サマーアソシエイト 参加者感想文 S.Tさん(2014年)(千葉ロー卒)
私は,2014年度第1セッションのサマーアソシエイト(SA)3人のうちの1人として,2週間NICDにおいて執務を体験させていただきました。インターネットの募集事項をみると,執務時間は17:30までとの記載があったので,結構早い時間に帰れるのだな,と甘い気持ちで事務所に臨んだのですが,その期待はよい意味で裏切られました。中村先生は,サマーアソシエイトも事務所の「戦力」として扱ってくださったからです。私たち3人のサマーアソシエイトは,現に進行中の事件についての,勾留回避請求書,不起訴意見書,弁論,控訴趣意書の起案や,それらのもととなる基礎的なリサーチまで,幅広いアサインメントを課され,時には夜遅くまで事務所で課題をこなしました。現に進行中の事件に関するものというだけあって,非常にやりがいがありましたが,同時に,(中村先生の最終的なチェックがあるとはいえ)責任の重さも実感いたしました。修習生でもないのに現に進行中の刑事事件に直接かかわることができるというのは,この事務所だけの経験ではないでしょうか。
2週間のSAとしての経験の中で特に印象に残っているのは,私が起案した勾留回避意見書が,結果として被疑者の方の勾留請求の却下につながったことです。私は,当該事件に,最初の相談から関わらせていただいたということもあって,強い思い入れがありましたから,勾留請求却下の連絡が裁判所から来た時の喜びは何にも勝るものがありました。当初は,罪名が比較的重い罪であったこともあり,勾留はやむを得ないのではないかという見当だったのですが,担当の弁護士の先生が初回接見できちんと被疑者の方に誓約書を書かせ,家族からも誓約書を書いてもらうなど精力的な起訴前弁護活動を行ってくださったこともあり,最終的に勾留請求却下という判断を得ることができました。弁護士がきちんとした起訴前弁護活動を行えば,勾留回避は決して困難ではないことを実感いたしました。また,中村先生から全面的に添削していただいたとはいえ,自分の書いた書面が多少なりとも裁判所の判断に影響を与えたというのは素晴らしい経験でした。
そのほかに,事務所では様々な模擬接見や模擬取調べの経験をさせていただいたのも非常に勉強になりました。模擬接見については,私が初回接見に当たる弁護士役,アソシエイトの弁護士の方が被疑者役となって,接見を行ったのですが,相手から質問されると,理解していたはずの基礎的な手続きについての質問にもうまく答えられなかったり,あるいは,証拠隠滅の依頼をうまく断れなかったりと,苦労しました。さらに,日本語での模擬接見だけでなく,ネイティブの先生を被疑者役として英語での模擬接見も行いました。これは,他の事務所では絶対にできない経験だと思います。模擬取調べについては,起訴前で証拠もなく,被疑者からの情報しかない中で,弁護士として被疑者との信頼関係を保ちつつ,被疑者を自白させるというシミュレーションを行いました。これは,私以外のSAが取調官として行ったのですが,20分の制限時間の中で被疑者を自白させることはできませんでした。その後,元警察官の職員の方から,取調べのお手本を見せていただき,取調べとはこうやるのだなということを,身を持って実感いたしました。いずれのシミュレーションにおいても,後でアソシエイトの先生方から熱心な講評をいただけまして,自分の至らない個所を把握することができ,大変勉強になりました。
そのほか,SAとして,リサーチ業務もたくさんアサインしていただきました。刑事弁護専門の事務所でリサーチというと意外に思われる方もいるかもしれませんが,控訴理由を考える上で裁判所の訴訟指揮の適法性を検討する必要が生じることもありますし,ホワイトカラー犯罪においては金融商品取引法等についての専門的な知識も要求され,リサーチは欠かすことができません。NICDでは,リサーチの基本的な作法まで教えていただけますので,いわゆる企業法務系の事務所のサマークラークに近い経験をすることもできます。
以上のように,NICDのSAとして,相談への立会,書面の起案,接見・取調べのシミュレーション,リサーチを経験させていただいたほか,公判手続も傍聴させていただくなど,刑事手続の全般にわたって,非常に幅広い経験をさせていただき,きわめて中身の濃い2週間を過ごさせていただきました。このような経験ができるのはNICD以外にないと思いますので,刑事弁護に興味のある方は,是非ともサマーアソシエイトに応募してみるとよいのではないかと思います。