのDNA型鑑定を行ったところ、MCT118DNA型が一致した。第一審及び控訴審は、MCT118DNA型の一致を重要な事実として犯人性を認定した。
被告人は、この判決を不服として上告した。
判旨(最高裁平成12年判決)
いわゆるMCT118DNA型鑑定は、その科学的原理が理論的正確性を有し、具体的な実施の方法も、その技術を習得した者により、科学的に信頼される方法で行われたと認められる。したがって、右鑑定の証拠価値については、その後の科学技術の発展により新たに解明された事項等も加味して慎重に検討されるべきであるが、なお、これを証拠として用いることが許されるとした原判断は相当である。
コメント
DNA型鑑定は、DNA型が人によって異なり、かつ、修正不変であることを利用して行われる検査方法です。本件では、DNA型鑑定の一種であるMCT118法による鑑定結果の証拠能力が争いとなりました。そして、本決定では、科学的原理の理論的正確性があること、及び、その技術を習得した者によること、科学的に信頼される方法で行われたと認められる方法で行われたことを判断理由として、DNA型鑑定結果の証拠能力を肯定しました。
なお、有罪判決確定後の再審請求において、DNA型の再鑑定が行われ、被害者の下着の付着精液と被告人の血液型等の各DNA型を検査した結果、両者の型は一致しないとされ、その後、無罪が言い渡されました。