準強制わいせつとは|強制わいせつとの違いや逮捕された場合を弁護士が解説|刑事事件に強い元検事弁護士が強力対応

準強制わいせつとは|強制わいせつとの違いや逮捕された場合を弁護士が解説

刑事弁護コラム 準強制わいせつとは|強制わいせつとの違いや逮捕された場合を弁護士が解説

準強制わいせつとは|強制わいせつとの違いや逮捕された場合を弁護士が解説

 皆さんは「準強制わいせつ罪」についてニュースなどで聞かれたことはありますか。準強制わいせつ罪は「強制わいせつ罪」とは別の犯罪ですが,その違いはあまり知られていないのではないかと思われます。
 今回は準強制わいせつ罪の成立要件,準強制わいせつ罪に当たる具体的行為,準強制わいせつ罪に対する刑罰,準強制わいせつ罪の容疑で逮捕された場合の対処法について,詳しく解説いたします。

準強制わいせつの成立要件

 まずは,刑法の条文から確認いたします。

第178条(準強制わいせつ)

 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。

 これだけでは「176条の例による」という条文の文言が明らかでないので,刑法176条も併せてご覧いただきます。

第176条(強制わいせつ)

 一三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。一三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

 条文が複雑なので,順を追って説明します。まずは,刑法178条の語句の意味から確認してまいります。

「心神喪失」の意義

 心神喪失とは,精神又は意識の障害によって,性的行為につき正常な判断ができない状態を指します。具体的には,失神している人や酩酊している人,睡眠中の人,高度の精神病を患っている人などを指します。

「抗拒不能」の意義

 抗拒不能とは,心神喪失以外の理由で物理的,心理的に抵抗できないか,または抵抗することが著しく困難な状態にあることを言います。
 具体的には,患者が医師を信頼していたため,医師のわいせつな行為を治療に必要な行為と誤信してしまった場合,女子高生が自校の英語教師から紹介された英語の先生を信頼していたため,心理的に抵抗することが著しく困難であった場合などがあります。

「わいせつな行為」の意義

 わいせつな行為とは,いたずらに性欲を興奮又は刺激させ,かつ,普通人の正常な性的羞恥心を害し,善良な性的道義観念に反する行為を指します。後ほど具体例を挙げながら詳しく解説いたします。

 次に,条文の大枠について説明します。準強制わいせつ罪が成立するには,2つの場合があることになります。
 準強制わいせつ罪は,人が心神喪失状態であるのをいいことにそれを利用してわいせつ行為に及んだ場合に,まず成立します。これが,刑法178条1項の「人の心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ」た場合に当たります。
 また,人を心神喪失状態や抗拒不能状態に追い込み,わいせつな行為をした場合にも成立します。これが,178条1項の「心身を喪失させ、もしくは抗拒不能にさせて」わいせつ行為をした場合に当たります。

 ここで,準強制わいせつ罪と強制わいせつ罪の違いについて少し触れます。強制わいせつ罪の条文を見ると,13歳以上の者に対しては暴行脅迫を用いてわいせつをすることが要件となります。
 一方で,準強制わいせつ罪は暴行脅迫を用いることを要件として定めていません。
 このように,両罪は行為態様の点で差異があることになります。

準強制わいせつにあたる行為例

事例1

 まず,就職を希望している女性被害者らを,就職希望先のテレビ局の人事担当職員を装って欺罔してわいせつな行為をしたという,準強制わいせつに当たる具体的行為例を挙げます。
 これは,実際に裁判例で準強制わいせつ罪の成立が認められたケースです。具体的には,以下のような事情を踏まえて犯罪の成立が認められています。

抗拒不能を基礎づける事実

 ・被告人の「君は秘書に向いている」「自分は人事部課長で権限があるから,そういう採用はできる」などの一連の虚偽の言動によって,被害者はいずれもまず被告人が,現に就職を希望している各テレビ局の人事担当者であり,その意向により各テレビ局の職員採用を行うことができる権限を有するものと誤認したこと
 ・被告人による前記のようなわいせつ行為を受忍することによって各テレビ局に職員として採用されることが可能となる,つまりこうした行為を拒絶した場合にはその採用が不可能ないしは困難となるものと誤認したこと
 ・本件の各犯行場所はまんが喫茶やカラオケ店の犯行の各個室であり前者はカーテンないしパーテーションによって区画された空間であって,外部と完全に遮断された区画とは言えないけれども,一応内部にいる者同士の間のみで会話等のやりとりがなされる区画であり,後者はドアと壁によって,外部とは遮断された機密性のある区画と評価できることに照らせば,このような区画内で被告人から本件のような経過でわいせつ行為に及ぶ旨の言辞を申し向けられた場合,むしろこれを拒絶することの方に心理的な抵抗感をともなうこと

わいせつな行為

 ・「足をもっとよく見せたほうがいいので,ストッキングをはいているよりもはいていないほうがいい」などと被害者に申し向け,被害者自身にストッキングを脱がせたうえで,太ももを触るなどのわいせつ行為をしたこと
 ・「本当にこのテレビ局に入りたいんでしょ,第一志望でしょ」などと被害者に申し向け,キスをするなどのわいせつ行為をしたこと

事例2

 続いて,モデル等の職業紹介を業とするプロダクションの経営者がスカウトした女性に対し,全裸になって写真撮影されることもモデルになるため必要であり,拒否すればモデルとして売り出してもらえなくなる可能性があると誤信させ,全裸にさせて写真撮影した上,わいせつな行為をした事例を例に挙げて説明いたします。
 上記事案についても,裁判例は以下のような事実に着目して準強制わいせつ罪を認めています。

