紀尾井塾 参加者感想文(2019年)
弊所では将来法曹を目指すアルバイト(書生)を対象とした代表弁護士による紀尾井塾(刑法学講座)を定期的に開催しております。その参加者の感想文をご紹介いたします。
参加者Sさんの感想
NICDで中村先生が講師を務めて下さる勉強会は、中村先生がその都度作って下さる丁寧で分かりやすいレジュメを教材として使用し、講義が行われます。講義内では重要な部分においては中村先生からの参加者への質問がされたり、各参加者同士での意見交換が行われたりするなど、非常に活発な空間となっています。そして、その参加者の一人である私は本勉強会について以下の点において特に意味のあるものだと感じました。
勉強会は毎回、その日のために中村先生が作って下さるレジュメを中心に行われます。このレジュメには必要最小限のことのみが記載されているにとどまるため、余計な混乱が無く、一見して内容の分かるものとなっています。
また、レジュメの内容自体も平易な記述によって為されているため、初めて刑法を勉強する人であっても困惑することは少ないように思われます。
そして、そのような精度の高いレジュメをもとに行われる中村先生の解説も非常に分かりやすく、教科書・レジュメの文面のみではなかなか理解が困難な箇所であっても、問題なく学習を進めることが可能となっています。
本勉強会内では規範や法制度について、一般的な教室例をもとに検討し、受講者全員の基本的な理解を培ったうえで、種々の応用的な事案を想定し、学習した規範の適用の可否等を検討していくことが多々あります。
中村先生からの質問提起により、次々と新たな事例を短時間のうちに検討していくことになりますが、「他の受講者の見解を聞き、自身の見解を述べたうえで、中村先生の解説を伺う」というプロセスを経ることで効率的に応用力を養うことが可能となります。
この際、当然よく分からなかった部分が出てきますが、講義後に基本的な事項を踏まえた上で時間をかけてと復習することで、自分の弱点の早期発見・克服に繋がります。
このような、応用力を効果的に短時間で養うことのできる講義は、実務の最前線で戦っていらっしゃる中村先生だからこそできるものだと思います。
もっとも、この応用的な部分に積極的に参加し効果を上げるためには、講義レジュメだけではなく、事前に教科書などで理論面を予習していた方が良いと思います。
本勉強会の参加者は基本的にNICDでアルバイトをしている同僚であるため、勉強会は、緊張感がありつつもリラックスした雰囲気もある、適度な空気感のなかで行われますので、非常に参加しやすいです。
質問や意見もしやすく、遠慮なく、分からないことを聞くことが出来ます。
私自身、刑法の勉強は一通りしていましたが、論点主義に陥りがちで、木を見て森を見ずの状態となり、刑法理論全体の俯瞰が全くできておりませんでした。
しかし、以上で述べて来た3点の特徴を持つ中村先生の勉強会に参加したことで点と点が結びつき、少しは森を見ることができるようになったのでは、と感じています。
参加者Kさんの感想
個人的な都合により、まだ一回しか参加できておりませんが、その一回だけでも出ることが出来て良かったと思います。理由は、3点あります。
まず、刑法の基本的な知識を確認できたところです。一通り刑法の学習はしておりましたが、理解が浅かった部分など、先生が作成されたレジュメをもとに丁寧説明してくださったことで改めて把握することができました。
次に、少人数であるところです。少人数であることで、双方向の授業になり、理解を深めることができました。まわりにいるのも同じアルバイトの仲間であり、変に構えることなく授業を受けることができ、より集中できました。
最後に、実務家としての考えも聞くことができるところです。検事としてはこうだよね、弁護士としてはこう主張するよねといった考え方は、学校でも、自主学習でも得ることができない視点であり、こうした視点を知ることで、一層事案について具体的に考えることができるようになったと感じました。
以上の点から、私はこの勉強会に参加することによって、自分のスキルアップにつなげることができると考えており、今後も参加していきたいと考えております。
中村先生、お忙しいところ、このような機会をいただきありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
参加者Hさんの感想
講義についていけるか不安でしたが、先生がレベルを問わず刑法を学ぶ書生にオープンにゼミを行うと伺ったので、ゼミに参加することを決めました。先生のゼミを受けている今では、刑事専門の弁護士として第一線でご活躍なさっている先生の多角的で専門性溢れるゼミを受講出来る機会に恵まれたことを大変有り難く感じております。先生のゼミは受動的な講義とは異なり、刑法への取っ掛かりを掴み、学生の理解をより深める内容なので、伝えたいゼミの魅力はたくさんありますが、ここでは2点に絞って特筆すべき魅力を記させていただきます。
