
浴室や風呂場での盗撮行為は、通常、性的な部位や下着、裸を撮影したケースに該当し、法律によって厳しく規制されています。疑いをかけられた場合、速やかに専門家である弁護士に相談することが重要となります。
浴室での盗撮はどのような罪に問われるのか
風呂場などでの盗撮行為は、従来は各都道府県の迷惑防止条例違反として処罰されるのが一般的でしたが、2023年7月の刑法改正により、性的姿態等撮影罪(刑法174条の2)が新設されました。これにより、一定の盗撮行為は刑法犯としてより厳格に処罰される可能性があります。
迷惑防止条例では、人の通常衣服で隠されている下着や身体等を撮影する行為が禁止されており、条例によっては、盗撮行為の刑罰は「1年以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金」、撮影目的で機器を向けただけの場合でも「6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」とされています。
これに加えて刑法の改正により、正当な理由なく性的姿態を撮影する行為等について、3年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金が科される可能性があります。風呂場などでの盗撮行為は、刑法ではなく、主に各都道府県の迷惑防止条例違反に問われるのが一般的です。
特に、スカートの中や更衣室、トイレ、そして風呂場といった場所で、下着や裸を撮影したケースが盗撮事件のほとんどを占めるという実態があります。
盗撮目的で浴室や風呂場に侵入した行為自体について
なお、服で隠されている下着や裸を撮影した場合でなければ、迷惑防止条例違反での立件は難しいという状況があります。また、盗撮行為の態様によっては、建造物侵入罪などが別途成立する可能性もあります。
盗撮行為の具体的な刑罰(量刑相場)はどのくらいか
盗撮の刑罰(量刑)については、個別の事案の悪質性や犯行回数、被害者の被害感情などに大きく左右されますが、初犯の場合と再犯以降で処分の傾向が異なります。
初犯の場合
盗撮が初犯で、初めて警察沙汰になった場合、いきなり刑務所への服役となることは滅多にありません。正式な裁判を受けることもなく、最悪でも罰金刑で済む可能性が高いです。
ただし、罰金刑であっても前科が付くことになります。初犯の際に、自身の事件とどのように向き合ったかがその後の人生を左右すると言えるため、「罰金さえ払えば良い」と考えるのは避けるべきです。
性的姿態等撮影罪の新設にみられるように、盗撮を含めた性犯罪に対する社会の非難は日に日に高まっており、常習性などの犯行態様によっては、初犯であっても罰金にとどまらず、正式な公判で執行猶予付きの判決となる可能性もあります。
盗撮事件で不起訴処分や前科回避を目指すためのポイント
前科が付くことを回避するためには、検察官による不起訴処分を獲得することが最も重要です。盗撮事件において不起訴を目指すための鍵は、被害者との示談交渉の成否にかかっています。
被害者との示談交渉
盗撮事件で不起訴処分を得るための条件は、被害者と示談が成立することです。被害者が加害者(被疑者)の処罰を求めている状況で、検察官がそれを無視して不起訴処分とすることは基本的にありえません。
性犯罪の性質を有する盗撮事案では、捜査機関は被疑者本人やその家族と被害者との間の連絡の取次ぎを行わないのが通常であるため、弁護士に被害者との示談交渉を依頼することになります。
弁護士を通じて示談が成立すると、不起訴処分になる可能性が高くなります。示談交渉は、被疑者(加害者)の誠意ある謝罪と精神的苦痛等への被害回復の措置が中心となります。
謝罪の意思を伝えるため、被疑者が作成した直筆の謝罪文を被害者にお渡しすることも一般的です。謝罪文には、被害者が負った精神的・肉体的なダメージや、日常生活への影響を想像し、配慮した記載が必要です。
盗撮事件の示談金相場
示談金には「適正価格」という明確な基準はありませんが、当事務所で扱った盗撮事件では、20万円から50万円で示談締結に至るケースが多いです。
ただし、事件の重大性や被害者の心情によって額は異なり、100万円前後以上の高額になる事案も存在します。特に、被害者が未成年であったり、建造物侵入罪が成立していたりする場合には、示談金が高額になる可能性があります。
盗撮事件を弁護士に相談する重要性
盗撮の容疑をかけられたら、事態が深刻化する前に一刻も早く弁護士に相談することが非常に重要です。
弁護士に依頼することで、逮捕・勾留からの早期解放を目指す活動(勾留請求の回避、意見書の提出など) や、取調べへの適切な対応についての助言を受けることができます。また、更生を志す場合、弁護士がその更生への第一歩となるようサポートします。