相手の人が性交に応じてくれていると思って性行為をした場合,強制性交等罪が成立しますか。
刑法第177条は,13歳以上の者に対し,暴行又は脅迫を用いて性交,肛門性交又は口腔性交をした場合に,強制性交等罪が成立すると定めています。
また,同罪の成立には,被害者の同意がないことが必要とされています。
更に,犯罪の成立には故意が必要です(刑法第38条1項本文)。そのため,強制性交等罪が成立するためには,その者が,被害者の同意がないことを認識・認容したうえで,暴行又は脅迫を用いて性交等に及んだといえる必要があります。
ここでいう被害者の同意がないことの認識・認容とは,「未必の故意」を含むことに注意が必要です。「未必の故意」とは,犯罪事実の発生が不確実であると思いつつも,これを認容している心理状態をいいます(例:相手が死ぬかどうか分からないが,死んでも構わないと思いながら包丁を刺す場合など)。
したがって,相手の女性が性交に応じてくれているかもしれないし,応じてくれていないかもしれないという認識の場合には,被害者の同意がないことの未必の故意が認められ,強制性交等罪が成立する可能性がありますし,様々な事情から,被害者の同意があったとの弁解自体が不合理として排斥される可能性もあります。