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相場操縦で逮捕されたら – 刑事事件に強い中村国際刑事の弁護士が解説

SMBC日興証券(以下「本件証券会社」といいます)の社員らが一定の銘柄の株価を維持するために相場操縦に関与したという金融商品取引法(以下「法」といいます)違反容疑により、本件証券会社が証券取引等監視委員の調査を受けたとの報道がなされています。以下より刑事事件に強い弁護士が解説します。

相場操縦と安定操作取引の違い

本件容疑は、ブロックオファーと呼ばれる株式売買取引を依頼された本件証券会社が、当該売買を成立させるために株価を維持する目的で、当該銘柄の株式を市場で買い支える取引を繰り返していたというものであり、相場操縦(法第159条2項)の疑いが持たれているとみられます。

ただ、この違反は、「取引を誘引する目的をもって」、つまり、典型的には、他の投資家を誘引して株価を上昇させ、自らは高値で売り抜けるといった目的で、当該株式の売買等がなされることが要件とされており、上記証券会社従業員が株価を下落させないために株を買い支えた場合に直ちに成立すると言えるか否かは一つの問題です。ちなみに、相場操縦の成立には投資家を積極的に取引に誘い込む意図までは必要ではないと解釈した判例(大阪地判平成18年7月19日)があります。

一方、本件が、上記の相場操縦でなく、政令に違反して株の「相場をくぎ付けし、固定し、又は安定させる目的をもって、…売買等をしてはならない」という安定操作取引(法第159条3項)に該当する可能性も考えられますが、本件のような株の買い支え行為が、価格の下限だけでなく価格の上限を設定することをも意図したものと認められる事情はあるのかという点が問題になり得ると考えます。今後の証券取引等監視委員会の調査等による全容の解明が待たれます。

ブロックオファーとは

ブロックオファーとは、証券会社が時間外で大口の売り注文を受け、同じく時間外で投資家に売却する取引のことです。証券会社では、売り注文を受ける際に、その日の終値を基準に売買価格を設定することが多く、終値が売り注文を受けた時点より低ければ、大口の注文主が不満を持ち、売買が成立しなくなるおそれがあります。

日経新聞(2021年11月3日)によると、本件証券会社の場合は投資家を集めた後の終値を基準にしていたため、投資家を募るために1~2日かかることも多かったとされ、同会社の社員らは、相対で決まるブロックオファーの買い取り額が下がらないように、市場で対象銘柄の買い支えを図ったのではないかという疑いを持たれているとのことです。

相場操縦で刑事事件化してしまったら

上記のとおり、相場操縦又は安定操作取引が成立するか否か、どちらが成立するのかなどを適切に判断するには、金融商品取引法、同施行令などそれ自体極めて専門的・技術的な法令を適切に解釈する法的専門知識が必要です。また、それが刑事事件化したときには、法令解釈だけでなく、証券取引等監視委員会、検察当局等どういう相手にどのようなタイミングでどう対応していくべきかなど、極めて実務的な対応も必要となります。
この種事犯が刑事事件化し、あるいはその兆しがあるなら、この種の刑事事件の実務に精通した弁護士にいち早く相談することが必要不可欠です。

まとめ

相場操縦、安定操作取引の概要がお分かりいただけたでしょうか。上記のとおり、金融商品取引法等一連の法令は、条文も長く細かく専門的で、法律家でもその読解が一筋縄にはいかないとともに、どの当局を相手にしていかなる対応を取れば良いかなどについても、通常の刑事事件にない専門性が要求されます。
その疑いをかけられたら、すぐにこの種事案の経験豊富な弁護士に相談しましょう。

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刑事事件は初動の72時間が重要です。そのため、当事務所では24時間受付のご相談窓口を設置しています。逮捕されると、72時間以内に検察官が勾留(逮捕後に更に被疑者の身体拘束を継続すること)を裁判所に請求するか釈放しなければなりません。弁護士へ依頼することで釈放される可能性が高まります。また、緊急接見にも対応しています。迅速な弁護活動が最大の特色です。

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