
検察庁からの呼び出しがあった場合、それは多くの場合、事件の捜査が最終段階にあり、起訴/不起訴の判断が近づいていることを示しています。逮捕されていない(在宅事件)の場合でも、起訴される可能性は十分にあり、前科を回避するためには迅速かつ適切な対応が求められます。
検察庁からの呼び出しはどのような状況か
警察による捜査(在宅捜査)がある程度進んだ事件は、検察官に送致されます(書類送検)。検察官は送致された捜査内容を検討し、不足している点があれば、被疑者を再度呼んで取調べを行うことがあります。
在宅事件(逮捕・勾留による身体拘束を受けていない事件)として捜査が進んでいる場合でも、検察官による事件捜査は継続している状態です。在宅事件では、捜査に期限を定めた法律がないため、捜査が長期化するデメリットがあります。
出頭すると起訴されてしまうのか
検察庁からの呼び出しに応じて出頭し、取り調べを受けた結果、起訴される可能性は十分にあります。
逮捕の有無と起訴の関連性
逮捕されているか(身柄事件)どうかに関わらず、起訴・不起訴は証拠が十分かどうかで決まります。在宅事件(逮捕されていない事件)だからといって、必ずしも事案の重大性が低いとは限らず、「大した事件じゃないから起訴されないだろうとタカをくくるのは大間違い」です。
検察官の判断
検察官は、捜査機関が収集した証拠及び被疑者や関係者の供述をもとに、犯罪を立証するのに証拠が十分だと判断すれば、起訴することができます。最終的に検察官は、正式裁判を請求するか、略式裁判(罰金)を請求するか、あるいは不起訴にするかを決定します。
起訴された場合、正式裁判が行われることになれば、裁判は公開の法廷で行われるため、第三者に刑事訴追されている事実が知られる可能性があります。また、略式裁判であっても、有罪として刑罰を受けているため前科がつくことになります。
不起訴にしてもらうための重要な対応
前科がつくことを避けるためには、検察官による不起訴処分を獲得することが大切です。不起訴を目指すためには、弁護士を選任し、適切な弁護活動を行うことが不可欠です。
被害者との示談交渉の成立
被害者がいる事件(痴漢、盗撮、暴行、傷害、窃盗、横領など)の場合、被害者との示談の成立が不起訴処分を得るための大きな鍵となります。
示談の重要性
検察官は、起訴・不起訴の判断をする際に被害者の処罰感情を重視します。被害者が被疑者の処罰をもはや求めていない場合(示談が成立している場合)、検察官は不起訴とする事が多いためです。示談が成立すれば、不起訴になる可能性は大きく高まります。
弁護士を通じた交渉
被害者は、加害者本人やその家族との接触を拒むのが通常です。被害者の住所や連絡先を警察や検察官が被疑者本人に教えることは基本的にありません。そのため、弁護士を介して示談交渉を行うことが事実上必須となります。
謝罪の誠意を示す
示談交渉では、被疑者(依頼人)の誠意ある謝罪の意思の伝達と精神的苦痛等への被害回復の措置が中心となります。被疑者本人が作成した直筆の謝罪文を被害者にお渡しすることもその手段の一つです。謝罪文には、被害者が負った精神的・肉体的なダメージや日常生活への影響を想像し、配慮した記載が必要です。
取調べへの適切な対応
在宅事件の場合、取調べは任意取調べであり、被疑者は取調べに応じる義務はありません。しかし、警察や検察の取り調べに対して弁護士のアドバイスに基づいて適切に対応することで、不起訴の可能性を高めたり、裁判で不利になる供述調書を作成することを防いだりすることができます。
弁護士によるアドバイス
弁護士に相談することなく取調べに臨んだ結果、不利な内容の供述調書に署名押印してしまい、起訴後にその内容を争うことが困難になるケースは珍しくありません。起訴前の段階から弁護人を選任し、取調べの方針を慎重に決定することが重要です。
黙秘権の行使の検討
供述調書は裁判において強い影響力を持ち、供述調書上の供述が被疑者にとって不利益な事実であれば、裁判官の判断に大きな影響を与えることになってしまいます。警察や検察側に有利な供述調書を作らせないという点で、黙秘権の行使は不起訴に持ち込むために非常に有効な手段となり得ます。ただし、黙秘権の行使が常に利益になるとは限らないため、個々の事件において行使すべきかどうかの判断は弁護士の適切なアドバイスが重要です。
弁護士に相談するその他のメリット
在宅事件であっても起訴される可能性が十分にある以上、弁護士に相談し、適切な弁護活動を行ってもらう必要があります。
事件の進捗把握
在宅事件の場合、こちらから問い合わせない限り、事件記録がどこにあるのか、検察官が起訴・不起訴を決めるまでにどのくらい時間がかかるのかなど、全く教えてもらえない場合が殆どです。弁護人を選任することで、刑事手続の状況を正しく把握しやすくなります。
逮捕の回避
任意の取調べに誠実に対応していたとしても、その後に逮捕されてしまうことはあります。被害者との示談が成立すれば、逮捕の可能性がほとんどなくなります。逮捕回避のための書類を用意してもらうなど、逮捕を回避するための活動を弁護士に依頼することができます。