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痴漢をしたところ気付かれ、その場から逃げました。後日逮捕される可能性があると聞き不安です。後日逮捕とは何ですか?

痴漢をしたところ気付かれ、その場から逃げました。後日逮捕される可能性があると聞き不安です。後日逮捕とは何ですか?

「後日逮捕」とは、事件が発生したその場では逮捕されずに一度現場を離れた後、後日、警察が裁判官の発付した逮捕状に基づいて被疑者の自宅や職場などを訪れ、身柄を拘束することを指します。これは、逮捕状を用いた通常逮捕と呼ばれる逮捕の最もスタンダードな形態です。

通常逮捕を行うには、「逮捕の理由」(被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由)と、「逮捕の必要性」(逃亡または罪証隠滅のおそれがないことが明らかでないこと)という2つの要件が必要です。


痴漢事件における「後日逮捕」のリスク

痴漢事件は、多くの場合、犯行現場で被害者や目撃者に取り押さえられ、警察に引き渡される現行犯逮捕となることが多い類型です。しかし、ご質問のように現場から逃走した場合でも、後日逮捕される可能性は十分にあります。逃走した場合、捜査機関は「逃亡のおそれがある」と判断しやすくなるため、逮捕の要件が認められやすくなります。

痴漢事件で逃走した場合に犯人が特定される方法

痴漢行為を行った後、現場から逃走したとしても、警察は様々な手段を用いて犯人の特定を目指します。

防犯カメラ・電子記録による特定

痴漢事件が電車内や駅構内で起きた場合、防犯カメラの映像や、ICカード(SuicaやPASMOなど)の改札通過履歴が強力な証拠となります。

  • 警察は、現場や駅、町中の防犯カメラ映像を捜査し、被疑者の人相や着衣を確認します。
  • 防犯カメラで特定された被疑者が改札を通過した時間を特定し、その時刻のICカードの通過履歴を調べれば、氏名、住所、電話番号など、被疑者の人定情報まで特定することが可能です。
  • 防犯カメラや電子系装置に囲まれた現代では、人は証拠を残さずに生きることは困難なため、犯行が発覚する可能性は否定できないと思った方がよいでしょう。

被害者・目撃者による証言

現行犯逮捕時と同様に、被害者や目撃者の証言は重要な証拠です。痴漢は被害者の供述以外に客観証拠が少ない場合も多いですが、被害者の供述が信用できるとされれば、それだけで逮捕・勾留・起訴、そして有罪とされる可能性があります。

遺留証拠・科学捜査による特定

現場に残された遺留品や、被害者の着衣に着いた指紋、繊維痕、DNAなどの証拠も犯人特定の手がかりとなります。警察は、検挙時に被疑者の手に付着している繊維痕を収集して被害者の着衣の繊維痕と鑑定し、一致すれば有力な証拠となります。

犯人特定にかかる時間

犯人特定の期間は事案によって様々であり、早ければ数日や数週間で警察から連絡があるケースもあれば、捜査に時間がかかり数か月後に逮捕されるケースもあります。なお、痴漢行為の公訴時効は、迷惑防止条例違反で3年、不同意わいせつ罪で12年、不同意性交等罪で原則として15年と定められています。

逃走した場合のその他のリスクと不利益

現場から逃走する行為は、単に後日逮捕のリスクを高めるだけでなく、その後の刑事手続きにおいて不利な影響を及ぼします。

有罪の場合に刑罰が重くなるリスク

刑事裁判では、犯行後の事情(逃走を図ったかどうかなど)が量刑を決定する際に総合的に考慮されます。逃走行為は、反省の意思が低いと判断される情況証拠になり得るほか、被害者の処罰感情を高め、裁判官からの心証を悪化させるリスクがあり、刑罰が重くなる可能性があります。

無罪を争っている事件であっても、裁判官は、「やっていないのなら逃げる必要などないではないか」と考えることがあり、「逃げた」ことが有罪の推認につながる可能性があります。

逮捕・勾留の長期化と保釈の困難化

逃亡のおそれがあると判断されると、逮捕・勾留を回避することが難しくなります。

  • 痴漢容疑を否認している場合であっても、逃走を図っていたとなると、「逃亡のおそれ」ありとして勾留決定がなされることがあります。
  • 逮捕されると、最大で23日間の長期にわたり身柄を拘束される可能性があります。
  • 一度逃亡していると、起訴された場合、保釈請求の際にも逃亡のおそれの判断の際に不利に考慮され、保釈請求が却下される可能性が高まります。保釈が却下されると、更に長期間にわたり身柄拘束が続くことになります。

新たな犯罪の成立リスク

逃げる際に、線路内に立ち入れば鉄道営業法違反、被害者や駅員に接触して転倒させれば暴行罪や傷害罪、警察官に暴行を加えれば公務執行妨害罪など、新たな犯罪が成立するリスクが生じます。線路内に逃げ込んで列車運行を妨害すれば、鉄道会社から巨額の民事賠償を請求されるリスクも伴います。

逮捕の不安がある場合の対処法

痴漢行為後に逃走してしまった場合、「いつ警察が逮捕に来るかわからない」という不安を抱えて生活することは精神的に大きな負担です。

早期の弁護士への相談と自首の検討

警察に犯人が特定される前であれば、自首を検討することで、逮捕を回避できる可能性が高まります。自ら進んで警察署に出頭することで、「逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがない」という姿勢を示せるからです。

  • 逃走した事案であっても、弁護士を同伴して自首することで、逮捕を避け在宅捜査の形で捜査を進めてもらえることがあります。
  • 弁護士は、依頼人の誓約書や家族の身元引受書を警察に提出し、逮捕回避を求める意見書を作成・提出することで、逮捕回避の可能性を高めます。
  • 自首すべきかどうかは、事件が警察に発覚しているか、自分が特定されているかなど、事案によって判断が必要なため、刑事事件に精通した弁護士に相談することが重要です。

示談交渉による不起訴の可能性

痴漢事件においては、被害者との示談交渉が不起訴処分を獲得するために特に重要となります。

  • 示談が成立し、被害者が加害者の処罰を望まないという意向を示すことで、検察官が起訴猶予として不起訴処分とする可能性が高まります。初犯であれば、示談が成立すれば不起訴となることがほとんどです。
  • 痴漢事件の場合、加害者本人が被害者に直接連絡をとろうとしても、被害者が恐怖や嫌悪感を抱いているため、弁護士を介さなければ示談交渉を開始することはほぼ不可能です。

逮捕後の迅速な弁護活動

仮に逮捕されてしまった場合でも、弁護士による迅速な対応が極めて重要です。

逮捕直後の72時間以内は、勾留を阻止するための「身柄解放活動」にとって極めて重要な期間であり、弁護士が意見書を提出するなどして勾留請求の回避を目指します。

逮捕・勾留が回避できれば、長期間の欠勤による解雇や退学、実名報道といった社会的リスクを最小限に抑えることが可能になります。

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