ウィンターインターン 参加者感想文 S.Nさん(2018年)(中央ロー在籍)
はじめに
私は,中村国際刑事法律事務所(NICD)のウィンターインターン3期生として,平成29年12月20日から2日間研修を行いました。私は,大学1年次より刑事法ローヤーを目指しており,将来は刑事弁護専門の法律事務所で研鑽を積みたいと考えておりました。しかし,予備試験合格後に実施される事務所説明会や体験プログラムのほとんどは,企業法務系の事務所主催のもので,自己の専門分野とはかけ離れたものでした。そのような中,私は予備試験合格者向けのプログラムの中で唯一刑事事件を取り扱うものを発見しました。それが,NICDのウィンターインターンプログラムでした。私は,「他の事務所の説明会やプログラムに参加できなくても構わないが,NICDのプログラムには絶対参加したい」との強い希望のもと,このたびのプログラムに参加させていただきました。
集合研修と忘年会
今年のウィンターインターンプログラムは,参加者各々に日程が組まれており,各参加者が濃密な業務体験をできる一方,プログラム自体で他の参加者の方とご一緒することはできませんでした。もっとも,プログラムの前には集合研修(今年初めて開催したとお聞きしています)があり,他の参加者の方々と顔合わせをする機会が設けられました。この集合研修と後述の忘年会によって,他のプログラム参加者とも親睦を深めることができ,志を同じくする知り合いができたことは良かったと思っています。
集合研修では,「いかにしてHEROに負けない刑事弁護士をつくるか(捜査弁護編)」をテーマとして,中村先生から90分にわたり,捜査機関の活動を予測しながら捜査弁護活動を行うことの重要性を教えていただきました。中村先生のお話には元検事だからこそのノウハウが豊富に詰まっており,普段の机上の学習では学ぶことのできない多くの事柄を学ぶことができ,とても印象に残っています。
また,NICDの忘年会にもご招待いただき,プログラム参加者も全員参加させていただきました。忘年会では,弁護士の先生方をはじめ,書生(アルバイト)さんや来年入所予定の先生方ともお話することができ,とても有意義な時間を過ごすことができました。
プログラム1日目
1日目はまず,先生ご担当の事件の裁判傍聴に行きました。当該事件は即日結審だったので,刑事裁判手続の一通りの流れをこの目で確かめることができました。順調に被告人質問まで進み,検察官の反対尋問が始まりました。その直後,先生は検察官の反対尋問に異議を唱え,検察官の尋問方法や供述調書の引用について鋭く糾弾したのです。私は,刑事弁護人がこんなにも能動的に異議を唱える姿をかつて見たことがなく,その姿からは「裁判の公正を絶対に維持する」という気概を感じました。その後,最終弁論を迎えました。最終弁論は弁護人が弁護人席で起立して行うのが普通ですが,先生は,証言台の前で最終弁論を開始したのです。しかも,先生はペーパーを見ることなく,自分の言葉で裁判官に語るのです。先生の発する一つ一つの言葉が重みを持ち,裁判官のマインドに訴えかける,そのような弁論でした。どこか悔しそうな眼差しで先生を見つめる検察官の姿を今でも鮮明に覚えています。私は,このような先生の法廷技術に圧倒されるとともに,魅了されました。
午後は,中村先生からのアサインで,中高生に対する「自画撮り」要求の規制についてのHP記事の起案を行いました。ロースクールでわいせつ事案を取り扱うことは少ないため,手探りではありましたが,現行の刑法や児童ポルノ法などの関係諸規定を調べつつ,何とか完成させることができました。そのほか,午後には事件記録の閲読などもさせていただきました。
その後は,新件事件の相談に同席させていただきました。先生からは,「自分が弁護士だとしたらどのようなことを聞くか考えてから同席するように。」と言われ,この点についてイメージを持ちながら臨むことができました。先生は,時系列を追ってクライアントから事情を聴取し,また,特に争点となる部分については念入りに事情聴取を行っていました。相談が終了した後は,先生にその相談に係るあらゆる質問をし,それに対して丁寧にお答えいただきました。
