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サマーアソシエイト参加者感想文(模擬裁判感想文)K.Aさん(2016年)(京大ロー在学)

サマーアソシエイト 参加者感想文(模擬裁判感想文) K.Aさん(2016年)(京大ロー在学)

全体を通しての感想

私は、NICD合宿に参加し、模擬裁判に参加させていただくまでは模擬裁判をしたことがなかったので、前日にいきなり調書をいくつか渡され証人として明日証言してくださいと言われたときはかなり驚きました。
調書を読んだだけで、事件の概要については漠然としか把握しないまま当日を迎えたので、本物の証人のように新鮮な気持ちで模擬法廷を見ることが出来ました。
刑事裁判の手続の流れについては、教科書や紙面上で学んだことがありましたが、実際参加して一連の流れを目の前で見せてもらうことで知識がより定着しました。また、せっかく学習したので、それぞれの手続がどの条文に基づきなされているのかを刑事訴訟法や刑事訴訟規則をめくりながら確認するように意識して見ていました。このように、サマーアソシエイトとして模擬裁判に関わることは大変勉強になりました。ありがとうございます。

模擬裁判の様子について

今回扱った事件においては、被告人に、1建造物に放火する認識があったか、2本件建物の現住性についての認識があったかが問題となっています。
この点、検察官が作成した調書によると、被告人は、店に火を付けるつもりで放火したと明確に認めており、また、本件建物に大家さんが住んでいたことを知っていたと供述しています。
しかし、弁護人はこの調書について任意性を争い、実際、最終的な認定において、裁判所は、放火時点において被告人に建物に対して放火する認識があったとは認めておらず、その後消火活動をしようと戻ってきた際の不作為による犯行を認めています。また、被告人が本件建物の現住性を認識していたとは認めず、成立する罪は非現住建造物放火罪であるとの判断もしています。
供述調書をみると、明らかに被告人が現住建造物放火を故意の作為で行ったという事実が認められそうであるが、全く異なる判断がなされているため、なぜこのようなことが起こるのか疑問です。
そこで、弁護人の「乙号証の任意性に関する意見書」を見ると、被告人の検察官調書は、取調べ検察官による、虚偽供述を誘発するような露骨な誘導・誤導によって作成されたもので、任意性を欠くということが指摘されています。
確かに、法律や尋問についての素人であることが多い被疑者は、弁護人のいない取調室において検察官からの尋問テクニックに引っかかってしまうことがあると思われます。事件記録を読むのみでは、具体的に尋問がどのようになされているのかが分からなかったので、尋問自体の様子を見るため、録音録画されているものも見てみたいです。
また、録音録画がなされていることから後から検証することができるようになったので問題とはならないかもしれませんが、供述調書の信用性は必ずしも高くなく、供述調書を証拠として使うこと自体を問題視する人も出てきそうだと感じました。
次に、証人や被告人の尋問について。弁護人・検察官のそれぞれが尋問する際にそれが主尋問であるのに誘導尋問となっているときや、供述者の記憶・認識に不当な影響を与えそうなものである際には、相手方が異議を申し立てることができます。このことも、教科書において、知識としては知っていました。しかし、実際には、相手が質問をし終わった後であると既に供述者に不当な影響があることも多く、相手が質問をし終わる前に異議を申し立てる必要がある場面もあるため、かなりの瞬発力が必要なのだと感じました。このように言うのは簡単なのですが、実際行動するのは困難であり、場数を踏まないとできないことなのだろうと思います。
関連して、刑訴法規則205条の3によると、裁判官は、遅滞なく決定をしなければなりません。しかし、異議に理由があるのかどうか明らかでなく、すぐには判断することが出来ない場合もありそうであるが、遅滞なく決定しなければならないのは難しいと思いました。これも場数を踏む必要のあることなのだろうなと思います。

裁判員の評議に参加して

1で記載したように、私は、証人の役で模擬裁判に参加しましたが、証人尋問は一日目で終了してしまったので、中村先生が裁判員の評議に参加してみてはどうかと指示してくださったので、評議に参加することが出来ました。
そこで、私は、同じ弁論の様子を同じように見ていたはずなのに、様々な部分で全く異なる印象を抱いている人がいたので、大変驚きました。
模擬裁判には何人かの証人と被告人が登場し、供述していました。そして、それぞれの供述のどれもがある程度の合理性を有しており、かつ異なることを言っていることがありました。事実認定の際には、供述者の供述の内容的合理性・供述時の態度等を総合考慮してその供述の信用性を判断するべきであるということは理屈の上では理解できます。しかし、実際に裁判員の協議に参加すると、これがいかに困難な作業かを痛感しました。
また、評議の中で最初は一定の結論に向かって皆の議論が進んでいたのに、最後の最後、一人の人が一つの観点を入れただけで、最終的に当初とは全く別の結論に落ち着いたという論点がありました。一つ発想が加わるだけでその場の皆の意見を変えることが出来るのは興味深いと思いましたが、それと同時に、ちょっとしたことで結論がすぐに変わってしまったので、集団での議論によって本当に妥当な結論を導くことが出来ているのか疑問に思うところもありました。

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