事案
岡山市長選挙に立候補した被告人が、同選挙における被告人の選挙運動者と共謀の上、被告人の当選を得させる目的で、その選挙運動期間中に法定外選挙運動用文書を頒布したことにつき、第一審判決は被告人を有罪とした。
被告人が、公職選挙法243条1項3号、142条1項は憲法21条に違反し無効であるため、無罪として控訴したが、控訴審は棄却されたため、被告人が上告した事案。
判旨(最判 平成27年12月1日)
公職選挙法243条1項3号、平成27年法律第60号による改正前の公職選挙法142条1項の各規定が憲法21条に違反しないことは、当裁判所の判例の趣旨に徴して明らかである。
コメント
本判決は、先例同様、公職選挙法243条1項3号及び142条1項は憲法に反しないとしました。その理由は、これらの法は「法定外文書領布規制」を規定しているところ、当該規制の目的は、選挙の自由と公正の確保であるため、正当であり、規制と規制目的との間にも合理的関連性があるとしたうえで、法定外文書領布規制のより失われる利益よりも、得られる利益がはるかに多いと判断したためです。
また、なお書きではありますが、公職選挙法改正により可能となったインターネットを用いた選挙活動との関係においても言及しています。
インターネットによる選挙活動が解禁されたために、文書領布も自由化すべきであるから、違憲であるとの意見について、インターネット上での選挙運動も一定の規制の下に許されており、さらには、インターネットと文書図画は表現の態様や性質が異なるものであるため、インターネットを用いた選挙運動の解禁をもって、法定外文書領布規制の違憲性は基礎づけられないと判断しました。この判断もなお書きとはいえ、先例にはない判断であり重要と言えます。