こうして,プログラム1日目は終了いたしました。
プログラム2日目
2日目はまず,先生からのアサインで,東京弁護士会・第二東京弁護士会合同図書館にてリサーチを行いました。このリサーチは,法律に関わるものではなく,ある精神疾患についての資料をできるだけ多く収集することが任務とされました。弁護士は,自己の専門分野のみならず,場合によっては自己の全く専門外の分野についてもリサーチしなければならないことを改めて理解し,また,その難しさを知ることもできました。
午後は,故意の存否が争点となる事案について,その事件記録を検討しました。弁護側に有利な事情および不利な事情をピックアップし,先生に報告いたしました。その報告では先生のご意見も頂戴し,私の思い至らぬ点が多いことにも気付かされました。
その後,中村先生と柏本先生ご担当の新件事件の相談に同席させていただきました。中村先生は元検事のバックグラウンドを生かし,率直かつ的確な弁護方針を述べられたのが印象的でした。また,柏本先生は,クライアントに親身になって寄り添い,少しでも不安を取り除こうと,丁寧にご説明なさっていたのが印象的でした。この2日間で2件の事件相談に同席させていただきましたが,先生によってその特色が微妙に異なり,それがまた興味深いと感じました。
以上で2日間のプログラム全日程が終了しましたが,私は,プログラム終了日の次の日に,また先生の裁判の予定があるとお聞きし,先生の快諾を得てその傍聴をさせていただきました(参加者の希望に柔軟に対応していただけるのも,NICDウィンターインターンプログラムの魅力の一つです)。先生は,その裁判でも持ち前の法廷技術を駆使して裁判官に弁護側の主張の正当性を力説し,裁判官もそれを聞き入っていたのが印象的でした。
さいごに
NICDのウィンターインターンプログラムは,2日間と一見して短いようにも思われますが,実際には濃密な時間を過ごさせていただきました。前述した各アサインから学ぶことも多かったのですが,アサイン以外でもアソシエイトの先生方の事務所における様子を拝見し,関係各所との緊密な連絡やスピード感のある対応の重要性,それらを可能にする事務員との連携など,NICDにおける多くのポリシーも学ぶことができました。
とりわけ,私にとっての大きな収穫は,刑事弁護という仕事の職責の重さを実感することができた点です。私は今まで,単に「刑事法分野がおもしろくて好きだから」という理由だけで刑事法ローヤーを志してきました。しかし,それだけで刑事弁護士を目指すのはとてもおそろしいことだと実感しました。刑事法廷のピンと張り詰めた雰囲気が示す刑事手続の厳格さ,クライアントの人生をも左右する責任の重さ,自己の思うような結果が出なかった時の罪悪感…,その責任の重さを負ってでもなお刑事弁護人たらんとする決意と技術が必要不可欠であり,生半可な気持ちで足を踏み入れるのは大変危険だと痛感いたしました。しかしながら,決して私は刑事弁護に対して悲観的になったわけではありません。なぜならば,その職責の重さをも凌駕する刑事弁護の大きなやりがいも見出すことができたからです。私はこの2日間,NICDの先生の相談を受けて安堵して帰っていくクライアントの姿を目にしました。人生を左右することだからこそ,良い結果がクライアントの表情や言葉に直接反映され,ダイレクトにやりがいを感じることができると思いました。このように,刑事弁護人の重い職責と大きなやりがいは表裏一体の関係にあり,自分のキャリアデザインを真剣に考えなくてはならないと感じました。このたびのNICDのウィンターインターンプログラムを経験しなければ得られなかった貴重な感情で,自己の進路を前向きにかつ真剣に考える良い契機になったと確信しています。
また,NICDのアットホームな雰囲気も大好きで,魅力を感じているところです。中村先生をはじめとするパートナーの先生方,親しく接していただいたアソシエイトの先生方,事務員・書生の皆様,本当にお世話になりました。サマーアソシエイトにも是非応募したいと考えておりますので,またお世話になる際にはどうぞよろしくお願いいたします。
2日間本当にありがとうございました。