
少年事件の手続きにおいて、少年鑑別所(鑑別所)と少年院は、異なる段階と目的で利用される施設です。
少年鑑別所の役割と期間
少年鑑別所は、拘禁刑や矯正を目的とする施設ではありません。その主な目的は、医学、心理学、教育学、社会学などの専門的知識に基づいて、少年事件手続において審判を通じて処分を決定する前提として、少年の資質の鑑別(分析)を行うことです。
- 目的: 専門的見地から少年の内心の分析を行うこと。少年の知能や性格、非行に至った原因、今後の立ち直りに向けた処遇上の指針などを明らかにします。その分析結果は、家庭裁判所の審判の基礎資料や、その後の保護処分(少年院送致、保護観察など)の処遇資料とされます。
- 収容の時期と期間: 少年鑑別所に収容されるのは、家庭裁判所に事件が送致された後、本人の心身の安定が必要と判断され、専門家による資質等の調査が必要と認められた場合です。この収容措置を観護措置と呼びます。 観護措置の期間は、通常4週間、最大8週間(2カ月)とされています。
- 生活の内容: 鑑別所での生活では、心理テストや鑑別技官(法務技官)と呼ばれる職員との面接や調査官による調査が繰り返し行われます。社会と切り離された環境で、少年が自分と向き合い、自らの行為を落ち着いて見つめ直す機会となります。
少年院の役割と期間
少年院は、家庭裁判所の決定に基づいて、少年の矯正と教育に重点を置いた処遇を行う施設です。
- 目的: 保護処分の執行を受ける者などに対し、矯正教育その他の必要な処遇を行う施設であり、その本質は全寮制の「学校」に似たものと言えます。少年院は、刑罰を与える施設である「刑務所」とは目的が異なります。
- 処遇: 少年院での矯正教育には、生活指導、職業補導、教科教育、保健・体育、特別活動などが含まれます。集団での規律ある生活を通じて、社会生活に適応させるための教育が行われます。職業補導では、資格・免許取得に向けた指導が行われることもあります。
- 種類: 少年の年齢や心身の状況、非行傾向に応じて、第1種から第4種(または初等、中等、特別、医療)に分かれています。
- 期間: 入院期間は施設によって様々ですが、短くて半年、長くて2年程とされています。
鑑別所から少年院に行く場合の流れと確率
少年審判において、裁判官によって保護処分として少年院送致の決定が行われ、その決定が確定すると実際に少年院に送られることになります。
少年院送致に至るまでの流れ
- 事件発生と家裁送致: 犯罪行為をした少年(犯罪少年)は、警察等による捜査を受けた後、すべての事件が家庭裁判所に送致されます(全件送致主義)。
- 観護措置(鑑別所収容): 事件が家庭裁判所に送致された後、少年の心身の安定や資質調査の必要性がある場合、裁判官の決定により観護措置がとられ、少年は少年鑑別所に収容されます。
- 調査: 少年鑑別所では、鑑別技官による心身鑑別が行われると同時に、家庭裁判所調査官(心理学、社会学等に精通した専門家)が、少年の生育環境や非行に至った経緯などについて綿密な社会調査を行います。
- 審判: 調査結果に基づき、家庭裁判所で少年審判が開かれます。審判は非公開で、裁判官が少年に質問する形で非行事実と要保護性(再び非行に陥る危険性など)の有無を審理します。
- 終局決定(少年院送致): 審判の結果、少年の更生のために施設での集中的な教育が必要だと判断された場合に、保護処分の一つとして少年院送致が決定されます。
少年院送致となる確率(統計データ)
少年院送致は、家庭裁判所が決定する保護処分の中で最も重い処分の一つです(検察官逆送を除く)。令和2年(2020年)の統計によれば、非行少年の最終的な処遇決定の人員は以下の通りでした。
| 処遇決定の種類 | 人員数(令和2年) |
|---|---|
| 少年院送致 | 1,624人 |
| 保護観察 | 12,425人 |
| 不処分 | 7,926人 |
| 審判不開始 | 20,033人 |
| 検察官送致 | 2,966人 |
| 児童自立支援施設等送致 | 87人 |
この統計から、少年院送致は審判の場で下される処遇決定全体のなかで、比較的少ない処分であることが分かります。
なお、少年事件では、非行の事実が軽微であっても、要保護性(再非行の危険性、矯正可能性、保護相当性)が高いと判断された場合には、少年院送致等の重い処遇がなされることがあります。逆に、非行事実が重くても要保護性が解消されていれば、少年院送致が回避されることもあります。
少年院での生活と期間
少年院に収容された少年は、社会生活への適応を目的とした矯正教育を受けます。
少年院での生活
少年院の矯正教育は、少年の自覚に訴え、規律ある生活の下で行われます。
- 教育内容: 義務教育を含む教科教育、溶接や木工、情報処理などの職業補導、体育祭やクラブ活動などの特別活動が授けられます。資格や免許の取得に向けた指導が行われることもあります。
- 施設内での生活: 入所当初は個室寮で生活を始めますが、その後は集団生活へ移行します。集団寮の居室は施錠されず、少年は集団生活の中で困難を乗り越え、健全な社会人として生きていくための教育を受けます。
- 外部との関係: 少年院長は、少年の退院後の生活のために、親や近親者に対し、通信や面会をするように勧めなければならないとされています。少年院には面会室が設けられており、矯正教育に害がない場合に面会が許可されます。
- 期間: 少年院の入院期間は、事案の重大性や少年の反省の程度等によって異なりますが、短くて半年、長くて2年程が目安とされています。
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