
盗撮目的で女子トイレに小型カメラを設置し、それが消失している場合、警察に証拠として押収され、犯人が特定される可能性が極めて高い状態にあると言えます。
女子トイレでの盗撮行為で問われる罪と刑罰
女子トイレに小型カメラを設置する行為は、複数の重大な犯罪に該当します。
撮影罪(性的姿態等撮影罪)
2023年7月13日に施行された撮影罪(正式名称: 「性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿勢の撮影に係わる電磁的記録の消去等に関する法律」)に該当する可能性が極めて高いです。
- 撮影罪の対象行為: 正当な理由なく、ひそかに、人の性的な部位や下着(通常衣服で覆われている部分)を撮影する行為が処罰されます。
- 未遂罪の処罰: 撮影罪では、実際に撮影に成功しなかった未遂罪も処罰の対象となります。したがって、カメラを設置した時点で既に犯罪が成立している可能性があります。
- 法定刑: 3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金が定められています。撮影罪は、従来の迷惑防止条例違反よりも厳罰化されています。
建造物侵入罪
盗撮目的で女子トイレ(建造物)に侵入した行為自体が、建造物侵入罪(刑法第130条)に該当します。法定刑は、3年以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金です。盗撮と建造物侵入は手段・目的の関係にある場合、牽連犯として扱われ、より重い罪(通常は撮影罪)の刑罰が基準となります。
カメラ発見による警察の捜査と逮捕の可能性
ご質問の状況では、翌日にカメラがなくなっていたとのことですが、これは第三者や被害者によってカメラが発見され、警察に証拠品として届けられた可能性が非常に高いです。盗撮は現行犯逮捕が多いものの、設置型の盗撮の場合、カメラが回収される前に発見され、その後に通常逮捕されるケースも増えています。
- 遺留品の解析: 警察は届けられたカメラを領置し、分析します。カメラのSDカードや内部データには、何百もの盗撮画像や動画が保存されていることや、犯人自身の姿が映り込んでいることも珍しくありません。
- デジタルフォレンジック: 盗撮データが削除されていたとしても、警察の科学捜査班による専門的なデータ復元技術(デジタルフォレンジック)復元・発見される可能性が十分あります。
- 防犯カメラ・電子記録: 警察は、現場やその周辺の防犯カメラ映像 や、交通系ICカード(Suica/PASMO)の改札通過履歴 を照合し、犯人を特定します。
- 逮捕: 犯人が特定されると、警察は逮捕状を取得し、数週間から数ヵ月後に突然、自宅に警察がやってきて逮捕されることがあります。逮捕されると、最大23日間の身体拘束を受ける可能性があります。
このように、カメラがなくなったということは、捜査の端緒が警察に渡ったことを意味するため、逮捕されるのは時間の問題であり、適切な対処が必要です。
自首することのメリットとデメリット
逮捕されるかもしれないという不安に怯え、夜も眠れない日々を過ごしている場合、自首を検討することは有効な選択肢となり得ます。
自首の最大のメリット – 逮捕・報道の回避
自首は、被疑者が自ら警察署に出頭し、犯罪事実を申告することです。
- 逮捕回避: 自首をすれば、「逃げも隠れもしない」という姿勢を示せるため、警察は逃亡のおそれや証拠隠滅のおそれがないと判断しやすくなり、逮捕を回避できる可能性が非常に高くなります。特に、盗撮目的のカメラ設置ケースでは、自首により逮捕を回避した事例が多く存在します。
- 報道回避: 報道される事件の多くは逮捕されている身柄事件です。逮捕を回避して在宅捜査で進むことになれば、教師、公務員、医師、上場企業の社員など社会的地位の高い職種の方の場合に特に懸念される実名報道されるリスクを回避できる可能性が相対的に高まります。
- 法律上の減刑: 捜査機関に発覚する前に自首すれば、起訴されたとしても刑が減軽されるという法律上のメリットもあります。
自首のデメリット: 藪蛇になる可能性
自首の一番大きなデメリットは、藪蛇となる可能性です。
- もし警察がまだ犯人を特定できていなかった場合や、被害届すら出ていなかった場合に、自首をすることで警察に初めて事件を認知させ、立件されることになる可能性があります。
- 特に盗撮事件では、スマホやパソコンが押収された際に、未発覚の余罪(過去の盗撮データ数百枚など)が発覚し、量刑が重くなったり、余罪で再逮捕されたりするリスクがあります。
早期に弁護士に相談し、最善策を講じることの重要性
自首をすべきか、あるいは被害届が出ていない可能性に賭けるべきかという判断は、具体的な事案の内容の緻密な検討を要するため、一般の方が独断で決めるのは非常に困難です。
逮捕回避のための活動
逮捕におびえて逃走し続けても、不安は解消されず、かえって逮捕された際の罪証隠滅・逃亡のおそれを高め、不利になります。
- 自首同行の依頼: 盗撮事案の経験が豊富な弁護士に相談し、警察署への自首同行を依頼することが、逮捕を回避するための最も効果的な手段です。
- 意見書の提出: 弁護士は、依頼者の生活環境や、逃亡・証拠隠滅のおそれがないことを説得的に主張する意見書を警察に提出し、逮捕しないよう説得することを目指します。
不起訴(前科回避)のための活動
盗撮事件で前科を回避するためには、不起訴処分を獲得することが必須です。
- 示談交渉: 盗撮事件において、被害者との示談成立は、不起訴処分を得る上で最もインパクトのある事情です。
- 弁護士の介入が必須: 盗撮事件では、加害者側が被害者の連絡先を知ることはできず、警察も仲介しないため、弁護士という第三者を介さなければ示談交渉の開始はほぼ不可能です。
- 再犯防止策: 盗撮は常習性や依存性が高い犯罪類型であり、不起訴を目指すには、真摯な反省とともに、専門クリニックへの通院など具体的な再犯防止策を講じていることを検察官に示す必要があります。
もし現在、警察から連絡がない状態であれば、弁護士に相談することで、自首すべきかどうかの判断、逮捕回避の活動、そしてその後の示談交渉や更生プログラムへの取り組みを迅速に進めることができます。逮捕されてからでは、身柄拘束が長期化し、職場への影響などの不利益が甚大になります。
盗撮事件で不安を抱えている方へ
盗撮は、デジタル証拠が残りやすく、発覚すれば後日逮捕される可能性が高い犯罪です。カメラがなくなったという状況は、捜査が進んでいることを示唆します。いつ逮捕されるかという不安に怯えることなく、問題に正面から向き合うことが重要です。