
SNSでアニメ等の切り抜き動画を違法にアップロードする行為は、著作権法違反に該当する可能性が高いです。多くのユーザーが同様の行為をしているからといって、その違法性が軽減されるわけではありません。アニメ作品は「著作物」であり、著作権法によって作者の権利が厳しく保護されています。著作権者に無断でアニメの一部を切り抜き、インターネット上に公開する行為は、複数の権利侵害を構成します。
著作権法違反(著作権侵害・著作者人格権侵害)
著作権法では、著作権者等の許諾を得ず、かつ法定の除外事由がないのに著作物を利用する行為は違反となります。アニメの切り抜き動画のアップロードは、以下の罪に問われる可能性があります。
権利侵害の内容
- 複製権侵害・公衆送信権侵害: 著作権者等の許諾なく、他人の著作物を無断でコピーしたり(複製)、無断でインターネット上にアップロードしたりする行為(公衆送信)は、著作権侵害にあたります。
- 著作者人格権(同一性保持権)侵害: 他人の著作物に無断で修正・加工して使用する行為は、著作者人格権(同一性保持権)の侵害にあたる可能性があります。アニメの「切り抜き」や「編集」は、元の作品の内容を改変する行為と見なされる場合があります。
刑罰(法定刑)
著作権を侵害した者に対する刑罰は以下のように定められています。
- 著作権侵害(複製権、公衆送信権の侵害など): 10年以下の拘禁刑もしくは1000万円以下の罰金、またはこれらが併科されます。 法人が著作権を侵害した場合は、行為者が罰せられるほか、3億円以下の罰金刑が科されます(両罰規定)。
- 著作者人格権侵害(同一性保持権の侵害など): 5年以下の拘禁刑もしくは500万円以下の罰金、またはこれらが併科されます。
刑事告訴(親告罪と非親告罪)について
従来、著作権侵害行為の大部分は親告罪とされており、著作権者等の告訴がなければ公訴を提起することができませんでした。しかし、2018年12月30日以降の法改正により、以下の一定の要件に該当する場合には、著作権者等の告訴がなくても公訴を提起することができる非親告罪として扱われるようになりました。
- 非親告罪となる要件の例: 有償で公衆に提供・提示されている著作物について、財産上の利益を得る目的、または著作権者等が本来得られる利益を害する目的で、原作のまま複製物を公衆に譲渡したり、公衆送信を行ったりする行為(その著作物の種類や用途、公衆送信の態様などに照らして、著作権者等の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限る)。
SNSにアニメの切り抜きをアップロードし、再生回数に応じて広告収入を得る目的がある場合などは、特に悪質な著作権侵害行為と見なされ、取り締まりが強化されることが予想されます。
著作権侵害行為の検挙状況
知的財産権侵害事犯のうち、著作権侵害事犯は、偽ブランド品などの商標権侵害事犯とともに検挙数の大半を占めています。
過去には、市販の音楽作成ソフトを無断複製してインターネットオークションに出品した事例や、海賊版漫画を無料で読むことができるリンク先を集めた誘導サイトを運営・投稿した事例などで、著作権法違反の疑いで逮捕・書類送検された事例があります。
刑事処分を回避するための対処法
著作権法違反で刑事告訴されたり、刑事事件になったりした場合、その後の刑事処分は被害の程度によって異なります。著作権侵害で送検されてしまうと、インターネット上のホームページなどの客観証拠によって立証が容易なため、起訴されて前科がついてしまう可能性が高いです。不起訴処分を獲得し、前科を回避するためには、以下の対応が重要です。
- 示談交渉の成立: 弁護士に相談し、著作権者等との間で被害弁償・示談を成立させることができれば、不起訴処分となり、前科を回避できる可能性が十分考えられます。 示談交渉は、被害者側が企業である場合などは特に困難になることがありますが、弁護士に依頼することで、適切な対応を模索することが可能です。
- 迅速な対応: 著作権侵害は、逮捕される可能性のある犯罪行為であり、逮捕された場合や刑事処罰を科されるような行為をしてしまった場合は、速やかに弁護士に相談し、今後の対処方針を立てたり、示談をスムーズに進めたりすることが推奨されます。
インターネット上での違法行為は、匿名性が高いように見えても、プロバイダ責任制限法などに基づき発信者情報が開示され、特定されるリスクがあります。安易な行為は避け、「海賊版」のダウンロードやアップロードは犯罪であるという認識を持つことが重要です。