事案
道路交通法125条1項の反則行為についての略式裁判につき、被告人に対し、本件反則行為の告知はされていたものの、通告を欠いたまま、名古屋区検察庁検察官事務取扱検察事務官が公訴を提起した事案。
判旨(最判 平成27年6月8日)
名古屋簡易裁判所は…被告人を罰金7000円に処する旨の略式命令を発付し、同略式命令は…確定した。
上記行為は、道路交通法125条1項の反則行為に該当するから、反則者である被告人に対しては、同法130条により、同法127条の通告をし、同法128条1項の納付期間が経過した後でなければ公訴を提起することができない。しかしながら、一件記録によると、被告人に対し、本件反則行為の告知はされていたものの、通告を欠いたまま、名古屋区検察庁検察官事務取扱検察事務官が公訴を提起したことが認められる。したがって、公訴提起を受けた名古屋簡易裁判所としては、刑訴法463条1項、338条4号により公訴棄却の判決をすべきであったにもかかわらず、公訴事実どおり前記事実につき有罪を認定して略式命令を発付したものであって、原略式命令は、法令に違反し、かつ、被告人のため不利益であることが明らかである。
コメント
道路交通法は、スピード違反や信号無視、駐停車違反等の行為に対して、刑罰を規定しています。もっとも、一定期日までに法律に定める反則金を納付すれば、前科はつきません(交通反則通告制度)。
つまり、反則金を期限内に納付した者に対しては、裁判を起こすこと(公訴提起)が出来ません(道路交通法128条2項)。そのため、反則金の支払いを求める通告手続は重要な手続といえます。
このような手続を欠いているために、刑訴法338条4号に基づき、公訴を棄却しました。