
結論から申し上げると、警察や検察からの出頭要請は、あくまで任意の取調べの要請ですから、拒否することが可能です。しかし、正当な理由なく拒否を続けると、逮捕される可能性が高まる場合もあります。以下で、出頭要請の性質、強制的な手続きとの違い、そして適切な対応方法について解説します。
出頭要請とは
警察や検察などの捜査機関が、被疑者や事件の関係者(参考人)に対し、捜査の必要に応じて出頭を求めることを出頭要請と呼ぶことが一般的です。
| 項目 | 内容 | 関連法規 |
|---|---|---|
| 法的性質 | 任意捜査であり、強制力はありません。 | 刑事訴訟法第198条1項(被疑者)、第223条1項(被疑者以外の者/参考人)。 |
| 出頭・退去 | 被疑者は、逮捕または勾留されている場合を除き、出頭を拒否し、または出頭後いつでも退去できます。 | 刑事訴訟法第198条1項但書。 |
| 目的 | 犯罪の捜査をするために、被疑者を取り調べること。 | – |
警察官が職務質問や家宅捜索に引き続いて被疑者に警察署への同行を求めることがあります。
このような場合は一般的に任意同行と呼ばれ、警察官の求めに応じて警察署などへ出向く行為を指します。これも任意の手続きなので、これを拒否することができます。
出頭要請を拒否することのリスクと注意点
出頭要請は任意であるため拒否は可能ですが、事案の性質によっては逮捕に繋がってしまう場合があります。
逮捕の要件の1つとして逃亡のおそれが定められています。警察が、被疑者が出頭要請を拒否したことを理由に逃亡のおそれがあるとして、裁判所に逮捕状を請求することがあるのです。
裁判所が逮捕状の請求を却下することは殆どなく、警察の裁量によって逮捕が可能となってしまうのが実情です。
そのため、出頭要請を拒否するかどうかは、専門家である刑事事件に精通した弁護士に相談して慎重に決定することが必要です。
逮捕後の重大な不利益
逮捕されると、最長で23日間もの長期にわたり身体が拘束される可能性があります。身体拘束が長期化すると、会社や学校を長期間休むことになり、その事実が露見することで解雇や退学処分といった重大な不利益を受ける可能性が高まります。実名報道される事案の多くは逮捕事案ですから、逮捕を回避できれば、実名報道のリスクも低下します。
弁護士にすぐに相談する
- 警察から電話があったら、出頭する前にお早めに弁護士に相談してください。
- 刑事事件に詳しい弁護士は、どのような捜査が行われているか、今後の逮捕の可能性の有無などについて的確なアドバイスを提供できます。
- 逮捕の可能性が高い事案であっても、弁護士は逮捕回避のための書類(意見書や誓約書)を用意してもらえます。
出頭要請の日時調整
- 出頭要請に応じるつもりがあっても、指定された日時に仕事や家庭の都合によりどうしても出頭できないという場合があります。
- もし指定された日時に都合がつかない場合は、遠慮なく警察に事情を説明し、出頭できる代替案を提示して調整してもらってください。数日程度の変更であれば通常問題ありません。
弁護士の同行を検討する(逮捕回避の可能性向上)
- 逮捕の可能性を少しでも低くしたい場合、弁護士に依頼して出頭時に警察署に同行してもらうことが有効です。
- 弁護士が同行し、依頼人が逃亡や罪証隠滅を行わないことを示す誓約書や、家族による身元引受書などの疎明資料を提出することで、警察に被疑者が逃走しないと信用してもらいやすくなり、逮捕を回避できる可能性を高めることができます。
取調べへの注意点
- 出頭すると取調べが行われますが、取調べでの供述内容は供述調書として記録され、その後の刑事手続きで証拠となります。
- 出頭前には、弁護士と取調べでの対応方針(供述すべきか、黙秘権を行使すべきかなど)を十分に協議しておく必要があります。
- 調書に署名押印する前に、記載内容が実際の供述や事実と異なる場合は、訂正を求め、入念に確認してください。誤った内容の調書に署名押印すると、後で内容を変更することができず、不利な状況を招く可能性があります。弁護士と相談した上で署名押印を拒否することも考えられます。
- 在宅捜査(任意出頭)の場合、取調べに困った際には、取調室を退室し、待機している弁護士に意見を聞くことも可能です。
警察からの出頭要請は、事態が刑事事件として進行しているサインです。その場で逮捕されないケースが多いとはいえ、その後の捜査や処分に大きく影響するため、不安な状況を一人で抱え込まず、できるだけ早く弁護士に相談し、適切な防御策を講じることが重要です。