事案
被告人宅の寝室にまで承諾なく立ち入り、任意同行に際し明確な承諾を得ず、退去の申出に応じることなく警察署に留め置き、尿の任意提出を求めた事案。
判旨(最高裁昭和61年判決)
被告人宅への立ち入り、同所からの任意同行及び警察署への留め置きの一連の手続と採尿手続は、被告人に対する覚せい剤事犯の捜査という同一目的に向けられたものであるうえ、採尿手続は右一連の手続によりもたらされた状態を直接利用してなされていることにかんがみると、右採尿手続の適法違法については、採尿手続前の右一連の手続きにおける違法の有無、程度をも十分考慮してこれを判断するのが相当である。
コメント
本件の任意同行は任意捜査の域を超えていて違法であり、それに引き続いた採尿手続も違法を帯びますが、証拠能力は否定されないとしました。判旨では、違法性の承継論の基準として「同一目的」「直接利用」を掲げていますが、この基準は、先行手続と後行手続との関連性を判断するためのメルクマールの一つであり、絶対的な基準ではないといえます。後行手続の違法性の判断は、先行手続における違法性の内容および程度、その違法な点が証拠収集手続とどの程度の密接度を有するか、などの総合判断によります。そして、後行手続が違法性を帯びるときは、後行手続の違法の重大性と排除の相当性を検討し、証拠能力の有無を判断します(違法収集証拠排除法則)。
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