抗拒不能を基礎づける事実

 ・被害者が19歳と比較的若い女性であり社会経験は比較的少なく,芸能プロダクションの社長が37歳であったため,抵抗するのが困難であったこと  
 ・被告人は芸能プロダクションの社長であり,被害者はモデルとして活動することを望んでいたから,被告人が被害者の志望を実現させることができる地位にあったと言え,被害者が要求を拒みにくい状況であったこと

わいせつな行為

 ・被告人が被害者を密室のスタジオの中で全裸になるよう強要し,全裸にさせたこと

事例3

 最後に,英語の個人レッスンを受けるために一人で被告人の家を訪問した女子高生に対しわいせつな行為に及んだ事案を例に挙げます。
 上記事案についても,裁判例は以下のような事実に着目して準強制わいせつ罪を認めています。

抗拒不能を基礎づける事実

 ・当時被害者は女子高生である一方,被告人は相当年配の男性であったこと
 ・被告人は,被害者の高校の英語教師の恩師であって,間違ったことはしない立派な人物であると被害者が信用していたこと
 ・被告人は,被害者に対し,英語上達につながるリラックス方法であるなどと言葉巧みに説き,これを信用させて,強い口調で自分に従えば英語が上達すると信じ込ませたこと
 ・被告人が被害者に対し,仮に被告人の申し出を拒否すれば,英語を教えてもらえず,失礼に当たると思わせ,わいせつ行為に対しての抵抗を心理的に困難にしたこと

わいせつな行為

 ・被告人が被害者に対し,服を手渡し,下着を脱がせてその服に着替えさせたこと

準強制わいせつの刑罰

 次に,準強制わいせつ罪の刑罰について解説します。まずは条文をご覧ください。

第178条(準強制わいせつ)

 人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて、わいせつな行為をした者は、第百七十六条の例による。

第176条(強制わいせつ)

 一三歳以上の男女に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をした者は、6月以上10年以下の懲役に処する。一三歳未満の男女に対し、わいせつな行為をした者も、同様とする。

 このように,準強制わいせつ罪を定める刑法178条1項は「第176条の例による」としており,その176条は強制わいせつ罪を定めています。
 つまり,準強制わいせつ罪と強制わいせつ罪は,刑の重さという観点からは条文上差異はありません。ともに,懲役6か月以上10年以下という刑罰を科すことになります。

準強制わいせつで逮捕された場合どうすべき?

 ご覧のように,準強制わいせつ罪は極めて複雑な概念を条文で定めています。心神喪失や抗拒不能,わいせつといった概念は,一般人の方にはあまりなじみがないものだと思われます。
 仮に逮捕され,準強制わいせつの疑いがかけられてしまった場合,どのように対処すればいいのか判断に迷うかもしれません。被害者が心神喪失・抗拒不能の状態にあったとは言えなかったことや,わいせつと呼べるような行為を行っていないということを証明するのは,困難ではないか,と思われるのではないでしょうか。
 このような場合は,迷わず刑事事件を専門に扱う弁護士に依頼することをお勧めします。仮に逮捕され,身動きが取れない状況に陥ってしまっても,弁護士は被告人や被害者の利益を守るため様々な方法により活動することができます。また,刑事事件を専門に取り扱っている弁護士であれば,準強制わいせつ罪を定める178条1項や,その中で定められた概念である心神喪失,抗拒不能,わいせつといった事柄を熟知しているはずなので,裁判でいかなる争い方をすればよいのか助言を与えてくれるでしょう。
 具体的には,弁護士は身体の拘束を受けている被疑者・被告人と立会人なくして接見し,書類もしくは物の授受をすることができます。(刑事訴訟法39条1項)
 さらに,弁護士は身体拘束たる勾留につき理由を開示するよう請求できます。(刑事訴訟法82条2項,1項)
 また,身体の拘束を解くため保釈の請求をしたり(刑事訴訟法88条1項,89条,91条1項),勾留の取り消しを請求したりすることができます。(刑事訴訟法87条1項)

第39条(接見交通権)

 1. 身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあっては、第31条第2項の許可があった後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。

第82条(勾留理由開示の請求)

 1. 勾留されている被告人は、裁判所に勾留の理由の開示を請求することができる。
 2. 勾留されている被告人の弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹その他利害関係人も、前項の請求をすることができる。

第88条(保釈の請求)

 1. 勾留されている被告人又はその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹は、保釈の請求をすることができる。

第89条(必要的保釈)

 保釈の請求があったときは次の場合を除いては、これを許さなければならない。
 1. 被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
 2. 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
 3. 被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
 4. 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
 5. 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
 6. 被告人の氏名又は住居が分からないとき。

第91条(不当に長い勾留)

 1. 勾留による拘禁が不当に長くなったときは、裁判所は、第88条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。

第87条(勾留の取消)

 1. 勾留の理由又は勾留の必要がなくなったときは、裁判所は、検察官、勾留されている被告人若しくはその弁護人、法定代理人、保佐人、配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消さなければならない。

まとめ

 いかがでしたでしょうか。今回は,準強制わいせつ罪について解説いたしました。ニュースなどで準強制わいせつ罪につき耳にされたことがある方も少なくないと思います。万が一,ご自身が準強制わいせつ罪で逮捕されてしまった場合,刑事弁護を専門に扱う弁護士に依頼し,適切な助言を得ることをおすすめいたします。

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