・毎回のゼミのために作成して下さるレジュメは定評ある予備校本に匹敵する大変分かりやすいものです。学部の授業で配られるレジュメには、基本書をコピーしたようにモノクロで単調な文章が羅列してあり、押さえるべきポイントが明確ではないものもあります。配られたレジュメに目を通していると、講義がどんどん進み、説明を聞き逃してしまうことも多々あると思います。しかし、先生のレジュメは講義の中で押さえるべきポイントが一目で分かるようにまとまっており、難しい文章ではなくカラフルな図式で説明がなされているので、説明を聞き逃すようなことはなく、後日復習をする際にも大変有用性が高いと実感しております。
・ゼミでは、基本的事項を概観し、その後様々な応用事例についての検討を行います。先生は法哲学についての造詣も深く、どのような思想に基づいて発展した考えなのかを理論的に説明して下さるので、学部の授業では扱うことのない多角的な視点から刑法を概観することができ、理解を深めることができます。また、ゼミでは、先生が検事時代に担当した事案や刑事弁護士として受任した事案を検討事例として扱います。学部授業では試験等で頻出の類似事例を検討することが多く、似たり寄ったりの検討に陥りがちだと思います。しかし、机上の議論を超えた生の事例に触れることで、勉強する中で培っている知識や考え方をどのように実務で活用するのかを知ることができるので、勉強に対するモチベーションを高めることができます。
また、ゼミの内容とは異なりますが、大学や学年が異なる司法試験合格を目指す学生がアルバイトとして勤務しているので、より勉強の進んだ人の考えを知ることができるのは私にとって大変貴重な機会だと思っております。普段は中村先生と直接お話しをする機会はあまりありませんが、ゼミを通して、先生の精通した知識やフランクな一面を知ることができ大変嬉しく思っております。
以上で述べたように、素晴らしいゼミを受講する機会を与えてくださったことに感謝しておりますとともに、今後も先生のゼミを受けられることを楽しみにしております。
参加者Aさんの感想
中村先生のゼミは、初めに短文の事例形式で各分野のポイントに絞って説明がされるため、「座学感」がなく、毎回時間が短く感じます。普段の自主学習では、とりわけ活字を読むことが多く、イメージがわかず頭に入ってこない等、記憶に定着しにくいこともあると思います。
しかし、中村先生の作成するレジュメは、図を上手く導入して頭に残りやすい工夫がされており、初学者には大変分かりやすく、勉強は進んでいるが、刑法に苦手意識がある受験生には非常にありがたい授業であると思います。
実際、私は、刑法を初めて勉強してからそれなりに時間が経っていますが、中村先生のゼミは、整理されており記憶に残りやすいと感じております。
また、当ゼミでは、教科書に記載されている比較的簡易な事例だけでなく、検事・弁護士として数多くの経験から培った「生の事例」を題材にその場で犯罪の成否等の一定の結論を出すという思考をする時間も設けられており、受験生として必要不可欠なリーガルマインドを鍛錬することができます。
普段学習する事例では、ある程度結論が決まっているが、中村先生の「生の事例」では、頭を悩ますことが殆どである。現役の法曹が扱う事例は、そのような頭を悩ますものが中心であり、「犯罪が成立する、成立しない」などどちらにも結論が転びうる事例ばかりであるため、受験生がそのような「頭を悩ます事例」にあたることは、このような機会が少ない受験生に比べて、非常にアドバンテージであると感じます。
参加者Oさんの感想
中村先生主催の刑法勉強会を通し、私たち書生は先生が独自に作成されたレジュメを使って刑法の基本的な枠組みや重要判例を学び、法律家になるために必要な土台となる知識を習得するにとどまらず、将来実務にでることを見据えた、いわば法律家たる者の在り方についても学ぶ機会をいただいております。
NICDの書生は、相談者からの電話対応を任せられているため、常日頃より弁護士の先生方からの刺激を受けながら業務に励んでいるのですが、講義では中村先生が弁護士としてご担当された事件に加え、検事だった頃に取り扱われた事件についても折に触れて詳しくお話しをしてくださります。中村先生のご経験も交えられて、より実務の現場を間近に感じることができ、学校では深入りせずに通りすぎてしまうようなことについてもご教授いただけるので、刑法を学ぶ上での根幹について知ることができます。そのため、毎回の講義内容が非常に濃いものとなり、学ぶのが非常に楽しいです。
また、講義形式といっても先生が適宜質問を投げかけてくださるので、私自身、頭が整理され、より理解が深まると同時に、他の書生の様々な意見に耳を傾け、視野を広げられるのも良い機会であり貴重な時間です。
基本書や判例を読んでいるだけでは身につかない、真の法律家の仕事を実感でき今後の勉学にも役立て、励みとなるのが本ゼミの魅力であり、書生としてこのような他ではできない経験をさせていただけていることに心から感謝しております。
