否認していると保釈は認められないのでしょうか。
保釈には,一定の事由に当たらない限り保釈が認められる権利保釈(刑事訴訟法89条)と,権利保釈は認められないものの保釈が相当であると裁判所が判断した場合に認められる裁量保釈(同法90条)があります。
一般に,否認事件では,自白事件と比べて保釈のハードルは上がると言われています。「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」(同法89条4号)又は「被告人が被害者…の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき」(同条5号)には権利保釈は認められず,被告人が否認しているため,一般に,被告人に有利となるように証拠を隠滅し,そうでなくとも関係者に害を加えたり威迫したりするおそれがあると考えられてしまうからです。
しかし,否認事件でも,証拠がすべて捜査機関に押収されているなど物理的に罪証隠滅の可能性がないとして権利保釈が認められるケースもありますし,権利保釈の要件は認められなくとも,具体的な罪証隠滅のおそれが少ないことや,場合によっては例えば持病の悪化,事業への停滞等,被告人の社会的経済的不利益が重大であることも総合的に考慮されて,裁量保釈が認められるケースもあります。