
メンズエステを利用中に性的なサービスを受けた場合の刑事責任と逮捕リスクについて、以下、解説いたします。
メンズエステ利用者が逮捕されるリスクについて
メンズエステは、基本的に男性向けのマッサージサロンであり、風俗店ではないため、性的サービスは利用目的として想定されていません。本来想定されている一般的なマッサージについて、これを受けることが犯罪となることは稀です。
しかし、ご質問の例のように、男性客と女性キャストとの間で性的なサービスが行われ、後に女性側が性的サービスを強制されたとして金銭を要求したり、捜査機関に申告がなされたというご相談は珍しくありません。
そのような事態となった場合に問題となる犯罪類型について解説します。
「性的なサービス」を客が受けた場合(売春防止法との関係)
もし、あなたが金銭を支払って、施術スタッフから性的なサービス(性交等)を受けた場合、これは売春防止法違反となる可能性があります。
- 売春防止法第3条は、「何人も、売春をし、又はその相手方となってはならない」と定めており、風俗店での本番行為はこの規定に反する違法行為です。
- しかし、売春防止法は、売春を行った当事者(客または従業員)に対して罰則を設けていません。
したがって、メンズエステのような店で、金銭を対価として合意の上で性的なサービスを受けたとしても、売春防止法違反によって客であるあなたが逮捕される可能性は低いといえます。ただし、後々になって「合意があったかなかったか」でトラブルになり、警察に通報される事例も報告されているため、このような行為は控えるべきです。
客が「同意なくわいせつ行為」をした場合(不同意わいせつ罪など)
メンズエステのトラブルで最も多いのは、客が施術スタッフに対しわいせつな行為を行ったケースであり、この場合は逮捕される可能性が非常に高くなります。
ご質問のケースで、もし「性的なサービスがあるとは知らなかったが、結果的に性的なサービスを受けることになった」という状況が、客側から施術スタッフの意に反して触れたり、性的な行為を強要したりした結果であった場合、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪などの重大な性犯罪に該当します。
また、客側としては同意の上で性的なサービスが行われたと考えていても、女性スタッフ側が断ることができずに真意の同意なくわいせつ行為を行わざるを得なかった場合、やはり不同意わいせつ罪や不同意性交等罪に該当するリスクがあります。
- 不同意わいせつ罪(刑法176条): 性交等に至らないわいせつな行為に留まった場合でも、女性の真意に基づく同意を得ないまま身体に触れるなどのわいせつ行為に及んだ場合、「不同意わいせつ罪」が成立する可能性があります。この罪には罰金刑の規定がなく、有罪となれば6月以上10年以下の拘禁刑が科される可能性があります。
- 不同意性交等罪(刑法177条): 相手の真意に基づく同意を得ずに性交等(性交、肛門性交、口腔性交、または膣・肛門への身体の一部や物の挿入)に及んだ場合。この罪の法定刑は5年以上の有期拘禁刑であり、起訴されると長期間刑務所に入らなければならない可能性が高い重大犯罪です。
施術スタッフが同意のないわいせつ行為や性交等をされたとして警察へ相談したり、被害届を出したりすることによって、刑事事件に発展し、逮捕される可能性があります。
その他の犯罪行為(盗撮など)
性的な行為を伴わなくとも、メンズエステを利用する際に、施術スタッフに対する盗撮行為を行った場合は、性的姿態等撮影罪や迷惑防止条例違反に該当する可能性があり、逮捕事例も存在します。
警察沙汰になった場合の対応の重要性
もしメンズエステでのトラブルが警察沙汰になったり、相手方から連絡があったりした場合は、その後の対応のスピードと適切さが非常に重要です。
- 逮捕・勾留のリスク: 不同意わいせつ罪や不同意性交等罪など、わいせつ行為で逮捕された場合、最大で23日間身柄拘束が続く可能性があります。
- 起訴・不起訴の判断: わいせつ行為は被害者のいる犯罪であり、検察官が起訴・不起訴の判断をするにあたって被害者の感情が大きな考慮要素になります。
- 示談交渉: 不起訴処分を獲得し、前科がつくのを避けるためには、被害者との示談交渉を成立させることが大切です。被害者が加害者と直接やり取りをすることに恐怖心を持つことが多いため、第三者である弁護士が間に入って交渉することが重要です。
- 民事上の責任: 逮捕されなかったとしても、客は被害者に対して慰謝料などの損害賠償を支払う民事上の責任を負います。
もし店舗側や施術スタッフから多額の金銭を要求された場合、安易に応じると法外な金額を支払わされる可能性があるため、すぐに弁護士に相談することをお薦めします。弁護士に相談することで、逮捕の回避や不起訴処分獲得に向けた迅速な活動が可能となります。