『経学無憂』。将来について思い悩むのは勉強が足りていないからで、学問をし続けていればそのような憂いは無くなる。第一回目の勉強会で中村先生がおっしゃっていた私の中で印象に残っているお言葉です。このお言葉を聞いて自分がまだまだ勉強が足りていないことを反省し、学び続けることの大切さを感じました。今後も本ゼミを通して、必要な法律の知識を積み上げていくことはもちろん、自ら進んで様々なことに目を向けて引き出しを増やし、より一層、勉学に励んでまいります。
参加者Hさんの感想
ゼミ開講のお知らせをいただいた当初は「司法試験受験に特化した内容なのでは」と不安に思い参加に及び腰でしたが、中村先生が寛容なスタンスで門戸を開けてくださっていたこともあり、「刑法の基礎的な知識を復習できれば」と気軽な動機で参加させていただきました。
講義内容については一般的なテキストの流れに沿って刑法総論の内容から始めてくださいましたが、「罪刑法定主義」等の基礎理論については先生の法哲学的造詣の深さを窺える充実のご講義でした。
以降の各トピックに関しても、実務経験を踏まえた示唆を交えつつ解説してくださることに加え、先生が過去に担当された事件を具体例として提示していただけることもあり、これは知識の有機的定着にかなり有益なのではないかと感じています。ゼミの雰囲気はフランクで双方向的なものになるよう先生がご配慮くださり、楽しく学ぶことができています。
現役のパートナー弁護士にして元特捜検事の先生から講義を少人数のクラスで、しかも無料で受けられるチャンスはまずないと言え、書生としてこうした機会に与れることは大変恵まれているとつくづく思っています。
また、私は既卒者の身分であることから、このような少人数のゼミ形式の授業空間は普通では得難く、この点からも中村先生がご多忙の中お時間を割いてくださっていることを深く感謝しています。
以上のような幸運を噛み締めつつ、同時に励みとして引き続き学業と勤に尽くし、延いては先生にいくらかでもご恩がお返しできるよう切磋琢磨していきたく思います。
参加者Kさんの感想
毎週土曜日に、お忙しい中、刑法学者顔負けのレジュメを用いて中村先生がご教授くださる、刑事法講座について、参加者の一感想をここに記させていただきます。中村先生が開催してくださっている刑事法講座(以下、本ゼミ)の特徴は数多くありますが、ここではとりわけ大きな3点を記します。
まず、一点目として、「科目」としての刑法にとどまらず、学術的なゼミであることです。本ゼミの参加者は主として司法試験等各種国家試験を目指す者であるため、試験向けのゼミを想像される方もいらっしゃるかもしれません。しかしながら、本ゼミは「科目」として論文ではこのように書けばよい、といったゼミではなく、学説の整理から始まり、時には刑法を超え法哲学の分野にまで視野を広げたゼミとなっています。たしかに受験生である以上、「科目」としての刑法も大切でしょう。しかし、実務に出た際、自己に有利なように、かつ無理筋ではなく合理的な立論をするにあたって、「科目」としての刑法では限界が生じてくると思われます。そのため、中村先生の学者顔負けのレジュメを用いた、学術的なゼミから、試験に合格した先を見つめた、活躍できる法律家になれ、という中村先生からの熱いメッセージが感じられ、非常にありがたいです。
二点目としては、実際にご担当された事案を考察する点です。日頃の演習ですと、判例に似たり寄ったりな事案を分析すると思われます。しかし、本ゼミでは、中村先生が検察官時代にご担当された事案や、刑事弁護士としてご担当された事案を多く分析します。たしかに、判例に似たり寄ったりな事案の分析においても判例の射程が及ぶかについて考察はします。しかし、本ゼミの場合、実際の事案を分析しますので、判例の射程が及ぶか、本事案にかかる理論は妥当しうるのか、をよりリアルに体感することができます。これは検察官として、現在は刑事弁護士として常に第一線を走られる中村先生だからこそなせるゼミであり、座っているだけの勉強にとどまらない、実務を体感することができます。また、中村先生が捜査検事としてご担当された事案(百選掲載の重要判例の1つ)で、どのように捜査したか、どのように証拠を収集したかなどをお聞かせくださり、実務へのモチベーションが非常に高まります。
三点目としては、他大学や大学院生と意見交換をできる点です。普段の学習では自分の所属する大学の友人ら教え合ったりしますが、本ゼミでは他大学や大学院の学生とも交流することができ、よい緊張感を得ることができます。これも中村国際刑事法律事務所だからなせることだと思います。
以上、本ゼミの一参加者としての率直な感想を3点に絞って記してきました。本ゼミは上記でお仕えした通り、学術的かつ実務をも視野に入れた、非常に勉強になるゼミです。しかし一方で各種試験も学術的であること、実務さながらの事案分析を受験生に求めてきているのではないでしょうか。例えば、某司法試験の刑法論文試験では、平成30年度から2年続けて学説への理解を問うものでした。事案分析についても、以前から試験委員から警鐘を鳴らされてきています。このような普段の学習ではなかなか身につけにくい能力を本ゼミでは学ぶことができます。
このような学びの場を設けてくださる中村先生に感謝し、向後もご教授いただきたいと思います。