サマーアソシエイト 参加者感想文 E.A.さん(2025年)(東大ロー在籍)
はじめに
今回、私は中村国際刑事法律事務所のサマーアソシエイトに一週間参加させていただきました。
応募の理由は、事務所が掲げている「慈悲と人情に満ちた刑事弁護」という理念に強く共感したからです。
単に法的な技術を駆使するだけではなく、依頼者の不安や苦しみに寄り添い、その人の再出発を支える姿勢を貫いておられる点に深く惹かれました。
大学や法科大学院で学んだ知識だけでは分からない「刑事弁護士として生きること」を学べるのではないかと考え、このプログラムに参加することを決意しました。
サマーアソシエイトを通して得られた学び
一週間という他の事務所と比較して長期間にわたるサマーアソシエイトでは、接見、公判傍聴、各種書面の起案、実況見分、先生方による講義や座談会など、多岐にわたる機会をいただきました。
大学や法科大学院で扱う模擬裁判やゼミの演習は知識を前提にした訓練でしたが、サマーアソシエイトでの活動では、学んだ知識を実際の案件にどう活かすかを常に考えさせられ、その過程で法律の理解が立体的に深まりました。
特に印象に残っているのは、事件記録をもとに起案や検討を行った経験です。
現実の事件では細かな事実関係の一つ一つに大きな意味があり、その積み重ねが方針や結論に直結していくのを実感しました。
起案後には先生方から具体的かつ丁寧なフィードバックをいただき、どのように事実を整理し、法的主張へと結び付けていくのかを学べたのは大きな財産となりました。
また、実際に現場を訪れる実況見分も強く印象に残っています。
地図や写真だけでは分からない人の流れや視界、当日の雰囲気を体感することで、記録を読み込むだけでは得られない具体的なイメージを持つことができました。
事件の「顔」を掴むことの重要性を理解すると同時に、現場でしか得られない情報を証拠にどう結びつけていくのかを考える契機になりました。
書面の起案については、準抗告申立書や証拠開示請求、弁論要旨の作成など、どれも一筋縄ではいきませんでした。
雛形や過去の例を意識しすぎると、事件固有の特徴が失われてしまい、説得力に欠けることを痛感しました。
中村先生から「事件の顔を意識する」というご指摘をいただき、記録に正面から向き合い、そこでしか出てこない事実を拾い上げていくことの大切さを学びました。
実際の講評では、自分では見落としていた点を鋭く指摘していただき、課題が明確になると同時に次に取り組むべき方向性も示していただけたことは大きな財産となりました。
サマーアソシエイトを通して、法廷での活動にも数多く触れることができました。
証人尋問や被告人質問の練習では、ただ質問を重ねるだけでは真実に迫ることはできないことを痛感しました。
オープンクエスチョンばかりになってしまった自分の尋問を振り返り、証人や被告人から引き出したい事実を明確にし、そのための問いを設計する重要性を学びました。
先生が実際に行われた尋問は、短い質問の中に説得力が凝縮されており、聞き手が自然と事実を信じざるを得なくなる構成であり、法廷技術の奥深さを目の当たりにしました。
サマーアソシエイトに参加してみて、事務所全体の雰囲気もとても印象的でした。
先生方は多忙の中でも私たちの質問に丁寧に答えてくださり、安心して活動に集中できる環境が整っていました。
また、他の参加者の方のレベルも高く、お互いの考えを交換する中で多くの刺激を受けました。
刑事弁護を志す仲間と切磋琢磨できたことも、このサマーアソシエイトの大きな魅力でした。
さらに、現在事務所で活躍されている先生方の中にも、かつて同じプログラムを経験された方がいらっしゃることを知り、伝統ある研修を受けられたことへの感慨も覚えました。
おわりに
この一週間で得られた経験は、今後の学びや進路を考える上で大きな指針になると感じています。
今回のサマーアソシエイトを通じて、刑事弁護が依頼者の人生に深く関わる責任ある仕事であることを改めて実感しました。
そして、法廷での技術や戦略だけでなく、依頼者に寄り添う姿勢がいかに大切かを学ぶことができました。
この事務所でなら自分も成長できると感じ、将来本当に刑事弁護に携わっていきたいと強く思うようになりました。
最後になりますが、今回のサマーアソシエイトを通じて、実務の最前線を惜しみなく体験させてくださった中村先生・小島先生をはじめ、先生方、スタッフの皆様に心より御礼申し上げます。
この貴重な経験を次につなげ、将来、同じように誰かの支えとなれる弁護士へ成長していきたいと思います。