事案
被告人が、営業中のパチンコ店に放火して全焼させ、店内にいた客ら5名を焼死させ、10名に熱傷等の重軽傷を負わせた事案。現住建造物等放火、殺人、殺人未遂として死刑を言い渡したところ、「刑の量定が甚しく不当」(刑訴法411条2号)として争われた。
判旨(最判 平成28年2月23日
「犯行態様は、人出が多い日曜日のパチンコ店を狙った計画的な無差別殺人であって、極めて残酷かつ悪質である。結果は誠に重大であり、社会に与えた衝撃は大きく、遺族らの処罰感情も峻烈である。動機形成の過程には妄想が介在するが、それは一因にすぎず(中略)犯行及びその前後の具体的状況をみても、終始一貫性のある合目的的な行動をしているのであって、その精神症状が犯行に及ぼした影響は間接的であって大きなものではない。
以上のような事情に照らすと、被告人の刑事責任は極めて重大であり、被告人が犯行の翌日に自首していること、さしたる前科がないことなど、被告人のために酌むべき事情を十分考慮しても、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は、当裁判所もこれを是認せざるを得ない。」しても、原判決が維持した第1審判決の死刑の科刑は、当裁判所もこれを是認せざるを得ない。」
コメント
死刑は生命を奪う極刑であることから慎重に選択されるべきとして、「犯行の罪質、動機、態様ことに殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性ことに殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等各般の情状を併せ考察したとき、その罪責が誠に重大であつて、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむをえないと認められる場合には、死刑の選択も許される」(最判昭和58年7月8日、永山事件)とされている。
本事案においては、犯行の態様、計画性、結果の重大性、被害感情といった事情を重く考慮し、動機の形成においても精神症状の影響を排除した結果、罪責が極めて重大で極刑もやむを得ないと判断したと考えられます。