
「共犯」とは、犯罪行為を共に行う人を指す言葉です。刑法では、複数の人が犯罪行為を行うときに、各自がどのような態様で関わるかによって共犯が分類されています。共犯には大きく分けて3つの分類があります。これらは、広義の共犯と呼ばれます。
共同正犯(きょうどうせいはん)
- 定義: 共同正犯とは、二人以上共同して犯罪を実行する者を言います(刑法第60条)。
- 正犯(せいはん)の実行: 共同正犯は、狭い意味では「共犯」とは呼ばれず、正犯という概念に分類されます。正犯とは、「○○罪」に該当する行為を実際に行う人、と簡単に理解できます。
- 責任の範囲: 共同正犯は、「すべて正犯とする」とされており、互いが行ったすべての行為について責任を負うものとされます。
- 成立要件(共謀共同正犯): 必ずしも全員が犯罪の実行行為そのものを行う必要はなく、犯罪の実行を共謀していれば足ります。
共謀共同正犯とは、複数人が、事件の前または同時に犯罪を行うことを合意して、犯罪の実行に関与した関係のことをいいます(刑法第60条)。例えば、空き巣の見張り役は、住居に侵入せず窃盗行為も自ら行っていませんが、実行行為者と空き巣行為をすることを共謀していた場合、共謀共同正犯として、実際の実行行為者と同様に住居侵入罪と窃盗罪が成立し、処罰されます。
教唆犯(きょうさはん)
- 定義: 人(正犯)に犯罪遂行の意思(故意)を生じさせて、犯罪を実行させることです。
- 行為の具体性: 教唆の手段や方法に制限はありませんが、「何か犯罪をやってこい」というような曖昧なものではなく、「○○を殺して来い」、「銀行に強盗に入れ」といった具体的な指示でなければなりません。
- 成立要件: ①教唆行為、②その教唆行為によって正犯に犯罪遂行意思が生じること、③その意思に基づいて犯罪が実行され、結果が発生すること、の3つが必要です。教唆行為よりも前から正犯に犯罪遂行意思がある場合は、教唆犯ではなく、幇助犯が成立します。
- 刑罰: 教唆犯が成立すると、正犯と同じ刑罰が科されます(刑法61条1項)。
幇助犯(ほうじょはん)
- 定義: 正犯の犯罪行為を容易にするなど、手助けする行為を行った者をいいます。幇助犯は、従犯(じゅうはん)とも呼ばれ、正犯と対比されます。
- 行為の種類: 手助けは、物理的(例: 合鍵を渡すなど)でも精神的でもよいとされています。
- 成立要件: ①幇助行為、②正犯に故意があること、③犯罪が実行され、結果が発生すること、④手助けした行為が実際に犯罪行為の実行に役に立ったといえること、が必要です。
- 刑罰: 幇助犯が成立した場合の法定刑は、正犯の場合に比べて刑罰が軽くなります(刑法第62条、63条)。有期拘禁刑の刑は、その長期および短期の2分の1が減軽されます。
正犯と幇助犯の区別は、特定の犯罪を自己の犯罪として実現する意思があるか、それとも他人の犯罪を手助けする意思に過ぎないのかという「正犯意思」の有無で判断されますが、裁判所は、動機、利益の大きさ、主導性、役割の重要性など様々な事情を考慮して判断します。
友人が逮捕され、自身も関与した場合の逮捕リスクと取るべき行動
ご友人が逮捕されたということは、捜査機関がその事件の全体像や共犯者の存在を把握し、捜査が進行している可能性が高いことを示しています。ご自身がその事件に一部関わっている場合、共犯として逮捕されるリスクは非常に高くなります。
逮捕の可能性について
- 共犯関係の捜査: 詐欺事件など共犯事件であることが多い類型では、証拠も多数にわたり捜査に時間を要するため、共犯者同士の口裏合わせ防止や証拠隠滅防止の観点から勾留が継続する可能性も高いです。
- 逮捕のタイミング: 警察は、被疑者を特定して逮捕の必要性があると判断した場合、逮捕状を裁判官に請求し、その後に逮捕に踏み切ります。当初は任意の取調べに誠実に対応していたとしても、その途中で突然逮捕されるケースもあります。
- 逮捕後の不利益: もし逮捕されてしまうと、逮捕の日から最大23日間身柄拘束が続く可能性があり、会社や学校を長期間休むことになり、解雇や退学処分になる可能性が高まります。また、事件の事実が報道されてしまうリスクも高まります。
今すぐ取るべき行動
同じ事件に関わってしまったご友人が逮捕されたという状況は、ご自身も間もなく捜査対象となる可能性があることを意味します。取返しがつかなくなる前に、刑事事件に強い弁護士に速やかに相談することが必須です。
弁護士への早期相談
- 警察から連絡があった場合、焦ってメッセージのやり取りを消すなどの証拠隠滅行為に及ぶことは絶対にやめましょう。証拠隠滅行為をすれば逮捕の可能性が上がります。
- ご自身が「被疑者」として見られていると感じた場合、いち早く弁護士に相談し、逮捕や取調べに備えておくことが必要です。
- 弁護士は、取調べでの受け答えの仕方について詳細にアドバイスすることができます。特に共犯事件の場合、正犯との関係性や捜査状況を踏まえて取調べに対応する必要があります。
逮捕回避のための活動
- 警察の捜査がまだご自身に及んでいない場合、早期の自首によりその後の逮捕などを回避できる可能性があります。
- 逮捕前に弁護士に相談・依頼すれば、逮捕を回避するための書類を用意したり、自首同行によって逮捕の可能性を極力少なくするなど法的なサポートが可能です。弁護士がついていることが、逮捕の必要性の判断にあたり考慮されることもあります。
- 弁護士は、依頼人が逃亡しないことを示す誓約書や、家族などの身元引受人を用意するなど、早期の釈放を目指した弁護活動を行うことができます。
示談交渉の検討(被害者がいる場合)
- 被害者のいる事件であれば、被害者との示談を成立させることで、逮捕の可能性がほとんどなくなり、不起訴になる可能性も高くなります。
- 共犯事件の場合、共犯者全員が被害額全額を賠償する義務(連帯債務)があるため、示談を成立させることが量刑上重要になります。共犯者がいる場合、弁護士同士が協力して示談交渉を進めることで、共犯者と被害者との間で一挙に賠償に関する問題を解決することができ、合意がまとまりやすくなるメリットがあります。
もし、「逮捕されるのだろうか」、「不起訴にはならないのだろうか」、「前科はついてしまうのだろうか」といった悩みをお持ちであれば、まずは当事務所の初回無料相談の活用をご検討ください。
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