少年が事件を起こした時には,名前や顔などが報道されるのでしょうか。
少年法においては,61条に以下のような規定があります。
「家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については,氏名,年齢,職業,住居,容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。」
このように,少年事件においては少年本人を特定できる推知報道は禁止されています。なぜこのような規定が置かれているかというと,少年には,憲法や子どもの権利条約で,成長発達権やプライバシー権が保障されているため,少年の成長発達を阻害するおそれのある推知報道を排除しなければならないからです。
しかし,この点については,少年を保護しすぎであるとの批判や国民の知る権利を害しているとの批判もあります。
ただ,知る権利についても一定の制約はありますし,少年のプライバシー等の人権も重要な人権であることに間違いはありません。大人が身体拘束された後に,報道機関がその名前や顔写真を報道することを直接禁じる規定がない中,それにもかかわらず,少年法61条で推知報道が禁じられている意味は非常に大きいものといえます。そう考えると,少年を特定する報道を禁じた少年法61条は,少年の成長発達権やプライバシー権と国民の知る権利とを調整するものであり,少年の重要な人権との調整のための,「知る権利」の内在的制約だと考えられるのです。