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マッチングアプリで出会い同意の上、性交渉したものの、その後、不同意性交と言われ困惑しています。被害者の証言のみで有効な証拠になり得るのでしょうか?

マッチングアプリで出会い同意の上、性交渉したものの、その後、不同意性交と言われ困惑しています。被害者の証言のみで有効な証拠になり得るのでしょうか?

マッチングアプリを通じて出会い、同意の上での性交渉だと認識していたにもかかわらず、後から相手方から「不同意性交」であったと主張されて事件に発展したというご相談は非常に増えています。このようなケースは、現代において誰しもが性犯罪の当事者になる危険性を有している事案の一つです。刑事事件における「同意の有無」の判断と、被害者の証言の証拠能力について解説いたします。

「同意の上での性交渉」が不同意性交等罪とされるリスク

あなたが相手に同意があったと考えていたとしても、相手方が「意思に反して性行為をされた」として警察に被害届を提出した場合、不同意性交等罪(旧: 強制性交等罪)として捜査が開始され、逮捕につながる危険性があります。

特にマッチングアプリやSNSを通じた出会いは一般化していますが、そのような場面では、相手の気持ちをきちんと確かめないまま性的な行為に及んでしまう例も少なくなく、刑事事件化する例が増えています。

不同意性交等罪の成立要件

不同意性交等罪は、相手方の性的自己決定権を侵害する重大な犯罪です。従前、暴行もしくは脅迫を用いた性交として強制性交等罪が、相手方の抗拒不能や心身喪失に乗じて行われる性交として準強制性交等罪が法定されていました。

その後、2023年の刑法改正により、これらの犯罪類型はまとめて不同意性交等罪として法定され、一定の事由により同意しない意思を形成、表明または全うすることが困難な状態に乗じて性交した場合には処罰されることとなりました。刑法第177条に基づき、以下のいずれかの事由に乗じて、同意しない意思を形成、表明、または全うすることが困難な状態にある相手と性交等をした場合に成立します。

一定の事由として、暴行・脅迫や心身の傷害、アルコールの影響のほか、予想と異なる事態に直面して恐怖または驚愕していることなどが定められています。たとえ口頭で表面上の同意を得ていたとしても、女性がアルコールの影響で記憶が曖昧になったり、「断る隙がなかった」と主張したりするケースでは、上記の規定が適用される可能性が出てきます。

被害者の証言は有効な証拠となり得るのか?

ご質問の核心である「被害者の証言のみで有効な証拠になり得るのか」についてですが、結論から言えば、被害者の証言は、客観的証拠がなくても、裁判の結論を左右する極めて重要な「証拠」になります。

性的な行為は、カメラなどがない密室空間で行われることが多く、「同意があったのかどうか」や「わいせつな行為をしたかどうか」を客観的に確認する方法がないのが通例です。このような事件では、たとえ被疑者側が事実を否認していても、被害者の供述が信用されて冤罪で逮捕されてしまうことがあります。

被害者証言の信用性の判断基準

不同意性交等罪における最も重要で直接的な証拠は、被害者の証言そのものです。裁判所が、被害者の証言が信用できるとして基本的にその証言のみで有罪とするケースも珍しくありません。

ただし、被害者証言がそのまま無条件で有罪の決め手になるわけではありません。裁判では、その証言が有罪にできるほど高度な信用性を持っているかどうかが、以下の様々な事情を勘案して総合的に判断されます。

  • 犯行の日時・場所・態様。
  • 加害者と被害者との関係(知り合ってからの期間、交際の有無・状況)。
  • 当該行為に至る経緯・状況。
  • 行為後の状況(例えば、性的行為があった直後は仲良さそうにやり取りしていたかなど)。
  • 供述内容に一貫性があるか。
  • 虚偽の供述をする合理的な動機があるか。

例えば、深夜に人気のない路上で見知らぬ女性に突然わいせつ行為に及んだ場合、承諾などなかったという被害者の証言の信用性が否定されることは稀です。一方で、正常な意識がありながらラブホテルと知りつつ二人で一緒に入るなどした末の行為であれば、承諾がなかったという被害者証言に疑問符がつく場合もあります。
裁判においては、被害者の証言が信用できるか否かが冤罪の争点となることが多いのです。過去には、被害者供述に不自然な点や矛盾がないかという客観的な状況との整合性を踏まえ、無罪判決が言い渡された事例も存在します。

今後の対処法と弁護士の役割

マッチングアプリでのトラブルのように、当事者双方の認識や記憶が食い違っている事案では、誰しもが性犯罪の当事者になる危険性を有しています。被害者側から警察への被害申告の連絡があった場合には、逮捕・起訴される可能性が高いため、迅速な対応が必要です。

逮捕・起訴リスクと弁護活動

不同意性交等罪は法定刑が「5年以上の有期拘禁刑」と重く、起訴されると罰金刑の余地がなく、更に原則として執行猶予を獲得することが困難な重大犯罪です。

  • 逮捕の可能性: 不同意性交等罪は刑罰が重いことから、逃亡や証拠隠滅のおそれが高いと見なされ、逮捕の可能性が高いです。
  • 起訴を避けるために: 一度起訴されると無罪判決を獲得するのは統計上非常に困難なため、起訴前の捜査期間中に不起訴処分を獲得するための活動が最も重要となります。
  • 示談の重要性: 不起訴処分を獲得するために最も重要なのは、被害者と示談を成立させることです。非親告罪になった現在でも、被害者の処罰感情は検察官の起訴・不起訴の判断において重要な判断要素となるためです。

示談の試みは必ずしも罪を認めることを意味しません。被疑者側としては相手方の同意があると誤信していたが、結果的には性交により相手方を傷付けたとして賠償を申し出ることができます。そのため、示談が成立しなかった場合に公判で無罪を主張する余地を残したまま示談交渉をすることができます。

弁護士による適切な防御活動

もし被害者が警察に被害申告をすると連絡があった場合や、警察が関与している疑いがある場合には、速やかに刑事事件に詳しい弁護士に相談することが不可欠です。

  • 取調べ対応: 事実に争いがある(同意があったと主張する)場合、取調べに対し的確なアドバイスを受け、依頼者の真意に沿った供述をするか否かを協議し、方針を決定する必要があります。
  • 証拠の整理: 性的行為に合意があったことを示すメッセージのやり取り(LINEなど)や、当時の状況を示す防犯カメラ映像などの客観的な証拠を整理し、無罪主張の根拠とすることが有効です。
  • 示談交渉: 性犯罪の場合、被害者は加害者本人やその家族との直接交渉を拒否することがほとんどです。弁護士を介して、被害者の感情に最大限配慮した丁寧な示談交渉を進めることが、不起訴処分の可能性を高めます。

性犯罪においては、刑事事件の経験豊富な弁護士に依頼することが、起訴・実刑を避けるための重要な鍵となります。

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